俺の実力(魔法)に驚け

 試験が終わり、待つこと数時間。

 掲示板に合格者の掲示がされていた。


「お、あった。良かった、無事に合格だな」


 掲示板を確認し、受かった者は体育館てきなところにまた来いとのこと。


 体育館に入ると、もうすでに人が溢れかえっていた。


 俺は適当に空いていた席に腰掛ける。


 数分が経った。


「全員揃ったようなので、入学式を始めます。」


 え?少なくない?


 最初は千人近くいたのに今じゃ半分くらいしか。


「まずは、学園長の挨拶」


 厳しいなぁ。


「ふむ」


 おや、何か懐かしい声がする。


 これは師匠の声だ。


「ここは、冒険者を育成するための施設が揃っておる。卒業まで切磋琢磨し、強くなるのじゃ。以上学園長、ゼノム・アスフォード」


 師匠が一礼する。


「「えええええええええええええええっっ!!」」


「うおっ」


 え、え?何で皆叫んでんの?今、俺だけが叫ぶとこだろ?

 叫ぶ要素あった?


 うん、言いたいことは分かるよ?

 だって、冒険者を育てる学園で戦えなさそうなおじちゃんが学園長をやっているんだからね。


 でもね、あの人一応冒険者なんだよ。

 元だけどね。

 


◆◇◆◇◆◇



「学園長だったんですね、師匠」


 俺は今、学園長室にいる。


 お互い向き合いソファーに座って。


「いや〜、どうせなら驚かせてやろうとな」


 師匠は笑いながら言う。


「はぁ〜、くだらないことを。まあ、驚きましたけどね」


 本当に驚いた。周りの叫び声に。いまだに耳が痛いくらいだ。


 「そ、それでじゃ。今日は、どどど、どうじゃった?」


 師匠は何でそんな焦っているんだろう。


「体育館てきなところにいた時点でわかるでしょ?合格しましたよ。普通に」


「そ、そうか。良かった〜」


「あ、でも一つだけ」


 思い出した。俺がやらかしてしまった、あの炎属性事件。


「な、なんじゃっ!」


 すると、師匠は身を乗り出す。


「そ、そんなに焦らないで下さい。今日のステータスチェックで適正属性なしを創造で書き換えたんですよ。そしたら、間違えて《火属性》を《炎属性》にしてしまって」


 俺は今日の失敗を分かりやすく話した。


「なるほ……ど……お、お主何しとるんじゃ!そもそも、ステータスを書き換えてる時点でおかしいいんじゃ!その上、書き間違えたじゃとぉ!」


 師匠が震え出したかと思ったら、顔を赤くして怒鳴り出した。


 流石に言い過ぎじゃね?


「違う!おかしいのは俺じゃなくて魔法だ!」


 俺はつかさず言い返した。


「それは、すっと前から分かっておる!じゃが、今回は書き換えようとしたお主の頭もおかしい!何で書き換えようとしたんじゃ?!」


 師匠……今更、そんな当たり前のことを聞くのか?


「適正属性なしとか普通じゃないからですよ!」


「そんなわけある……そ、そうじゃな!

 はあ〜。それで間違えた後はどうしたんじゃ?」


 何か師匠が少しやつれてる。


 ごめんな、ダメな弟子で。

 今回は、反省している。

 後悔は、ちょっとだけ。


「バグってことにして、ちゃんと火属性に書き換えて、見せました」


「ば、バグっ?!あれは、国宝じゃぞ!

 も、もうよい。教師たちには儂から説明しておく。お主は部屋に戻っとれ」


「分かりました。あと、迷惑かけて申し訳ありません。失礼します」


 俺は一応頭を下げて部屋を出た。



◆◇◆◇◆◇



 アラード学園の生徒に、なった者は寮生活をすることになる。


 一部屋二人になっているが中は結構広いらしい。


「さあ、俺のルームメイトは誰かな?」


 俺は少しのワクワク感と、普通の人でありますようにという願いを胸に扉を開けた。


「あっ……」


 思わず口から漏れてしまった。


 別に嫌な人だったからだとかそういうわけではない。

 知っている人だったからだ。


「俺は、フィン・トレード。よろしくね、マルコ」


 彼は、試験で一番だったマルコ・ブレイブだった。


「誰に向かって口を聞いている、この俺はゆう――」


「母さんが作ったお菓子あげる。美味いから食べてみて」


 これから、同じ部屋で過ごす仲だからな。


「俺の話を遮るな!」


 何か、マルコが怒っていた。


 何で怒ってるの?


「まあまあ、これから一緒の部屋で生活するんだ。仲良くしよう?」


 決めた。俺は、マルコと友達になる。


「貴様、俺が誰だか知っての態度か……。実力が拮抗ひしている奴とルームメイトが組まされると聞いていたが、何かの間違いだったらしいな」


 あれ?本当に嫌われているな。


 なんでだろう。


 そんなことより、実力的はほぼ同じというか、俺の方が上だと思うよ。試験見てたからね。


 言ったら、怒ると思うから言わないけど。


「それより、ご飯はもう食べた?良かったら作るけど」


 俺は、まず胃袋からマルコを落とす作戦で行くことにした。


「貴様が作った飯など食べるか」


 マルコは当然断る。まあ、知ってた。


 ははっ。もう、そんな口聞けないようにしてやる。


(『めちゃくちゃ美味しい料理が作れる魔法、消費魔力1500』)


 魔法を創造。

 瞬間、頭の中に料理のレシピが。


 俺は、寮にある学食から食材を貰い、部屋にあるキッチンで料理を始める。


 魔法のおかげか料理経験ゼロだけど、手が勝手に動く。


 そして、完成した。

 唐揚げだ。


 なかなかの出来だ。まあ、魔法のおかげなんだけど。

 

 唐揚げから発する香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。


 マルコの方を見れば俺の方を、正確には俺の持つ唐揚げの方をチラチラ見ていた。


 「マルコ、食べないのか?」と聞けばプライドの高いマルコは断ってくる。


「マルコ、唐揚げ作りすぎてしまった。食べるの手伝ってくれないか?」


 俺から下手に出る作戦。そうすることにより、マルコのプライドを傷つけなくて済む。


「ふん。バカな奴だな。いいだろう」


 勝った。


 偉そうに言っているが、一瞬嬉しそうな顔をしたのを見逃さなかったぞ。


 俺とマルコの初戦は俺が勝利した。

 


 



 


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