ハートの女王降臨

「あー!!こないだのお姉さんじゃん?」


「うわー!!また遊べるなんて嬉しいなぁ。」


ダムとディがボクを見ながら楽しそうにしていた。


「ゼロ、俺なら大丈夫だ。」


振り返るとロイドがフラつきながらも立ち上がっていた。


「そんな体で戦える訳ないでしょ?!アンタ下手したら死ぬわよ!?」


そう言ってマリーシャは倒れそうになったロイドの体を支えた。


ロイドに無理をさせる訳にはいかない。


銃が1つしかないのが心配だ…。


どこかに武器はないだろうか…。


そう思いながら周りに視線を配る。


マリーシャのバイクに大きな袋が積まれていた。


「マリーシャ。あの袋には何が入っているだ?」


「え?あー。一応、何種類か銃が入ってる。」


「マリーシャの能力でボクに渡す事は出来るか?」


「出来るけど…。アンタまさか!?」


どうやら、マリーシャはボクが考えていた事が分かったらしい。


「早めに頼む。」


「もー!!どうなっても知らないわよ!!」


マリーシャは大声で叫びながら指を鳴らした。


パチン!!


ガチャガチャガチャッ!!


音を立てながら勢いよく飛び出した銃がボクの方に飛んで来た。


目に付いたショットガンをキャッチした。


マリーシャはハンドガンをキャッチしていた。


「背中は任せるぞマリーシャ。」


「アンタこそヘマしないでよね!!」


そう言ってマリーシャは近くにいたEdenの団員の1人を撃った。


「うが!!」


打たれた団員が血を吐きながら倒れた。


パァァアン!!


マリーシャの放った銃声がゴングとなった。


「女如きが調子に乗るなよ!!!」


打たれた団員の隣いた団員がマリーシャに銃口を向けた。


だが、マリーシャの方が動きが早かったようで銃口を向けた団員よりも早くマリーシャが団員を撃った。


へぇ…。


マリーシャの奴、中々やるじゃないか。


ボクはEdenの団員を撃ちながらマリーシャの動きを観察していた。


ボクの背後に気配を感じ、ハンドガンの銃口を背後に向けて引き金を引いた。


バンッ!!


「うがぁぁあ!!」


「く、くそ!!女如きに何でだよ?!!」


ボクの動きを見た団員が慌ててボクに銃口を向け

た。


パンパンパンッ!!


「ぎゃあああ!!」


後ろを振り返ると息の荒くなったロイドが銃口を団員に向けていた。


「はぁ…、はぁ…。平気か?」


「ロイド!?無茶すんなっての!!」


マリーシャはEdenの団員を撃ちながらロイドの姿を見て驚いていた。


ロイドの背後から現れたEdenの団員をボクは素早く撃った。


パンパンパンッ!!


ロイドに近付こうとする団員達をボクとマリーシャで次々に撃って行く。


「アハハハ!!こっちも構ってよ!!」


ダムがボクに向かって剣を振り下ろして来た。


シュルルルッ!!


ダムが振り下ろした剣が鞭に巻かれ動きを止めていた。


「あれー?マリーシャじゃん?ヤル気?」


ダムはそう言ってマリーシャの方に顔を向けた。


鞭の紐でダムの剣の動きを止めていたマリーシャはボクの方を一瞬だけ見た。


「最初からだよ。」


そう言ってマリーシャはダムに引き金を引いた。


パァァアン!!


グチャァ…。


銃声と嫌な音が同時に聞こえた。


マリーシャの体に剣先が光っていた。


「ガハッ!!」


ビチャァァ…。


マリーシャは血を吐きながら後ろを振り返った。


「アハハハ!!間抜けだねーマリーシャ?」


「ディ…。」


ディがマリーシャを後ろから刺していた。


ポタポタと流れ落ちる血を見て、ボクの中で何かが切れた。


フツフツと湧き上がるこの感情はなんだ…?


緩くなった鞭を剣から剥がしたダムはボクに剣を振り翳して来た。


「「ゼロ!!」」


ロイドとマリーシャの声が重なった。



パァァアン!!


ギリギリの所で剣が止まった。


ポタポタッ…。


地面に沢山の血の粒が落ちていた。


ロイドとマリーシャは状況を読み込めていなかった。


「え?」


ダムは不思議そうに自分の腹を見つめた。


すると、ダムの腹から血が流れていたのだ。


ゼロがダムの腹に銃口を突き付け引き金を引いていたのだ。


「調子に乗るなよ。」


ゼロはそう言ってダムの左の太ももに銃口を突き付け引き金を引いた。


パァァアン!!


「ぐっ!?ぎゃぁああああ!!」


ダムは太ももを押さえながら地面に倒れ込んだ。


「ダム!!」


マリーシャの体から剣を抜いたディがダムに近寄ろうとした。


ゼロは素早くダムの方に銃口を向け引き金を引いた。


パァァアン!!


ゼロが放った銃弾はダムの右腕、左足に命中した。


「うがぁぁ!!」


ダムは苦痛の声を上げながら地面に倒れ込んだ。


倒れそうになったマリーシャをロイドが支えゼロの方を見た。


「ゼロの容姿が少しおかしい…。」


「おかしい…って。怒ってるんじゃないの?」


「怒る?ゼロが?」


「あたしからしたら怒ってるように見えるけどね。」


ゼロの心を支配していたのは"怒り"だった。


ゼロは次々に団員達を銃で撃ち始めた。


体に銃弾が当たってもゼロは止まらなかった。


50人程いた団員達が次々に減って行く。


「何なのあの女…。化け物じゃない!!」


血塗れのゼロを見たアリスは口を押さえながら呟いた。


ジャックがゼロに近寄ろうと足を一歩前に出した。


「ジャック!!」


アリスがジャックの腕を掴んで動きを止めた。


「そんな目をしてどこに行くの。」


「そんな目って…?」


「心配そうな顔をしてあの女に近付かないでよ!!」


「っ!?」


ジャックは洗脳されているにも関わらず、ゼロの事を気にして近寄ろうとしていたのだった。


仮面の男はアリスとジャックの容姿を見て、ポケッ

トに閉まっていたナイフを取り出しゼロの元に向かった。



ゼロside


無我夢中で銃を撃ち続けた。


Edenの団員の人数が減って行くのに、ムカムカとする感情が収まる事はなかった。


Edenの団員達は血塗れのボクを見て後退りした。


数は20人程…か。


「お前等を殺す。」


ボクはそう言って引き金を引こうとした時だった。


グサッ!!!


背中に痛みが走った。


ドクドクと脈が音を立てながら打っている。


ゆっくり顔を後ろに向けると仮面の男がボクの背中にナイフを刺していた。


「ゼロ!!!」


ロイドが慌ててボクに近寄ろうとした。


ボォォォォォォォオ!!


ロイドの前にメラメラと燃える炎が現れた。


ジャックがロイドを近付けさせないようにしたのが分かった。


グラッと視線が揺れ、ボクの体が地面に倒れ込んだ。


ドクドクと血が背中から流れて行くのが分かる。


ロイドとマリーシャの声が遠くなって行く。


「悪く思わないでね?これもアリスの為だから。」


そう言って仮面の男は再びボクにナイフを振り下ろ

したその時だった。



「総員!!構え!!」


カチャカチャカチャ!!


女の声と共に銃を構える音が聞こえた。


「打て!!」


パンパンパンッ!!


銃が放たれる音とEdenの団員達の悲鳴が交差する。


「あ、あれは…!?」


「こんな所に来るなんて…。」


ロイドとマリーシャは女の姿を見て驚いていた。


カツカツカツ。


ヒールの足音が夜の街に響き渡る。


女の後ろには沢山のハートの騎士団達が歩いていた。


「貴方が何でここにいる訳!?」


アリスが女の姿を見て声を荒げた。


月夜に照らされた女の正体は…。


「貴方こそ死んだ筈では?アリス。お前がEdenの創立者か。」


マレフィレスはそう言って髪を靡かせた。

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