黒い棘のタトゥーII

マリーシャと合流する少し前ー


ゼロside


「方法って…どう言う事だ?エース。」


「簡単な事だよゼロ。この鏡と同じ黒い棘がタトゥーのように体に刻み込まれているんだ。だから、服を脱がせば直ぐに分かる。」

エースは淡々と説明をした。


「いやいや、極端過ぎるだろ!?服を脱がす…って。ゼロがその…。」


ロイドはモジモジしながら黙った。


あー、ロイドの言いたい事は分かった。


「アハハハ!!ロイドってば変態ー。」


CATはロイドを見てケラケラ笑っていた。


「はぁ!?テメェ…何笑ってんだよ!!」


「わぁー!!ロイドが怒ったー!!!」


2人の言い合いを見ているとエースが手招きして来た。


「大丈夫だよ。ロイドの考えてるような事はさせないから。ちょっと服を肌けさせれば良いだけだよ。黒い棘が全身に回るとマズイからね。」


「それはどう言う事だ?」


「僕は正式な方法でゼロとコンタクトを取ってこの世界に呼んだ。だからゼロの体には黒い棘が体に刻まれていないんだ。だけど、ゼロと同じようなやり方じゃなくこの世界に来たのだとしたら体に亀裂が入ったままこの世界に入ったと言う事。」


無理矢理こじ開けて入って来た…と言う事だろうか…。


「亀裂が入ったままこの世界にいるといずれは死ぬよ。まぁ、いずれは死ぬんだからほっといても良いだろうけどねー。」


「ほっとく訳にはいかないさ。ソイツが大人しくしてるなら問題はない。」


「まー大人しくはしないだろうね。」


「あれー?」


ボクとエースが話しているとCATが大きな声を上げた。


CATの方に視線を向けるとロイドと浮いている鏡を見ていた。


「どうかしたのか?」


ボクとエースは2人に近寄った。


鏡を覗いて見るとそこに映っていたのはマリーシャと仮面の男が戦っている姿だった。


「これは…、どう言う状況なんだ?CAT。」


「んー。多分だけどマリーシャが次のターゲットにされちゃったかもしれないねー。」


「何で?」


ボクとCATが話しているとエースも口を開いた。


「女王陛下が血眼になってジャックの事を探してるんだよー。それでマリーシャにも協力を依頼したんだよねー。」


「それでマリーシャは仮面の男に狙われた…と。それなら納得がいくな。」


ボクの代わりにロイドが返事をした。


暫くジッと鏡を見つめているとマリーシャが仮面の男に銃を向けられていた。


マリーシャと仮面の男との差があり過ぎる。


仮面の男はかなり強いな…。


マリーシャが死ぬのは…、なんか嫌だ。


自分でもこんな感情を抱く日が来るとは思ってもいなかった。


直接この男がしている仮面を剥げば良い話だしな。


「CAT、エース。マリーシャの所に行きたいんだが…、移動は出来るのか?」


ボクがそう言うとCATとエースが驚いた顔をした。


「え?出来るけど…、マリーシャの事を助けに行くの?」


CATが困惑しながら口を開きボクに尋ねて来た。


「そうだ。それと仮面の男とやり合おうと思っ て。」


「「「え!!?」」」


ボクがそう言うと3人が驚きの声を上げた。


「アイツとやり合うのか!?」


「その方が手っ取り早いと思わないか?ロイド。」


「そ、そうだが…。危険過ぎる。」


「ボクの腕を舐めてるな?」


ボクがそう言うとロイドは口を閉じた。


「俺はゼロのペットであるからゼロの意志に従うよ。良いよな?エース。」


CATがそう言ってエースに尋ねると「勿論。」と答えた。


CATとエースがマリーシャが映っている鏡に触れる

と、鏡に歪みが出来た。


「ここからマリーシャがいる場所に移動出来るよ。」


「なんと…。そんな簡単に出来るのか?」


ボクがそう言うとCATとエースが軽く笑った。


「まぁ…、俺達はNight mareの人形だからな。」


Night mareの力が凄い物なんだと実感するな…。


ボクが鏡の歪みに触れよとした時だった。


「俺も行く。」


声を掛けて来たのはロイドだった。


「え?ロイドも行くのか?」


「ゼロ1人で行かせる訳ないだろ?心配だから俺も一緒に行く。」


「お、おう…?」


ロイドはボクと一緒に鏡の歪みに触れ鏡の中に吸い

込まれた。



*そして現在に至る*


仮面の男とゼロとの間に静かな空気が流れた。


ロイドは空気を察してマリーシャを連れて少し離れた場所に移動した。


仮面の男が銃を構えた瞬間にゼロは銃を持っている手を蹴り上げた。


ガンッ!!!


仮面の男の手首に痛みが走り持っていた銃を地面に落ちた。


ゼロは素早く地面に落ちた銃を足で自分の方に寄せた。


ザッ!!


「ッチ。」


仮面の男が軽く舌打ちをした。


だがゼロはお構いないしに仮面の男に拳を振り上げる。


パシッ!!


仮面の男はゼロの拳を受け止め、ゼロの脇腹に拳を入れようとした。


パシッ!!


仮面の男の拳を受け止め、ゼロは再び拳を振り下ろした。


パシッ、パシッパシッパシッ!!


ロイドとマリーシャはゼロと仮面の男の戦いを見ていた。


お互い攻撃は当たらず、ひたすら交わしては攻撃をしての繰り返しになっていた。


「ちょ、ちょっと、どうなってんのよロイド!!」


ロイドはマリーシャの問いに答えなかった。


答えて良いものなのかロイドは悩んでいた時だった。


「燃えろ。」

ゴォォォォォォォ!!!


男の声と共に大きな炎がゼロと仮面の男の間に現れた。


「っ!?」


ゼロは咄嗟の判断で後ろに下がった為、突然現れた炎で火傷する事はなかった。


「大丈夫か!?」


ロイドは足早にゼロに近寄った。


「あ、あぁ。」


ゼロはこの炎が誰が出したのか気付いていた。


炎の中から現れたのは全身真っ黒な服を着ていたジャックだった。



ゼロside


炎の中から現れたジャックは最初の時と同じ冷たい目でボクを見つめてきた。


「助かったぜジャック。」


「アリスの為にちゃんと働けよ。」


「悪い悪い。」


目の前でジャックと仮面の男が会話している。


ジャックが知らない人のようだ…。


「ジャック、何で仮面の男なんか庇うのよ!!」


パッと振り返ると、マリーシャがそう言ってボク達に近寄りながらジャックを睨み付けていた。


「アリスの事を守らないでどうするのよ!?アンタ、アリスの事が好きなんじゃないの!?」


「その女はアリスの偽物だから守る必要はねぇよ。」


「はぁ!?」


マリーシャはジャックの言葉が理解出来ていなかった。


「その女を消す。アリスが嫌がる存在だからな。」


ジャックはそう言って手を広げてボクに向かって炎を出して来た。


ゴォォォォォォォ!!!


「ゼロ!!何してるんだ!!」


ボクは変わってしまったジャックを受け入れれなかった。


そのせいか炎が近付いて来てるのに足が動かなかった。


ロイドの叫び声も遠く感じる。


心臓が痛い。


痛い、痛い、痛い。


どうして?


どうして、アリスなんかの為に…。


「ゼロ!!!」


ロイドの声が聞こえなかった。

「死ね。」


ゴォォォォォォォ!!!


ドゴドゴドゴォォォーン!!!


目の前に沢山の木箱が上から降って来た。


グイッ!!


ボクの体が後ろに引っ張られた。


ズサァァ!!


ボクは地面に強く体を打ち付けた。


「しっかりしなさいよ!!」


「っ!!」


マリーシャの言葉でボーッとしていた意識が戻った。


マリーシャの能力でボクの体は後ろに引っ張られたようだった。


「間に合って良かった…。大丈夫かゼロ!!」


焦った顔をしたロイドがボクに近寄った。


現れた木の箱もロイドの時間の能力で落下させたようで、マリーシャとロイドのお陰でボクは燃やされ

なかった。


ボクの目の前にロイドとマリーシャが立った。


ロイドがボクの目の前に立ったのは分かるが、マリーシャが何故ロイドの隣に立ったのか分からなかった。


「退け。」


ジャックの冷たい言葉がボクの胸に刺さる。


「やめろジャック。目を覚ませよ。」


「は?何言ってんだよロイド。目を覚ますのはそっちの方だろ。」


ジャックとロイドの言葉は噛み合っていなかった。


「お前は操られてるんだジャック!!!」


「俺が操られてる?ハッ、馬鹿な事を言うなよロイド。退けソイツを燃やす。」


ジャックはそう言って右手のひらから炎を出した。


シュルルルッ!!!


パシッ!!


ジャックの右手が鞭の紐が結ばれていた。


マリーシャの手には鞭が握られていて、マリーシャ

の能力で鞭の紐を操りジャックの右手を拘束していた。


「何すんだテメェ。」


「それはこっちの台詞よ。どうやらこの子がアリスがじゃない事は分かったわ。」


「なら、尚更お前がソイツを助ける義理はないだろ。」


ジャックの言葉を聞いたマリーシャは一瞬だけボクの方を向いた。


パチッと目が合うとマリーシャはすぐに前を向いた。


「一度でも助けて貰った義理は返す主義なの。だから義理はあるのよジャック。」


「マリーシャ…。お前、良い奴だったんだな。」


ボクの心声が漏れていたらしく、マリーシャの頬が赤くなった。


「は、はぁ?馬鹿じゃないのアンタ。シャキッとしなさいよ。」


そうだ…。


こんな事で傷付くなんてボクらしくない。


ジャックがおかしくなってしまったのなら、ジャックの目を覚ませてやれば良いじゃないか。


マリーシャの言葉で目が覚めた。


ボクは立ち上がりジャックを見つめた。


カツカツカツ。


ヒールの足音が暗い街に響き渡る。


誰か…来る。


「ジャック遅いから迎えに来ちゃった。」


そこに現れたのは黒いドレスを来た黒髪のアリスだった。


「アリス。ソイツ殺すのに手こずってた。」


「うふふ。全部あたしの為にしてくれてるんでしょ?嬉しいなぁ。」


「アリスは…生きてたって事?」


マリーシャはそう言ってボクを見つめて来た。


「話せば長くなるが、まぁ簡単に言えばそう言う事だ。」


「アリス…。やっぱり生きていたんだな。」


ロイドは小さな声でアリスに声を掛けてた。


アリスはロイドを冷たい目で見つめ銃を構えた。


そして銃声が耳に届いた。


パァァァァン!!


「ゔっ!!」


ロイドの右肩が血が出ていた。


「ロイド!?ちょっとアリス!!アンタ何したか分かってんの!?」


「あらマリーシャ。何ってロイドを撃っただけだけど?」


アリスは真面目な顔をしてマリーシャの問いに答えた。


「何で…俺を撃ったんだ?アリス。」


右肩を押さえながらロイドはアリスに尋ねた。


「ロイドが裏切ったからだよ。」

パチンッ!!


そう言ってアリスは指を鳴らした。


ザッ、ザッ。


この気配…。

「まずいな。」


「えぇ。これは…。」


周りからゾロゾロ現れたのはEdenの団員達だった。


数はおよそ50人程。


ボク達はEdenの団員達に囲まれてしまった。


ロイドは戦えない状態だし、マリーシャとボクだけでなんとかなる…か?


そんな事を考えているとアリスが口を開いた。


「逃がさないよ偽物。」


アリスはそう言って不敵に笑った。

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