Nightmarのドール

目を瞑っていると、肩を軽く叩かれた。


「目を開けても大丈夫だよ。」


ボクはエースに言われた通りに目を開けた。


目を開けると、黒い空間に色んな形をした鏡が周りに浮いていた。


そして、自分の体が浮いている事が分かった。


「か、体が浮いてる!?」


「ゼロの反応は新鮮で面白いなー。」


エースはそう言って空中で回り始めた。


「ここは鏡の世界だから、現実とは違う。」


「違うから浮いたり出来るのかロイド?」


「俺もこの世界の原理が分からない。」


ロイドにも分からない事があるのか…。


「CATとエースは同じように空間を行き来が出来ると言っていたな?それはどうやってしているんだ?」


ボクの問いにCATが答えた。


「んー。俺とエースは人の姿をしてるけど、この世界の駒なんだ。」


「この世界の駒?それはどう言う事なんだ?」


「CATとエースが駒…?」


ボクとロイドはCATの言葉に理解出来なかった。


「少し難しい話をすると…。」


ポンッ。


そう言ってエースはチェス盤とチェスの駒を幾つか

出した。


そしてボク達はエースに近寄り空中だが、座るポーズをした。


空中で座ってる姿は側から見たから変だろうなと思う。


自分自身がそう思っているのだからな。


「チェスをやる為には、2人いないと駄目だろ?今、この世界を変えようとする者とこの世界を正そうとしてる者がいる。」


この世界を…。


つまりは、アリスとNightmareの事だろう。


「ゼロやロイドには黙っていたけど、僕とCATは Nightmareと言う人物の駒なんだ。」


「え!?Nightmare!?」


エースの言葉にロイドは驚いた。


「CATもエースもNightmare側の人間だったのか…。」


「ゼロ!?Nightmareの事を知っているのか?」


ボクの言葉を聞いたロイドが尋ねて来た。


「あ、あぁ…。詳しくは知らないが名前は聞いた事がある。」


Night'sの存在は伏せつつ答えた。


「ごめんねゼロ。Nightmareの事を黙ってて…。」


CATは申し訳なさそうな顔をしてボクに謝って来た。


「気にしなくて良い。CATにも事情があったんだろ?」


「う、うん。」


「この話をしても良い人物なのか見極めてたんだよ。僕とCATは。この話は誰にでも出来る話じゃないからね。」


ボクとCATの会話にエースが入って来た。


「Nightmareって革命団だろ?」


「革命団…?」


ボクはロイドに尋ねた。


「あぁ。Nightmareはこの世界に革命を起こそうとしてたんだよ。それで、Nightmare側の人間を革命団って世間は呼んでるんだ。」


成る程…。


確かに、帽子屋達がやっている事は革命団と言っても良いな。


やっぱりNight'sの事は知らないようだな…。


「話を戻すね。俺とエースはNightmareに作られた駒なんだ。」


CATはそう言ってチェスの駒を取った。


「駒の意味が分からないだが…。どう言う事だ?」


「簡単に言うと、Nightmareの力で作られた人形って所かな?」


「人形…?」


ボクがそう言うとCATが服の袖を捲って見せて来た。


CATの腕に人形のように関節の繋ぎ目が見えた。


ロイドもCATの腕を見て驚いていた。


エースもCATと同じように服の袖を捲ってボクに見

せて来てくれた。


CATと同じように関節の繋ぎ目があった。


「こ、これは人形の…。」


ロイドは2人の腕を見て小さな声で呟いた。


「俺とエースはNightmareのドールなんだ。」


「CAT達がドール?」


「NightmareのTrick Cardの能力で作られた。俺達は元々は魂のないドールだった。」


CATはボクの問いに答え、少しだけ悲しい顔をした。


「NightmareのTrick Cardの能力は…。Make(メイク)なのか?」


ロイドがそう言うとCATとエースは頷いた。


「Nightmareはあらゆる物を作り出す事が出来るんだ。」


「何でも作り出せるって事なのか?」


エースに尋ねると、エースは丁寧に答えてくれた。


「その通りだよ。このTrick Cardを作ったのだって、Nightmareなんだから。」


「Trick Cardを!?Nightmareが作ったのか!?」


エースの言葉にロイドは物凄く驚いていた。


じゃあ…、Nightmareは何の為にCATとエースを作ったんだ?


CATとエースを作った目的は何だ?


何か狙いがあって、2人を作った筈だ。


「ゼロはどうして僕達を作ったのかが気になってるんでしょ?」


エースはボクの顔を見て呟いた。


「何故、分かったんだ?」


「アハハハ!!分かるよ、ゼロの顔にそう書いてたんだからさ。そうだな…。」


エースはそう言ってチェス盤に何個かチェスを置いた。


ボクとロイドは暫くチェス盤を見ていると、CATが口を開いた。


「俺とエースはチェスの駒のような存在。主人の為に動く者。俺とエースはこの世界を変えようとしている者を探してるんだ。」


「それが僕達の役目だからね。まぁ…、CATの主人はゼロもなんだけどね。」


CATが話しているとエースも話に入って来た。


「だって、ゼロの事気に入っちゃたんだ。Nightmareにダメだって言われてないし。」


「はいはい。」


CATとエースは仲良さそうに話している。


この世界を変えようとしている者…。


「それはアリスの事なんだ。」


ボクが話そうとした事をロイドが先に話し出した。


「「え!?アリスが!?」」


CATとエースは声を揃えて驚いた声を出した。


ボクとロイドはアリスの事、そしてEdenの事、ジャックの事を話した。


もう1つは僕達の中に裏切り者がいる事も。


「アリスが…。全然アリスの事をマークしてなかった。」


エースは頭を抱えながら呟いた。


「アリスの死体は全部アリスとEdenの自作自演だったのか…。だから言っただろエース。アリスの事を信用すんなって。」


「だって、アリスは僕にとってのお姫様だったんだよ。そんな…、アリスが?」


CATの言葉を聞いたエースは困惑していた。


「ボクの考えだが、エースも洗脳に掛かっているのかもしれない。」


「洗脳?」

「恐らくだがな。」


ボクとエースが話していると、CATも口を開いた。


「ゼロの考えは当たってるだろうな。アリスの事を好きな奴は異常な程にアリスに執着してた。エースもな。」


「…。アリスの事を好きだった事はおかしいのかな…。アリスは優しいお姫様なんかじゃなかったの?僕がゼロを探し出した事は無駄だったの?」


「エース…。」


傷付いたエースに近寄ったCATは、エースの背中をポンポンッと優しく叩いた。


「ゼロがこの世界に来る事は必然だったんだ。エース、いつも首に下げている時計を見ろよ。」


「え?」


CATに促されたエースは首に下げている時計を見つめた。


カチカチッと音を立てながら時計の針が動いていた。


「え、動き出している?!」


「CAT。この時計は何なんだ?」


ボクはCATに尋ねた。


「この世界の正しい時間を刻む時計だよ。そして、この時計はNightmareがエースに渡した物。ゼロが来る前まで時計の針が止まったままだった。」


「つまり、ゼロが来た事でこの世界の正しい時間が動き出した…と。」


ロイドは顎に手を添えながら呟いた。


「ロイドの言う通りだ。やはり、この世界は誰かが歪みを作ったんだ。」


「そうか…。僕がゼロを連れて来た事で周り出したんだ。」


エースはCATの言葉を聞いてホッとしていた。


「あぁ、だから自分を責めんなよエース。この世界を歪めた犯人を探し出さねーと。」


CATがそう言うと、ロイドが立ち上がり口を開けた。


「アリスにそこまでの力はないだろうな。アリスの部屋の鏡を調べてみよう。」


「そうだね。僕は本当の事が知りたい。どうして、アリスがこんな事をしたのか知りたい。」


エースの顔付きが変わったのが分かった。


「俺達の主人の為、そして、ゼロの為にも調べようぜ。」


「CAT、ありがとう。助かる。」


「えっと。アリスの部屋の鏡は…。」


CATはそう言って周りを見渡した。


「あ!!アレじゃない?」


そう言ってエースはヒョイッと軽く飛び、近くにあった手鏡を手に取った。


「あー、やっぱり…。」


手鏡を見ながらエースが呟いた。


「どうしたんだ?」


「見て。」


そう言ってエースは手鏡を僕に見せて来た。


手鏡を見ると、黒い棘が鏡全体に描かれていた。


「黒い棘?」


「こ、これは!?」


ボクが不思議そうにしていると、ロイドは棘を見て驚いていた。


「何かヤバイのか?」


ボクが尋ねるとCATが答えた。


「鏡を通してこの世界じゃない世界と繋がった時に出来た亀裂だ。俺達はNightmareの能力で作られた存在だからこんな亀裂は入らない。」


「つまり?」


「アリスは…、もしかすると、この世界の人間じゃない人間とコンタクトを取った可能性が高い。」


「な!?」


CATの言葉を聞いてロイドは驚いて声を出した。


「CAT、もう1つ可能性がある。アリスが僕と同じように他の世界の人間を連れて来た可能性がある。ソイツがアリスの協力者な可能性が高いんじゃないかな。」


エースは考えながら話をした。


そんな事が可能なのか?


「ゼロと同じような奴がいるのか…。探し出すのは難しいな。」


ロイドは頭を掻きながら呟いた。


「あるよ。探し出す方法。」


「「え!?」」


ボクとロイドはエースの言葉に驚いた。

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