5ー48

 「オッケー!オッケー!じゃ、本番やりますか!送風機で風あててやります!」


俺、風あてられんの結構 苦手。

コンタクト乾いちゃうんだけど。

わりと強めな風!

袴も袖もバタバタしちゃってる。

出来るかな?


「用意!アクション!!」

監督さんの掛け声で、龍聖と動き出した。


16ビートのリズムで。

完ぺきに出来た!と、思う。


「カット!オッケー!」

そう言って、監督さんは今の映像を確認した。

そして

「見てみる?」

と俺たちに聞いた。

「刀を振り下ろしたり、振り上げたりするところはスローにします。こんな感じに」

「おーーーー!!カッケー!!」

なんか、時代劇の一場面って感じ。

俺も龍聖も役者さんみたい。

風になびく、龍聖の髪も、袖も、袴も、スローで見ているのに、すごくスピード感があってカッコイイ!

「ありがとうございます!スゴイ、かっこいい!!」

「役者がいいからですよ!」

と監督さんは笑った。

これ、MVが出来上がるの早く見たいな~!!

楽しみ!

これで、今日のMVの撮影は総て終わった。



 控え室に龍聖と戻ると、3人はコーヒーを飲んで寛いでいた。

「おっそ!!」

悠弥が笑った。

お疲れ~と、大輝と瞬は言ってくれた。

「お待たせ~」

「今の二人の映像ここでも見せてもらったけど、すげーかっこよかったじゃん!!るろ剣みたいだった!」

と、大輝が言った。

ルロケンってなんだ?

「失礼します。衣装回収します」

と、三崎さんが来た。

「あ、ゴメン!まだ、脱いでない!ってゆうか、これどうやって脱ぐの?」

ほんとに、初めて着せられたから、どうなってるのか全然わかんない。

「おい!桂吾!三崎さんに脱がせてアピールすんのやめろって!そうゆうプレーかよ!!」

と悠弥が言うから、なんか赤面した。

「アハハハ!そうゆうプレーって、どうゆうプレーだよ!!悠弥見てないで脱がせてくれよ!」

「男を脱がす趣味ねーよ!!アハハハ!」

「いいですよ!着るのも、脱ぐのも難しいですよね!着物は!」

そうゆうと、三崎さんは俺の後ろから抱きつくみたいにして俺の袴の紐をほどいていった。

袴をおろされ、着物も脱がされ、あっという間に俺はパンイチになっていた。

一緒に戻ってきたのに、龍聖はもう着替えて、脱いだ着物を軽く畳んでいた。

えっ?恥っず!

俺、マジで、脱がせてプレーの人みたいじゃん。

三崎さんは、普段から俺らの裸はしょっちゅう見てるから、免疫があるらしく、パンイチの俺にまったく動じない。


「ね~、三崎さん!殺陣とかできる人なの?」

と、ズボンをはきながら聞いてみた。

「あ、さっきのですか?時代劇の殺陣ってゆうのは、初めてやりました」

「えっ?初めて?」

「私のは、剣道の型の応用って感じです」

「剣道?」

「あ、はい。私こう見えても、剣道3段なんですよ~」


剣道……

なんか、すべて合点がいった、感じがした。

顔や体型が似ている訳でもないのに、なにか、雰囲気が彼女に似ている気がしていた。

剣道していた人が、みんな似ている訳でもないだろうけど、なんてゆうか、持ってる 気ってゆうのか、剣道スピリッツみたいものが共通している気がする。

龍聖なら、そうゆうの見えるのかな?

あ、彼女は読めなかったって言ってたか。


さっきの三崎さんの殺陣を見た時、彼女に見えた。

って言っても 実際に、俺は彼女が剣道をやってるところを見たこともないんだから、想像してた彼女っぽく見えたってことだけど。

彼女なら、こうゆう動きをするだろうって感じた。


「俺、好きだった人が、剣道やってた人だったんだ~!余韻の人!」

「えっ!!余韻の人って、実在するんですか?」

「アハハハハハハ!!実在してるよ~!架空の人って言ってるけど。マスコミにはナイショね!」

「はい!秘密は守ります!!」

そう言って三崎さんは笑った。

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