5ー50

 ばあばも そうだ。

温かい、おいしい料理を作ってくれた。

誕生日には、手作りケーキでお祝いしてくれた。

じいじ、ばあばと3人の食卓。

俺は学校の話をいっぱいした。

友達の話をいっぱいした。

父さん、母さんと暮らしていた時より、のびのびと過ごせた。


デカい家だから、友達が大勢遊びに来て、ゲームして遊んだりする時は、おやつをみんなに出してくれた。

すぐ横の堤防から河川敷のグランドへチャリで降りて遊んだり、ほんと楽しかった。


 中学生になって、俺は目立つらしく、他校の生徒と喧嘩になったりとかもよくあった。

やった、やられた、やった、やられたで、お互い様って感じで、なんか最後は仲良くなったりもしてたけど。


 1番の大事件は、中3の秋。

同級生の岡田が、俺のハトコの杏那姉ちゃんのことを好きだと言った。

俺の家に遊びに来ていた時に、姉ちゃんが野菜を持ってきたり、なんかの用事で来ていて、何回か会ったことがあったらしい。

姉ちゃんは、6個上だから、その時20か21か、確か大学生だった。

姉ちゃんは、背も高く、スラっとしている。

そして美人だ。

中3の男子から見たら、大人の女性って感じで、それは魅力的だったのだろう。

岡田は、姉ちゃんと“やりたい!やりたい!”と、よく言っていた。

俺は最初、軽い冗談のような感じに受け止めていた。

それが岡田は本気でそう思っていたようで、放課後に

「なんかの理由をつけて、桂吾の家に杏那さん呼んでくれよ!

あとは、俺 羽交い絞めにして寝技にもちこむからさ~。アハハハ。

ってか、そんなことしなくても、あっさりヤラせてくれそうだけどな~!!」

それを聞いた瞬間、なんか、タガが外れるって、こうゆうこと?

俺は、岡田をボコボコにした。

柔道やってて強い岡田も、突然の俺の凶行に手も足もでない状態で殴られ続けた。

鼻から血が出て、くちびるも切れて血が出ていた。

俺は、悠弥に止められ、我に返った。

岡田は、保健室に運ばれ、その後病院へ連れて行かれた。

鼻の骨が折れていたそうだ。

学校に ばあばが呼ばれて、担任からこっぴどく怒られ、岡田の家に謝りに行くように言われた。


「桂吾、なんでケンカになったの?」

帰り道で ばあばが聞いた。

「言いたくない……」

「そう。でも、謝りに行こうね」

「謝りたくない……」

「桂吾が、なんでそんなに怒って、殴ったのか、理由はあるんだろうけど、言いたくないなら、それはいいわ。

でも、なんの理由があるにしても、大怪我をさせてしまったことに対しては、謝りなさい。

逆の立場で、もしも桂吾が怪我をさせられていたら、私だって、相手のことを許せない!って思うもの。

怪我をさせてしまったことに対して、岡田くんとご両親には、しっかりと謝りましょうね。

私も一緒に謝るから」

ばあばは、俺を怒ることもなく、諭すように言った。

夜、菓子折りを持って、ばあばと二人で岡田の家に行った。

「怪我をさせてしまって、すみませんでした」

俺は、そう言って頭を下げて謝った。

ばあばも、うちの孫が申し訳ありませんでした、と頭を下げてくれた。

岡田は、顔に包帯グルグル巻きの状態だったが、

「鼻、シリコン入れて、少し高くしてもらったんだ。ぷち整形!イケメンになっちゃったかも」

と、笑った。

岡田の両親も、怒ってはいなかった。

「詳しく言わないんですけど、うちのが 桂吾君に失礼なことを言ったみたいで、桂吾君、ごめんなさいね」

と逆に謝られた。


その後、俺は岡田と仲直りして、また遊ぶようになった。

「ってかさ、俺の鼻の骨 折ったのって、桂吾じゃなくて、悠弥じゃね~?」

と、岡田が言った。

「あっ!やっぱりー?俺もそんな気~してたんだよな~!わり~わり~」

あははと、悠弥が笑った。

桂吾を止めに入ったのに、何を思ったか、一発強いパンチを岡田にお見舞いしちまって。

あ、俺 参戦するんじゃなくて、止めに入ったんだった!って、殴った後に気がついた~、って。

ほんとに、悠弥って馬鹿だな~って、3人で笑った。


 ばあばは、裁縫が得意で、俺の服のボタンが取れそうになっていれば、サッと縫い付けてくれた。

俺は、高3の冬 進学も就職もしないことを決め、バイトを始めた。

初めてのバイト代で、前から欲しかった高いダメージジーンズを買った。

でも、その次の日には、ダメージジーンズにあて布して直されていた。

昨日の今日かよ!!まだ、はいてねーよ!!

あまりの早わざに ビックリしたし、笑っちゃった!

けど、それがまた嬉しくて、ばあばが直してくれた そのまま はいていた。


俺は、ばあばとじいじが大好きだ。



 

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