5ー11

 4年目の年


oneの来日公演が現実味を増してきた。

oneのスケジュールは、5年先まで決まっていると言う。

ツアーではなく、単発の1公演を、スケジュールの隙間にねじ込んでもらった。

12月に来日してもらい、リハはライブ前日の午後と当日だけ。

一緒にライブと言ったけど、さすがにキャリア40年近いoneと、4年目のRealが肩を並べて対バンと言う訳にはいかないそうで、oneの来日公演にRealがサポートバンドで出させてもらうということで落ち着いたようだ。

oneサイドから出されたセットリストと、バンドスコアをもらって、みんなでひたすら練習した。

ジョージが作る楽曲は、相変わらずだいぶムズい。

でも、課題を与えられたようで、それにみんなで取り組むのは楽しかった。

ライブの演出はRealに任せますって言ってもらえて、ライブの演出構成を大輝が仕切ることになった。

それと、舞台設備設計を悠弥がやった。

パソコンを操作して、例えば、こうして、あぁしてって、かっこいいセットの案をいっぱい出していた。

あぁ、こうゆう才能があるんだな~って、改めて2人を知ることができた感じ。

ライブ中盤で、oneの衣装チェンジと休憩も兼ねてステージを降りてもらって、Realがoneの曲を数曲演奏しようと大輝が言い、oneに提案したところ、oneサイドから出された回答は、

〈In the shadow〉と〈Get up!get up!get up!〉の2曲。

アレンジは自由にしてくれと言われた。


「In the shadowは、変に手を加えるより、完コピにしよう!Get Upの方はがっつりアレンジ変えさせてもらって!」

と、瞬がアレンジを書いてくれた。

Get Up!の元曲にはないピアノの旋律が際立ったRealらしいアレンジに仕上がっていた。


In the shadowは難しい楽曲。

oneの代表曲としてあげられる有名な曲だ。

まず速いテンポで始まり、調がどんどん変わる。

ドラムとベースがしっかりとリズムをとらないとメチャクチャになる。

ギターも難しい。いろいろなテクニックが必要とされる。

これは、ジョージのギター1本のところを、瞬と俺で合わせてやる。

そして特に、ボーカル泣かせと言われている。

高音域をキープしながらのロングトーン。

高音低音を激しく行き来する。

これを俺たちにやれって?

これを指定されてるのは、試されてるんだなと思った。

アレンジを変えていいと言われたけど、これを完コピしようと言った瞬も、試されてることを意識して、完コピって言っているんだなと思った。


実際にやってみた。

龍聖は、英語も流暢だし、発音もキレイだ。

それを歌声にしても、淀まずキレイに響いている。

最後は、ノーブレスからのロングトーン。

体力勝負な感じでもある。

「マジで楽しい!!」

歌いきって龍聖が言った。

苦しいじゃなくて、楽しい。

「あはははは~!マジでな!!」

最高のボーカリスト。

最高のアレンジャー。

龍聖と、瞬を改めて尊敬した。


 oneの曲だけを練習してるわけにもいかず、Realは忙しかった。

4枚目のアルバムをリリースして、小規模なホールツアーも軽くやった。



 そして12月

ジョージのバンドoneに来日してもらって、横浜アリーナでライブ。

日本での公演は18年ぶりとあって、待っていたoneのファンが大勢いたのだろう。

3万円もするチケットは完売となっていた。

俺たちは とにかく、oneの邪魔をしないように、サポートに徹した。

観客は、Realを見に来ているわけではない。

oneのファンの人たち。

その人たちの前で、oneの曲を俺らが演奏することを、龍聖が歌うことを、認めてもらえるのだろうか。

In the shadow 完コピで練習してきたが、完コピではなく、俺たちらしくやった。

昔、ジョージを忠実に真似してやったつもりが、すげー怒られたのを思い出した。

おまえの音を出せ!って。

弱々しいコピった演奏してんじゃねー!って。

それをみんなに伝えて、楽譜通りやるけど、それぞれ自分の音を出そうって話した。


演奏してみて感じたのは、oneのファンに、Realは認めてもらえたような気がした。


最初から最後まで、同じステージに立たせてもらった。

ジョージはステージで、

「知ってる日本語は、keigoがよく言っていた

“クソジジイ” です」

とか言って笑わせてくれた。

oneのファンはRealも応援してあげてね!って言ってくれて、ちょっと年齢層高めの人たちだけど、本当にoneのファンの人たちがRealのことを認めてくれて、応援してくれるようにもなった。

oneとの共演は、俺らにとって凄く刺激的だったし、いい経験になった。

何より、ジョージとoneのメンバーに再会できたことが、すごく嬉しかったし、俺の最高の仲間たちを紹介することができて嬉しかった。

龍聖もエレンのコーラス出来て、超嬉しいって喜んでいた。

エレンも彼は素晴らしい!って、龍聖を誉めてくれた。


ライブが終わり、メンバー同士いっぱい話をして、別れ際ジョージが俺を呼んだ。


「keigo、オレ結婚は2回してるけど、子供はいなくてな。

8年前、ハリスから若者連れてくるって言われた時、ハリスが生んだ、俺の子なのか?って、マジでドキっとして、マリアの子だってゆうから笑っちまった。

でも、なんてゆうのか、おまえと過ごした半年な、息子ができたみたいな気持ちになったよ。

で、8年ぶりに会ったら、こんないい面がまえになったな!

Realは、いいバンドだ!!

これからもっともっとデカくなれよ!

keigo!!本当に、俺たちを呼んでくれてありがとう」

ジョージがギュッと抱きしめてくれた。

だから!イテーって!!

すげー、マジで 嬉しかった。





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