5ー39

 龍聖との写真集の仕事のあと、3人と合流して5人で雑誌の仕事を2本して、マンションに帰ってきたのは12時過ぎだった。

疲れた。

帰ったら、曲作りの続きをしようかと思っていたけど、ベッドに横たわったら、ヤル気がなくなった。

でも、寝る気にもなれなかった。


少し飲もうか……

起き上がって、グラスに氷を入れて、ウィスキーを注いだ。

口をつけずに、そのグラスを眺めていた。



今日、ずっと考えていたこと。



俺は、彼女の、初めての相手だった。



16年前

あの海での一夜が、彼女の初めてだったなんて……


助けてもらったお礼

体を求められたから、それに応じた……


助けたつもりなんて、全くなかった。

俺は勝手に滑って、海に落ちた。

だけど、あの時 確かに彼女は、ずぶ濡れの俺に抱きついて、泣きながら ごめんなさいと謝っていた。

俺は、本当に寒くて、風呂に入りたくて、ラブホに入っていいかと聞いた。

その流れでのセックス。

抱いていいか、なんて、確認もしていない。

あの時 なんだか、俺は いつになく興奮していた。

あんなにも、抱きたいって思ったこと初めてだったかも。

白い肌、くっきりと深い鎖骨、ピンク色の乳首、こぶりな胸。

肌が白いから、アンダーヘアが黒々として見えて、ものすごい卑わいな感じだった。

挿入したら、すごくキツくて締まりがいいって思った。

俺の大きさに合わせたようなサイズ感。

それもそのはず、初めてこじ開けたってことだったのか。

俺は ただただ 興奮していた。


彼女は、ギュッと目をつむっていた。

怖かっただろう。

はじめてなのに、好きでもない男に抱かれるのは嫌だっただろう。

痛かっただろう。

そんな彼女のことなどお構いなしに、俺はやるだけやって、1人でイッて、そのまま吸い込まれるように眠りに落ちてしまった。


次の朝、体中痛くて、目が覚めた。

俺は裸のままだった。

彼女も裸のままだった。


あ、俺 この女とほんとにヤッたんだ。

あんなに興奮したセックスだったのに、不思議と実感がなかった。

夢の中の出来事のようにも感じられていた。

昨夜、あんなに怯えたようにギュッと硬く目をつむっていた表情とは違って、穏やかな安心しきっているような寝顔だった。

俺に寄り添うように眠っている。

俺はまた、ゴムをつけて、眠っている彼女に挿入した。

彼女は、ぼんやりと目を覚まし、甘い吐息をもらした。


あの初めての夜に、俺は彼女の初めてを手に入れて、引き換えに俺は心を奪われたのか。


手に入れたことも、

奪われたことも、

気がつかないままで……

今ごろかよ……

おせーだろ……


氷が溶けて、グラスで音をたてた。

一気に飲み干して、どうしようか迷った。

もう少しだけ飲もう。

ストレートで、グラスに半分注いで飲んだ。


彼女のことが好きだった。

こんな15年経っても忘れられないくらい、

彼女のことが好きだった。

会いたい

無理やりにでも、ダンナから奪い取りたい。

そう言えたなら、どんなに楽だろうか……


また、グラスに半分注いで飲んだ。


酒の勢いで、電話したくなる。

15年も前の携帯番号なんて、もう変わってるよな……

今は、横浜に住んでるって言ってたな。

繋がるか繋がらないか とにかく 電話して、今から会いに行こうか。

って、ダンナも子供も家にいるなら、ムリか。


よくRealのkeigoが誘ったら、どんな女も股を開くだろうっていう、言われ方をする。

彼女は、股を開いてくれるのか?


あぁ、頭がクラクラする。

何杯飲んだのかな?

飲みすぎだろう……



もう1杯だけ……

あと1杯だけで、もうやめよう……



夢をみた

彼女とセックスをした


やりまくった

出しまくった


夢精した


35で夢精は ヘコむ……

何やってんだ、俺は……

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