5ー26

 今日は、会社の会議室で、ツアーのセットリスト決め。


「今回のツアーのセットリストの候補を挙げましたので、確認をお願いします」

スタッフさんが紙を配ってくれた。

通常のライブでは、俺たちは20曲くらいが平均かな。

今回もそのくらいか。

「ツアータイトルが、LOVESICKNESS2ツアーってことですよね?

と、言うことはまずは、LOVESICKNESS2の曲

13曲を全部入れて、あと、今までのシングル曲を7曲ほどってことでいいですか?」

瞬が、スタッフさんに尋ねた。

「それも皆さんのご意見でといったところですが、ファーストを踏襲しての繋がりも出せればと思いますので、ファーストアルバムから、

YO・I・Nとラナンキュラスとdesolate winter landscape 辺りを入れてはどうかと思いまして。それ以外でも全然いいんですが」

「そうですね。今回の2を総て入れなくてもいいかなとも思うので、ファーストから3曲、セカンドから10曲、シングル7曲くらいでいいかもしれないですね」

と、大輝が俺らを見渡して言った。

「じゃ、まずセカンドから選ぶとして、ってゆうか落とすのを3曲決めよう。

龍聖、歌いたくないやつあるか?」

「えっ?」

龍聖は面食らった顔をした。

そう言う決め方をしたことは今まで1度もなかった。

「俺が歌いたくないやつを選ぶの?

ってゆうか、歌いたくないやつは ないよ!」

笑いながら龍聖が言った。

「あえて言うなら、Truth…Reality は、一曲だけで歌うなら問題ないんだけど、アップテンポなのと文字数多いのと、最初から最後までずっと歌ってる感じで間奏がないから、キツいっちゃキツいけど、歌いたくないってわけじゃない。

むしろやりたいけど、曲順かな」

と、龍聖が続けた。

「それな!曲順だろ!俺も入れたい方だな~」と、悠弥も言った。

「完全に外すと言うんじゃなくて、パターンA、パターンBとかでやったらどうだ?あと、サプライズナイト仕様でも考えないとだし」

「俺も今の瞬の意見と一緒だけどさ、

漣sazanami は、俺バイオリンやるし、瞬はコントラバス入れるからさ、それはパターンAとしてはやるとしても、サプライズナイトでは交代してできないから外すってことになんじゃん?だから、まぁサプライズナイト仕様をパターンBとして考えてもいいかもな」

「わかった。

じゃ、曲順はまた考えるとして、曲目は、」

と言いながら、ホワイトボードに大輝が書いた。

「パターンA、B、それぞれこんなとこかな」

「あぁ、いいな。バランス的にも」

「そうだな」

「まぁ、ちょっとリハやりつつ、ボリュームもみて、変更してもいいって感じでやるか!!」

「了解!!!!」俺たちは声を合わせた。


10年目ともなると、割とスムーズに事が進む。

各々が何をすべきかがわかっているから、いちいち言われなくても動けるようになった。

スタッフさんたちとも信頼関係が築けていると感じられるから、お任せできる物はお願いしてやってもらうようにしている。

最初の頃は、わかりもしないのに、1から10まで自分達でやらないと気が済まなくて、なんだか面倒くさいことをしていたと思う。

まぁ、そう言う経験を繰り返しながら、今に至っているのは、それはそれで良いことかもしれない。


スタジオでのリハをやりつつ、取材も積極的に受けた。

テレビ、ラジオ、雑誌、新聞。

歌番組も今年は多く出ている。

彼女は、観てくれているだろうか。

そんなことばかり考えていた。




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