5ー15

 6年目

 年初め、俺1人の写真集の第3弾を出すと言われた。

今まで出した2冊の写真集は、売上げも好調だった。

で、撮影にエジプトに行きたいと希望を出したら、すんなり通った。

なんでエジプト?ってみんなにも聞かれたけど、昔から行きたかったから!って答えた。

本当は俺が行きたかった訳じゃない。

彼女が、そう言ったから。


「どっか行きたいとこある?」

「う~ん、そうだな~。ずっと昔からエジプトに行きたいって思ってるよ」


俺は、デート的なことで、どっか遊びに行かないか?ってつもりで聞いたけど、そんな気がない彼女には、夢の話と思ったのか、そう答えた。


俺は、アメリカとフランスとイギリスには馴染みがあったけど、どこか行きたいところって聞かれてエジプトってゆう発想はなかったから、エジプトの何が魅力なのだろうと調べた。

俺はバカだから、エジプト=ピラミッドってしか思い浮かばなかった。

いろいろ調べたけど、やっぱり一番はピラミッドで正しかった。

カイロ郊外のギザ地区にある、ギザの三大ピラミッドは、観光には絶対外せない。

外せないと言えば、エジプト考古学博物館は絶対に行きたい。

ツタンカーメンの黄金のマスクとか、黄金の棺とか、マジで見たい!

写真集の撮影に行って、観光はダメかな?

でも、せっかく13時間もかけて行くんだから、どうにかお願いしよう。


古代エジプト文明とかにも興味ある。

“エジプトはナイルの賜物”ってゆうけど、意味わかってなかった。

ナイル川の氾濫によって、肥よくな土が運ばれて、作物を作ることができたって。

川の氾濫なんて、悪いことだと思ってた。

だけど、川の氾濫を計算に入れていたってことに驚いた。

雨期を正確に知るために、天文学で暦ができ、氾濫の後に、きちんと土地を元通りに分配するための測量技術、ヒエログリフに見られるような文字。

すべてが3300年前にあった文明とは思えない。

すごいことだ。

そんな歴史の風を肌で感じたい。

彼女もそんな風に思っていたのだろうか。


エジプトでの撮影の為に、俺はみんなから1週間離れた。

次のアルバムの曲作りもしなきゃならないから、飛行機の中でも、ノートに詞だけ書いたりした。

エジプトに行くことで、曲作りに何か活かせたらいいな。


彼女は、昔から行きたいと思っていたエジプトに行ったのだろうか。

いつか彼女が、俺の写真集を手に取ってくれることがあるだろうか。

そんな風に思った。




 この年、ヒーロー物の主題歌をやりたいって、俺から提案させてもらった。

バリバリのロックバンドとしてやってるRealと、子供向けの番組とは、相性が良くないのでは?と、会社的にもメンバー的にも反対意見だった。

でも、3年前にアニメの映画の主題歌とかをやらせてもらって好評だったこともあるし、子供向けに幼稚に作るんじゃなくて、いつものRealの感じでカッコよく作りたい。

それぞれの正義で、守りたい誰かの為に戦う、それって、すげーカッコいいことじゃん!

そうゆうヒーローをリスペクトした曲にしたい。

ヒーローのカッコ良さをRealとして表現したいと、強くアピールした。

何曲かサンプルとして作った。

龍聖は、アニソンとか意外と好きなんだって、ノリノリでサンプルの歌入れをしてくれた。

その出来が良かったから、スタッフも交渉してくれて、来期の仮面ライダーの主題歌に採用された。

ヒーロー物の主題歌にこだわったのは、彼女がヒーロー物が好きだって言っていたから。

普段おっとりとした性格の彼女が、ヒーロー物を熱く語っていて笑えた。

きっと、今もヒーロー物を好きなんじゃないかと思うから。


ヒーロー物、エジプト、花

今までの俺では、なんの興味もなかったもの。

それにこだわるのは、彼女の興味あるものが いつの間にか、自分の興味あるものになっているからなのか、彼女をもっと知りたい、近づきたいって思うからなのか、よくわからない。


彼女に、Realのkeigoを知ってほしい。

Realのkeigoが、あの桂吾だって、俺だって 気づいてほしい。

彼女に俺の気持ちをわかってもらいたい。


そんな気持ちで やっているのか……

それも……よくわからない……














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る