第41話⁂剛と初美の別居!⁂


 剛は窮地に立たされ考えあぐねている。

{まだハッキリした事は分からないが、初美は何故A氏を殺害しなくてはならなかったのか?}

 こうして家族会議が設けられたのだ。


 家族会議と言っても万里子お嬢様に聞かれては不味いので、鎌倉の本宅ではなく、横浜の中心部にある剛が仕事で使うマンションで、話し合いがもたれた。


「初美一体どういう事だ。あのA氏が不審死を遂げたあの日曜日、いつも休みの日は必ずと言って良い程連絡を取り合っていたのに、あの日丸1日連絡が付かなかったな~?……一体どこに行っていたんだ?」


「…ああ~あの日は母が入院していたのだけれど、様態が急変したので1日中付きっ切りで連絡出来なかったの、本当にごめんなさいね!」


 剛は初美の余りにも空々しい噓に、尚更確信めいたものを感じ、抑えきれずに薄っすら目に涙を溜めている。


「ウウウウッ(´;ω;`)ウッ…そんな白々しい噓通用しないんだよ、俺は病院で全て聞いてしまったんだ……あの日お義母さんは退院も近いので、外泊許可が下りて居たそうじゃないか?……そしてあの日井上幸子に成り済まして、高級レストラン〷で食事を取った後、外車で帰って行ったそうだけど、その時にお義母さんが目撃されていたんだ。もう噓は通用しないんだ!」


「第一母が目撃されたと言うけれど、もう12年も前の事だからハッキリ分からないじゃないの?」


「イヤ!社報に写っていた12年前の写真と現在の写真も見せたけど、お義母さんに間違いないって言うんだ!…そしてその時にお前も変装して同乗していたんだろう?」


「私が乗っていた証拠でもあるって言うの?」


「あちこちで若いパンパン風の女性が目撃されていたんだよ!ウウウウッ(´;ω;`)ウッ…実は娘2人は親同士が仲が悪くても、1歳違いの義姉妹だから仲が良いんだ……何でも隠さず話していたんだ!……まだ万里子が幼い頃、何も分からないだろうと思い、うっかりお前が万里子にフィリピンの話をした事が有っただろう?・・・万里子はフィリピンの血を引く娘だから、いつも心の片隅にまだ見ぬフィリピンへの強い思いが有ったのだと思うんだ……横浜にやって来た小百合に『大人になったら一緒にフィリピンに行こう』と約束していたらしい。……俺も何故?初美がフィリピンに居た事が有るのか……?不思議に思っていたんだ……柳田酒造のお嬢様だから家族で旅行にでも行ったことが有るのかな~?とその時は何の疑問も感じなかったが?それでも…柳田酒造にお嬢さんはいなかったという事は???ここには何か秘密が隠されているに違いない?そして…ふっと感じたんだ……そう言えばあの顔は純粋な日本人ではない事を……A氏が殺害されたとなれば、真っ先に疑われるのはお義母さんとパンパン風の若い女性だ……貴美子の家族以外、まだ誰もお義母さんとA氏があの日会っていた事は知らない。何とか今の内に真実を突き止める必要があると思い、どんな些細な事からでも何か手掛かりが見つかるかもしれないと思い、フィリピンの日系人が住んでいる場所を調べて、そこで日本人街ダバオに行き付いたんだ……すると案外早く、お前のお父さんとお母さんを知っている人達に出会えたんだ。それはそうだ!この町の産業に大きく携わっていた有名な人達なんだからな~!……そして俺は全てを知ってしまったんだ……戦時中、日本人が敵国アメリカの植民地であるフィリピン人を多く虐殺した事で、日本人はフィリピン人から憎まれて、恨まれて、フィリピンで生活していく為には日本国籍を捨てるしかなかった事。そこで戦時中日本に徴収されていたマ-クは戦死した柳田勇の戸籍を悪用して成り済ましていたという事を……?それを隠すために。お前達親子が共謀して過去を知る唯一の人物を殺害したんだろう?」


「…ウウウワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭全て知られてしまったのね?・・・

ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭でもA氏を殺害してはいないわ?・・・あの時父が『A氏の弱みを握っているから?話し合う!』水商売は昼夜逆転の生活が当たり前の人も多いので深夜だったけど疑問に思わず別れたのよ?・・・それから父はA氏を殺害なんかしていないと思うけど?ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭あなたあんまりよ⁉私達を殺人者呼ばわりするなんて?」


「…それでも…?これだけの犯罪を犯しているのだし…もし万が一全てが分かってしまったら信用が台無しだ。俺だって従業員を路頭に迷わす訳にもいかん!……お前の事は今でも大切だが…全ての真実を解明してお前達が行った犯罪が表に出ない為の裏工作が必要だ!……その為にもあの貴美子夫婦の口封じが必要だ。その為にもあの夫婦の条件を飲んで、お前達に罪が掛からないようにしなくてはならない。その為にも暫く別居をしよう?」


 こうして致し方なく別居に踏み切った剛と初美なのだが、2人の心が覚めての別居ではないので最初の内は別居と言ってもスープの冷めない距離の、同じ神奈川県に別居をしていたのだ。


 だが……万里子お嬢様がどうしても母親と一緒に暮らしたいと言うので、鎌倉の邸宅を出たのだ。


 これを幸いに貴美子夫婦は、社長剛に知り得た情報は絶対に口外しない事を条件に、夫の中元は本社の建築管理部課長として栄転にさせてもらい、家族で横浜に移って来た。


 だが……思わぬ事態が起きて初美は追い詰められて行く事になる。


 それは、ある日貴美子から剛に電話が入り?

「…小百合がパパと生活したいと言っているのよ」


 剛は甘え上手な小百合が{そんな嬉しい事を言ってくれるなんて!}

 嬉しく!!嬉しくて!天にも昇る思い。


 こうして小百合が継承者として君臨して行く事になるのだが………?










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