第40話⁂アリバイが崩れた⁉⁂


 それでは何故母親初美と万里子お嬢様が、本宅から追い出されなくてはならなかったのか?

 剛は、この不動産会社【ATホ-ム】の後継者は初美との間に授かった万里子お嬢様以外考えられないという思いから、幼い頃から社長になるべく帝王学を随所に教え込んでいた。


 そんな時に夏休みを利用して遊びにやって来た、まな娘小百合なのだが、

 最近の両親の余りにも殺気立った言動に思い余った小百合は、とうとう我慢が出来ずに父剛に全てを打ち明けたのだ。


{エエエエエエ―――ッ!初美が我が社の上顧客A氏の不審死に関与しているだと―――――ッ⁉……それは聞き捨てならぬ!…それから初美は柳田酒造のお嬢様と思って疑わなかったが?本当はお嬢様などいなかっただと~?……まさか~?

それでも……?もし初美が犯罪に関っていたとなればまた別だ!……これは徹底的に調べなくては?だが……?大空襲であの当時の事を知る人物などいないだろう?}



 そんな社長の期待の星、万里子お嬢様なのだが……?

{大変なことだ!会社の顧客殺害に関与しているかも知れない妻初美の娘という事は、いつ犯罪者として初美が警察に捕まるかもしれない。まさか犯罪者の娘を跡継ぎになんか出来ない。どうしたらいいのか?}


 こうして愛する妻の無実を証明する為にも、絶対に1954年5月某日の2人のアリバイを証明する必要があると思い徹底的に調べたのだ。


{1954年5月某日あの日は日曜日だった。私達はあの頃は、もう結婚の約束も交わしていたな~!……あの日の個人手帳には空欄になって居る。休みは必ずと言っていいほど会っていたのに?……あの日確か…?母が肝硬変で入院中だからと言って会わなかったな~?けれども確か…1ヶ月以上入院していたが……あの後直ぐに退院したと言っていたな~?…だけど入院して直ぐの時も、休みの日は大体会っていたな~午前か午後に迎えに行って会っていたのに…あの日だけ丸1日会わなかったな~可笑しい……?病院で様態が急変したのかな~?}

 早速病院に出向いた。


「通院している柳田和子の婿ですが、入用が有ってお聞きしたい事が有るのですが?12年前の1954年5月某日入院していたと思うのですが、この日は何かお義母さんに異変があったのでしょうか?…アッ?……イエこの日連絡が一日取れなかったので?」


「もう12年も前の事ですから……?チョット分かりませんね?……アッでも当時担当の看護婦が居ますから、しばらくお待ちください」


 暫くすると当時を知る看護婦が現れて「あああ~?あの日は外泊許可が出て外泊していましたね!」


「ありがとうございました」



{アアアアアアアア~?な~んという事た!外泊して1日中連絡が取れなかったのは井上幸子に成り済ましていたので連絡が取れなかったのだろうか?カーマニアの男性も写真の女性は、お義母さんに間違いないと言っているし……?嗚呼!やっぱり井上幸子に成り済ましていたのはお義母さんに違いない!……そしてパンパン風の女アヤに変装していたのは妻の初美だったんだ!嗚呼~?一体初美は何者なんだ?……柳田家の戸籍を悪用する目的は何だ?…そして噓がバレそうになったので井上幸子に成り済ましてA氏を殺害したのかもしれない?何故もっと早く全てを話してくれなかったんだ?}


 愕然とする剛は余りのショックに、何処をどう歩いて家に辿り着いたか分からない程、只々当てもなくさまよい続け、憔悴しきって、やっとの事家に帰る事が出来た。

 こうして家族会議が設けられた。



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