第12話⁂事件の引き金!⁂
静子と直樹は腹違いの兄弟なのだが、兄弟だという事は父親の忠から聞かされていないので静子は、親しい知り合いのお兄ちゃんぐらいにしか思っていない。
一方の直樹もまさか、兄弟などとは努々思っても居ない事なのだ。
じゃ~何故、親子の名乗りもしないで、ましてや兄弟である事まで何故隠す必要が有るのか?
それは一にも二にも2人の事をおもんばかっての事。
球界一の人気スタ―直樹と、まだ駆け出しだがローカルミュージシャンとして頭角を現して来た、才能溢れる静子の将来に水を差したくないばかりに隠しているのだ。
人気者2人が腹違いの兄弟ともなれば興味本位で全て暴かれてしまう。
それも2人が、最近メキメキ頭角を現して来た、九州地方の武闘派の暴力団吉川会の組長の子供達である事や、出自の事等全てが白日の下に晒されてしまう。
そんな負の部分をワザワザさらけ出す様な事は、口が腐っても出来ない事なのだ。
それでも、例え親子の契りを交わさなくても、父親の忠は我が子が可愛いばかりに陰ながらバックアップをしているのだ。
やがて娘の静子可愛さに、行き過ぎた行動の果てに取り返しのつかない事件が起こってしまう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1869年から1947年まで続いた貴族階級が、敗戦により財産没収・身分剥奪
されてしまい、あの当時は貧乏華族も多く存在した。
そんな困窮の一途を辿る事になった貧乏華族の貴美子一家なのだが……。
丁度その頃、家が貧しくて親に売られた赤線地帯の女達や、生活に困窮した家の若い娘さん達が、生活する為、又家族の為に、主として在日米軍将兵を相手にした街娼に身を落としていた頃の事。
あの当時、街中にはパンパンで溢れ返っていた。
東京の上野、新宿、有楽町で、厚化粧に派手な格好の若い娘が、パンパンと呼ばれ活動していた。
戦後の焼け跡の中、行き場を失った人々で溢れ返っていた時代に、街中では丁度あの頃、リンゴの唄が頻繫に鳴り響き、戦後の復興の応援歌となっていた。
可憐な少女の思いを赤いリンゴに託して歌う歌詞が、終戦後の焼け跡の風景や戦時の重圧からの解放感とうまく合っていたのと、敗戦の暗い世相に打ちひしがれた人々に明るくさわやかな歌声がしみわたり、空前の大ヒットとなった。あの心躍らせるような明るい歌声が生まれた。
【パンパンとは、戦後混乱期の日本で、進駐軍兵士を相手にした街娼である。戦争で家族や財産を失って売春を余儀なくされた女性が多かった。彼女たちの多くは外国人専門の「洋パン」だった】
◇◇◇◇◇◇◇◇
新時代の幕開け戦後復興期真っ只中の1950年。
春は桜だけと思っているあなた……
百花繚乱色とりどりの花が咲き乱れて ✶*・。☆⋆
季節が緑と花の洪水になって溢れ出す🌸
(貴美子は旧制高等学校を卒業して【ATホーム】に就職して……そして、やがて社長秘書として働くようになった貴美子。
だが、その3年後に配属されて来た初美はこの敗戦化の中、若干18歳の少女ながらどんな事をしても、家族を守らなければならない立場にあったのだ。
一家の大黒柱として、何としても身体の弱い母を助けなければならない。
一方の貴美子はおっとりとした、つい最近までは全てお手伝いさん任せの様な生活が当たり前だったお嬢様。
2人の間には、生き様と言い、背負っているものと言い、全てが違い過ぎる。
だが、貴美子は、今まで蝶よ花よと持て囃されていた生活を、急に変える事など出来る筈がない。
ましてや、自分が家族の大黒柱として働く器量など、何処に持ち合わせていようか……?
そこで考えたのが、奥様もいない今、この有能で大富豪の社長夫人になる事を考え付いたのだ。
いつも社長に付いて回っている貴美子は、案外早くそのチャンスに巡り合う事になる。
それは、北海道の土地開発で同行した時の事。
接待を受けた社長はぐでんぐでんに酔っぱらっている。
ホテルに着いた社長をホテルのボーイと一緒に部屋に運び込み、どの暗い経っただろうか、時間は夜の9時をチョット回った頃の事。
貴美子はまだ自分の部屋に帰らず社長に付きっきり。
社長がやっと酔いからさめて一安心の貴美子は、何を思ったのか?浴衣姿のまま社長のベッドに潜り込んだ。
「貴美子君何の真似だい?ダメだよこんな事しちゃ~?」
すると貴美子が、惜しげもなく浴衣をはだけて、まだ初心な初々しい美しい身体を社長に晒し「社長私を好きにして下さい!」
「ナナッ何を言うんだい?……大事な娘さんにそんな事は出来ないよ!」
尚も社長に身体を摺り寄せ、更には社長の手を乳房に当てて、唇を重ねたのだった。
我慢が出来なくなった社長は興奮して……そして2人は重なり合った。*💛*。⋆
初美が配属されて来るまでの3年間の間に、社長と貴美子はとっくに深い関係になっていたのだが、そこに初美が、配属になって来て、最初の内はお嬢様育ちの何をするにも、のんびりとした貴美子を起用していたのだが、戦後復興の高度成長期まっしぐらの時代、慣れ親しんだ肉体関係のある貴美子だからと言っても現実は厳しい。
そんな悠長な事は言っていられない。
徐々に社長としても仕事の出来る初美を重用するようになっていった。
やがて社長は初美の優しさと美しさ、更には、生き様と言い、背負っているもの大きさと言い、また若干18歳でこんなにも熱心に仕事に向き合う姿を見るにつけ、いつしか初美の事を心から信頼するようになっていった。
そして最近は、仕事で付いて回るのは初美ばかり、既に社長と肉体関係のある貴美子は、社長にのめり込んでいる。
初めて肉体関係を結んだ、自分の命より大切な社長。
ましてや、傷物にされて捨てられる事は死ぬより辛い事。
最近は社長と初美で行動する事が殆ど。
いつものように2人で仕事に向かった社長と初美だが、貴美子は最近{まさか、2人は出来ているのでは……?}と心配で夜も眠れない日々が続いている。
等々心配になり、仕事が終わったにも拘らず、社長室の隣りの窓からこっそりと様子を伺っていたのだ。
すると2人は夜の8時頃に社長室に帰社して、暫く事務処理をしていたかと思うと2人は帰り支度を始めている。
やがて誰もいないと思ってか、熱い抱擁を交わしているではないか。
{ああああああああああ―――――――――――――ッ!許せない!許せない!許せない!}
やがてこの事が、事件の引き金となり恐ろしい事件に発展して行く事になる。
【荒廃から新生国家へ
昭和20年(1945)8月15日終戦後、わが国は新しい国に生まれ変わった。
大日本帝国から民主主義『国の在り方を国民一人一人が決める権利』平和主義の日本国への転換であった。しかし、敗戦国が経済自立のできる独立国へ進む道はけっして容易なものではなかった。新たに国を築くための闘いが始まった】
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