第13話⁂三角関係!⁂



 貴美子はあの日の光景が、頭から離れず眠れぬ日々が続いている。

 あの日の光景とは、社長の剛と初美が仕事で出掛けて、夜の8時頃に社長室に戻って来て、貴美子が見ているとも知らずに誰もいないと思って、熱い抱擁を交わしていた日の事だ。


 貴美子は{同じ部署の、それも自分の後輩と社長ができていたなんて、絶対に許せない!}

 余りの出来事にショックを通り越して只々あの2人が許せないばかり。

{悔しい!許せない!社長との、あの蜜月の日々は何だったの~?只の遊びだったの……?}

 毎日自問自答の日々。


 やがてまともな判断も出来ない程追い詰められた貴美子は、恥も外聞もかなぐり捨てて社長宅に向かった。


「私は社長秘書の中田貴美子と申します。社長はお見えになりますか?」


「あ~ハイ!あいにくまだ仕事からお帰りではありません」


 応対に出たお手伝いさんにそう言われ、立派な門構えの塀に隠れて待っていると、小一時間くらい経っただろうか?

 社長の高級車が駐車場に入って行った。


 車から降りて来た社長の剛に、声を掛ける貴美子。

「社長!話したい事が有ります」


「な~んだね?こんな夜遅くに……まあ~入りたまえ!」


 2人は豪邸の応接室に入って行った。

「それで話は一体なんだね?」


「…社長…社長…私は知っているのです。社長と初美ちゃんの関係」


「イッイヤ?私と柳田さんは只の社長と社員の関係だけだよ」


「ワァ~~~ン😭・・そんな~!私は・・私は2人が抱き合っている所を目撃しているのです。ワァ~~~ン😭ワァワァ~~ン😭そんな噓通用しません。ワァ~~~ン😭」


「…………」


「社長、私との1年半の関係は只の遊びだったのですか?………それから‥それから・・私のお腹には・・社長の赤ちゃんが」


「エエエエエエエ――――――――――――――――ッ!避妊も万全にやっていたのに~?」

「私絶対にこのお腹の赤ちゃん生みますから!」


「…………」


「社長何とか言って下さい!」


「……私としても不妊で苦労したから………産んで欲しいが・・結婚は・・結婚は出来ないよ!」


「それどういう事ですか~?」


「…認知するという事だよ……君にもそれなりの事はするつもりだ!分かってくれ!」

「…それって私を日陰の女になれって事ですか~?ワァ~~~ン😭ワァワァ~~ン😭仮にも華族の家柄の私にそのような酷い!ワァ~~~ン😭ワァワァ~~ン😭まさか、あの初美さんと結婚を考えているのですか~?‥あんな卑しい身分の女なんかと…目を……目を覚まして下さい!」


「…それは‥それは違うよ!あくまで柳田さんは、大事な我が社の社員にしか過ぎないよ!」

 話し合いは延々と続いた。


 やがてお腹もどんどん大きくなって行き、社長の両親も知る事となっていった。

あれだけ子供が出来なくて苦労した家族だから、両親は貴美子との結婚に前向きだ。


 だが、社長の剛は、納得がいかない。

そう言われれば言われるほど、あの初美が愛おしいのだ。


 結論も出ないまま月日は経ち、やがて玉のような女の赤ちゃんが誕生した。



 その知らせは初美の耳にも入り、初美は全てを知ってしまう。

 一時は落ち込んだ初美だが、到底身分の違う社長と結婚出来るなど努々思っても見なかったので……?


 苦しみ抜いた挙句。

「…許せない!私を散々弄んでおきながら、先輩の貴美子さんとも付き合っていたなんて!……それでも家族の為にも会社は絶対に辞める事が出来ない。・・私の様な母子家庭では身分が違い過ぎる!諦めよう」


 精神的な打撃は想像を絶するものが有ったが、美しい【ATホ-ム】ナンバー1の美人で有能な社長秘書を誰が放って置きましょうか。


 早速、設計部の有能な若手エリ-ト社員工藤が、最近1人で考え込んでいる様子の、すっかり明るさの無くなった初美を心配して、何かに付けて声を掛けてくれるようになっていった。


 工藤もまさか社長の愛人だとは知らずに近づいたのだ。

 やがて2人の姿は、あちこちで目撃されて、社長の知る所となる。


 社長も2股を掛けて散々2人の女性を傷つけておきながら、その噂を知り内心穏やかではない。

{一番大切なものを失う事など絶対に出来ない!}


 やっと目が覚めた社長は{初美をどんな事をしても失いたくない!}

 そして初美の元に向かった。


 全くこの社長にも困ったものだ。

 折角初美も、工藤のおかげで傷も少しずつ癒えてきているのに、またしても火に油を注ぐような事をするなんて―――


 この後更なる悲劇の連鎖が起こって………。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る