#006 ヒモリの家

 あなたがルノアルに着いたのは深夜のことだった。それ以上詳しい時刻はわからない。あなたは早速、「ヒモリ」の家の場所を尋ねるために明かりの灯っている家屋を探す。宿屋が見つかり、そこでヒモリという人物の住居のありかを教えてもらうことができた。

 彼の家は、予想に反して立派なものだった。邸宅といってよいかもしれず、あのみすぼらしい老人と交友関係を持ちそうな人物の家ではない。少し不安になりながらも、あなたは頑丈な扉を何度も強く叩く。ややあって、扉がかすかに開かれると、不機嫌そうな中年の男が姿を現した。40代中頃で、鷲か鷹かに喩えられそうな鋭さと気高さを感じさせる。

「誰かね、こんな時刻に!」

 あなたは老人のランタンを差し出して言う。

「これの持ち主が、先ほど亡くなりました。私はヒモリさんを訪ねるように言われたのです」

「何と、エイカ先生が! 本当にお亡くなりになったのか!?」

「ええ、私が会った時にはほとんど動けない状態でした。かなり南の大きな樹の下に、私が埋葬しました。……あの、少し休みたいんですがね」

「ああ、これは失礼。どうぞ、中へ。カオル、来なさい! 大変だ!」

 彼はあなたを応接間へ案内すると、娘と思われる「カオル」に「エイカ先生」の死を伝え、客に夜食を差し上げるようにと指示した。

 #007へ進む。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る