夢を忘れた馬鹿へ贈る

世界は優しくないばかり


時が流れば そりゃ人だって変わるさ

そんなことわかりきったつもりだった

時だけじゃない 立場も お金も

人を変えていってしまうんだな


いつでもファンと同じ目線に立つよと

約束していたロックスターだって

どかんと売れて 大金手に入れてから 

スーパーの特売豚肉 買わなくなったろ

きっと毎日ゴテゴテ霜降りばかり食って


ギラギラ光る時計に目の見えぬサングラス

自覚してるか? あんたはもう同じ目線で

世界を見れちゃいないんだ 悪いことじゃない

人ってそういうもんだって それだけの話さ


とはいえもちろんそれは 一部の

光の当たったやつだけで 俺は

今も尚 何も見つけられずに

今も尚 誰にも見つけてもらえずに


フードを深く被ってマスクをつけて街を歩く

きっとそれは誰かに見つけて欲しいなんて

飢えた子供みたいなくだらないわがままで

俺にとってはあんたへの小さな反感なんだ


職質の警察官が俺の名前をきいても

大した反応はかえらない わかってた

だって 俺は花開かなかった存在さ


信じるものも 信じていたものも

俺を取り巻く全てのものがこれだけ

変わっていくのに一体何を信じりゃいい


一寸先が闇じゃない

今ココこそが闇なんだ


上を向いたら涙がこぼれないって?

それっぽいこといって馬鹿言うなよ 

上を向いたって溢れるもんは溢れるんだ


雲の上には幸せがあるって?

それっぽいこといって馬鹿言うなよ

吹けば飛ぶような希望に何ができるんだ


結局どこを探したってみつかりゃしない

未来の地図も 宝の地図も 暗闇で


唯一あるのはただひとつこの手に握った

ランタンのなかに灯火ひとつだけ

これさえ守り抜けれたら、俺ひとり

いや、がんばればもうひとりくらいの

足元は照らしてやれるだろうなと思う


努力や才能が当たり前に賞賛される世の中で

こうして暗闇に灯火ひとつで旅路をあるく

人間がいなくなったわけじゃないことを

スーパースターが思い出してくれるといい


あんたが来れば この世界は輝くんだから


もやの中 行方なき道 姿なき敵

全部全部 はじめからきっとこうだった

自分で光を集められない人間は

こうして歩いていくしかない


10年前にあいつと内緒でしまいこんだ

くしゃくしゃになるまで大切にした

宝の地図が俺の手の中にある


あんたはもう忘れちまったかな

こんな子供のガラクタだけど さあ

せめてもの行き先くらいにはなるんだ

希望くらいにはなるんだよ なあ

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