第5話 妖精さんの要求とは

「お困りのようだね……」


「あっ、カステラの妖精さん!」

音もなく厨房に妖精さんが現われた。床に倒れた騎士団の皆さんを見て、妖精さんはあからさまにドン引きした。

「え、気絶? カステラを食べて気絶? なんで? いや、怖い、こわ……え、どういう? え? なんで?」

「あの、私も自分でもよくわからないんだけど、カステラを焼こうとすると、どうしても変なアクシデントが発生してしまうの。無意識でやっちゃうみたいで止められないの」

「ええ~。アクシデントっていうか、故意だよね。おじさん、悪意を感じるんだけど。きみって実はアンチだよね? カステラのアンチだよね? こわ」

「誤解だよ! 私はカステラを愛しているよ! ねえ、妖精さんは師匠と同居していたから、いっぱいカステラ作りを見てきたんだよね。だから、私が上手にカステラを焼くにはどうしたらいいかアドバイスできるんじゃないかなって思うんだけど、お願いできないかな。いや、お願いします!」

私は頭を下げて頼み込んだ。

「うーん」

妖精さんは腕組みして考え込むようにした。

「おじさんってほら、妖精じゃん? だから、カステラを上手に焼くお手伝いは頑張ればできないこともないんだけど、それはきみにカステラ愛があればの話なんだなあ」

「愛、あります!」

「口先だけじゃあねえ。行動で愛を示してくれたら、協力してもいいよ」

「な、何をしたら協力してくれるの……?」

「おじさんのためにリニアモーターカーを呼んでくれたら、協力してア・ゲ・ル!」

「リニア……モーターカー……」


そういうわけで、私はリニアモーターカーを召喚することになった。

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