第4話 うるわしき騎士団

突然だけれども、刃臼天BOSS城の城下町に住むカステラ職人が拉致された。100人中99人が拉致された。犯人は不明。



残されたのは、職人歴半年の私、フラフィアちゃんだけであった……。

なぜ私だけ被害に遭わなかったの!?

きっと私があまりに可憐で清らかだから、誰か知らんけど拉致犯は気の毒に思って手を出さなかったのね、きっとそうだよね、ふぇぇ。


「師匠~。なんで拉致られちゃったの~。師匠はなんか強そうだし、その辺のゴロツキぐらいなら拳で勝てそうだし、さらわれたりしないと思っていたのに~」


ここは師匠の厨房。

私は師匠のかまどにすがりついて、おいおい泣いていた。


すると、どこからか煌びやかな音楽が聞こえてきて、ばん! とドアが開いた。


「ここに最後のカステラ職人がいるそうだな!」


見目麗しいお姉様、いや、男装の麗人? というか何だろう、わかんないけど、めちゃくちゃ姿勢がよくて背中をビシっと伸ばしたイケメンのような美人のような集団がどっと厨房に入ってきた。皆さん羽とかスパンコールとかのついたキラキラの衣装で、どことなく光り輝いていた。

お姉様集団の動きに合わせて、音楽がどしゃーん、どしゃーん、きらきらきら~と鳴る。


「キミがそのカステラ職人なのか?」

集団の中央にいた人は、エレガントに私を指さしたかと思うと、胸に手を当てて、私の前に跪いた。とびきり大きな羽を背中につけている。

「私たちは刃臼天BOSS城の騎士団、私は騎士団長の鳳凰ミレイと申します。カステラ職人よ、どうか私たちのためにカステラを!」


「「カステラを!」」

ほかの騎士団の皆さんも、ポーズをつけてコールする。


なんかよくわかんないけど、これはカステラを焼かないといけない、そういう空気だったので、私はカステラを焼いた。そして騎士団長の方に差し出した。


「ありがとう。これで戦える!」

そう言って、団長はどこからか現われたお姫様みたいな女性とダンスを踊り始めた。踊りながら、ときどき歌う。その歌詞によると、騎士団はカステラを食べないと元気が出ないので戦えないらしい。でも、今カステラをゲットできたので、これでようやく拉致されたカステラ職人を救出に行けるぜヤッター! ということらしい(要約)。



踊って歌った後、騎士団の皆さんはカステラを食べた。

そして意識を失って、ぱたりぱたりと倒れていった。



最終的に厨房で立っているのは私一人となった。

うーん、なんか悪いことしちゃったな。健康に悪いものは入れてないんだけどなあ。魚のすり身とチョコレートを無意識で入れちゃったんだけど、気絶するほど不味かったのかな?

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