第6話 妖精が倍増

私は全身を海水で清め、三日三晩の祈祷の末、リニア駅招致<ワイーロ>の儀を成功させ、リニアモーターカーを刃臼天BOSS城の上空に召喚した。さっすが私。


天空をたゆたうリニアモーターカーは、まるで龍のように神聖で神々しかった。


妖精さんは手を叩いて喜んだ。

「すっげえわ、俺、一度でいいから生でリニアを見てみたかったのよ~。うわ、すげえわ。まじすげえわ。最高じゃん」


さあ、これでカステラ作りのアドバイスをもらおう! と思っていたら、王様が厨房に怒鳴り込んできた。

「おいカステラ職人、おまえだろ、あのリニア召喚したの。勝手に城の上にリニア飛ばしてんじゃねーよ! あとワイーロとかやめろよ、シャレになんねえよ! うちはそういうことしねーから! というか令和の時代にそういうので駅を招致するとか無理だから」と言われたので、カチンときた。


「これはカステラ職人を救出するために大事なリニアモーターカーなのに、それを悪く言うだなんて許せません。カステラ職人たちを無事救出できた際には、今の発言を職人たちに伝えますからね! 王様はもう二度とカステラを食べられないでしょうね! あとワイーロは悪ふざけでしたスミマセンでした!」


王様はおのれの発言を反省し、黄色い全身タイツに着替えた。


それは王と呼ばれた男がカステラの妖精に転生した瞬間であった。



そういうわけで、カステラの妖精さんが2人になりました。どうでもいいものばかりが増えていくね、人生って。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る