第29話 夢

なりたかったものがたくさんあったのは

一体いくつの時だったろう


木箱の隅で丸まっていた私の夢が

重なり合って形になるころ

金槌で蓋をされ壊されたのであった


今やそれは無色透明になって

徳利の先から常にこぼれ落ちる酒の跡となって消えていくのであった


森に帰る途中

ばったり出くわしたピンクパールのネックレスをつけたヒグマが

私のスカートを引っ張ってもうちょっといたらと誘う

美味しいスートの煮込みを仕込んでいるからと


それで家がどこか失って

ようやくスートの煮込みを平らげたあと

ヒグマはにこりと笑って私のハートを取った

それでピンクの部分はパールにうつして

ハートマークは煮込みに入れた

またこうやって人からはハートを木々からはクラブを朝日からスペードを取っては煮込むんだろう


家のようなところに行きついて

やっとださてととかばんを取り出して

ヒグマに取られたハートといつのまにか無色透明になっていた夢を思うたび

一文字ひと言葉思うたび

木箱に閉じ込めた本当の夢が形を尖らせ

ようやくもうすぐ

あともう少し

私のぽっかり空いたハートのあったところに

飛び込もうとしている

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