第28話 幻想

あなたの姿さえ幻想だったなら

私の生きているこの世界は塵芥ほどのもの


あなたのひとひらでいいから生きし姿に

一目会いたい


この恋が見窄らしくも崩れ枯れ果てたものと

私さえ否定するだろうけど


もうこれは 過去の幻想話にしかなり得ない


神様が死んでいる人を生き返らせないように

私の死んだ恋心は 復活なんてしない


それこそ人魚もいないし天馬もいない


そんな普遍的で現実的な世界に生きている


私が求め狂うほどに殺してしまったあの人の

瞳の美しさに比べたら


なにもかもが褪せていた


私は 幻想に生きることだけは御免だ


うまく這い上がってそれでも

大事なこともわからなくなっても

一心不乱に自分にしか届かない言葉を綴っていても

孤独でも寂しくても


愛してく 愛してる 愛される


幻想にしかないそんな言葉の真意を

探すのはもうやめだ


一気にきっと自分を知る


そこから見違えるように道を誤りながら

しっかと歩いて いくのだろう

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