第27話 早朝

朝もはよから起き抜けに

チーズトートスト頬張って

どんぐりを炒めて食べられること知って

浮かれて小池にハマっちゃったりして

あの頃の早朝はいつもいやだった

イヤイヤ言いながら髪の毛を結んでもらい

イヤイヤ言いながらご飯と鯵の開きを食べ

イヤイヤ言いながら制服に着替えた

とても治りの早い飛び火にかかって

兄からもらったその傷が痒くて

靄がかかった霧の町を歩いた

青が一層浅くなるまで歩いた

光が照ったところで私は手を繋いでいた

みんながいるから私は大丈夫だと強くいた

そしてその通りに従って

他人がいる中の自分に自信を持つ子供だった

人は人と関わりを持って初めて強くも弱くもなれる

人はだから一人では生きていけないのだ

あとは体をたくさん動かしておくこと

逆立ちも側転も修行の一つだ

全ては強くあるための修行だった

それから忘れちゃいけないのが本を読むことだ

言葉は刀である、強い者は良い刀を持っているものだ

傷をつけ、人を殺めることもできる刀は

傷を癒やし、人を守ることもできる

重要なのは使い方である

うまく人を大事にすることのできる人間が

強い人間なのだ


朝も早よからそんなこと考えて

居ても立っても居られない

逆立ちばかりしているような子供だった

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