第26話 深夜

いつも考えているのは深夜だ

深い夜になると人間は変なことを考え始める

きっとすごく昔は夜行性だったのだろう

布団に入って数秒間は寝ようと努力するが

深夜のどうしても考え事が巡る日は

私は無抵抗で拘束されるように巡らせている

大した事は考えられないのだが

タバコを吸い込んでまた寝ようとしても

やっぱり眠れないのだ

睡眠導入薬をよっつ程飲んでも眠れない

そして夜な夜なずっと変なことばかり考えている

あの時はどういう風景だったとか

私は一体何人いるんだろうとか

このまま人生は終わっていくんだろうかとか

海にひたすら潜ってみたいとか

明日は何をすれば明るい未来になるだろうとか

あの本の中に飛び込めたらとか

次はどうしたら私がハッピーになれるかとか

大抵は自分のことばかり考えているのだ

深夜の速度はやたら速いようで遅い

海底の光が差さないところで浮いているプランクトンみたいな心地になったりして

ずっと言葉が浮かんでは消えていき

答えのない無駄なことばかり考えている

結局はどうやってでも眠った方が毎日の健康のためだったりするのだが

今夜もきっと帰れない過去と自分の鏡にうつった不細工な今とを行き来して

最後のない涙を流し途方もない思い出し笑いをし気色の悪い自分にだけ暗号を送るのだ


今は もう ずっと 最初から 終わりだよ

あたし しか いない から大丈夫


誰にもわからない暗号を ずっと 永遠に


死ぬその時まで ずっと 抱えて それで いいんだ しんどくても それが いいんだ

だからまだ生きて 優しくも強くも なれなかったけど 明るい時間が まだ あるから生きて 生き続けて どうせだから 楽しくゆっくり確実に じっくり 続けて

終わるその日まで ずっと 私を 信じて

私は私で いい から 生きて うまくはやれないけれど 大事には もう きっと できないけれど わたしにはわたしが 戻っているから 大丈夫 まだ 生きて いい

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