第34話

呆然としている間に覆面男たちは部屋を出て行き、あたしと美世の手錠が外れた。



「今日もゲームをするの?」



美世は震えた声でそう言った。



あたしはスカートのポケットにあるスマホを握りしめた。



絶対にとられてはいけない。



そう思い、警戒心を強める。



その時だった、昨日と同じように壁が左右に割れ、大きなモニターが姿を現した。



あたしはゴクリと唾を飲みこんでモニターを見つめる。



画面上がパッと光り、覆面男が姿を現した。



「今日も同じゲームをしてもらうつもりだったけど、1人死んでしまいました。そこで、2人にはその死体を使って遊んでもらおうと思います」



覆面男の言葉にあたしは音の死体を見おろした。



これを使って遊ぶってどういうこと……?



「やり方は簡単です。その死体を2人で拷問してください」



拷問!?



驚いて目を見開いた。



この男はなにを言っているんだろう。



「死んでいるんだから抵抗もしない、悲鳴も上げない、とっても簡単なことです」



「はぁ!? 簡単なワケないじゃん!」



黙って聞いていた美世がそう叫んだ。



「そうですか? 2人ならできるんじゃないですか?」



男がそう言った次の瞬間、モニター画面が切り替わった。



それは見慣れた中学校の校舎だった。



「また中学時代のこと?」



美世がうんざりした声を出す。



やっぱり、千恵美に関係あるからなんだろう。



画面は校舎裏へと進んで行く。



「この動画は世界中に配信されている」



男の声が入り込んできた。



「ちょっと……」



思わず身を浮かす。



この後どんなことが映し出されるのか、嫌な予感がした。



校舎裏に到着したカメラは中学時代のあたしと音、美世の3人を捕らえた。



3人が何かを取り囲むようにして立っている。



中央にいたのは顔にモザイクがかけられた少女だった。



顔が見えなくてもわかる。



千恵美だ。



「なんでこんなこと……」



美世が焦った様子でそう言った。



画面上のあたしたちは千恵美に殴る蹴るの暴行を加え始めた。



大きな笑い声も聞こえて来る。



「あたしたちをここに連れて来たのは千恵美の関係者なんだよ」



あたしは震える声でそう言った。



これは千恵美の復讐劇……!



画面上の千恵美がその場にうずくまった。



抵抗する様子もなく、必死に我慢している。



そんな千恵美をあたしたちは攻撃し続けた。



「痛い! やめて!」



そんな千恵美の悲鳴が、あの頃はおかしくてたまらなかったのだ。



「あたしは違うからね」



咄嗟にそう言っていた。



美世が驚いた顔でこちらを向く。



「あたしは、美世に言われてやってただけだから!」



モニターへ向けてそう叫んだ。



そうだよ。



あたしは別にイジメたくてイジメてたワケじゃない。



美世が女王様で、音が従った方がいいと言ったからだ。



「なに言ってんの!?」



「だってそうじゃん! もとはと言えば美世が全部悪いんだよ!」



「はぁ!? あんただって楽しんでたじゃん!」



「美世に逆らったらあたしがイジメのターゲットになると思ったからだよ!」



「今更言い訳しないでよ!!」



あたしたち2人の叫び声が響く中、モニター内には覆面男の姿が写っていた。



「あなたたちは同罪です。見てわかりませんか?」



その言葉にあたしは覆面男を睨み付けた。



あたしと美世が同罪?



そんなハズない!!

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