第3話 闘争する人類

パン対策部隊のメンバーリストには、素人と思わしき人は加わっていなかった。


「そりゃぁ、そうだよ。餅は餅屋って言うし。

 お願いするならそれなりに腕の立つ人にするでしょう?」


しれっと言ってのけるトモ。

「私だってそのくらい考えてるもーん」と唇を尖らせて主張していた。

この鳥の巣頭が。


トモは、なにやら最終兵器を開発しているらしい。

まぁ本人にも一応やる気はあるようだ。


何はともあれ、そうして戦いの日が訪れた。


「天候は?」

「気象庁からの通達によると、晴れの見込みだそうです」

「奴らが縄張りにしている○○地区の詳細は把握できたか?」

「掌握済み!プロジェクターで映すよ!」


明朝5時。

わたしたちはリーダーに連れられ会議室へと足を踏み入れた。


「ではこれより、作戦会議を行う」


リーダーの重みのある声が、それほど広くない会議室に響き渡る。

わたしは愛用のサコーM75のホルダーをぎゅっと握り締めた。

いよいよ本番だ。


一番の元凶であるトモが責任をもって開発したのは、最終兵器──納豆菌砲弾だ。

パンは、というか大体の発酵食品は納豆菌。というか枯草菌に滅法弱い。

トモはそのことを思い出し、これを最終兵器として用いることを選択したのだという。

いざや開戦。戦いの火蓋切って落とされた。

わたしたちはパンの闊歩する街中へ颯爽と繰り出し、素早く攻撃を開始した。


「目標確認!撃てー!!」


鬨の声を上げて、納豆菌砲弾を敵のど真ん中に叩き込む。

最終兵器と銘打ってはいるが、こういうものは使える時に使うものだ。


いきなり砲撃として浴びせられたパンたちは、

大砲による攻撃と動揺で、てんやわんやになっていた。

しかし、慌てふためきながらも攻撃に適した密集陣形を取り、こちらへ突進してきた。


「Go!Go!Go!」」


逃げ惑うパンたちへ向けて、一斉にライフルで射撃を行う。

このライフル銃の弾丸には先に放った大砲と同じく、

彼らにとって弱点である納豆菌が仕込まれているのだ。


「pannnn!!pannnnn!!」


弱点である枯草菌を続けてぶち込まれたパンたちは、悲鳴を上げて逃げ惑う。

パンたちの陣形はみるみる内に崩壊していく。ここまでくればもう勝利は目前であった。

わたし達は陣形を組み、防御を固めつつ、隙を狙っては納豆菌弾丸で狙撃。


やがて陽とともにパンたちは落ちた。

新鮮なパンvs人類の戦いは、人類側の勝利となった。


え?倒れ伏したパンたちはどうなったかって?

討伐隊が余すところなく美味しく頂きました。

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