クリスマス特別短編

「タイキー、クリスマスだけど、何かする?」

「うーん……ゲームのクリスマスイベント周回くらいじゃないか?」

「味気なくないー?」

「毎年そんなもんだから……でも、去年マヒロもクリスマススキン獲得のために、めっちゃ周回してなかったっけ」

「してたね……私も人のこと言えないや」

「まあ、ゲーマーなんてそんなもんだよな」


 そう、本当にそんなものなのだ。

 ハロウィン、クリスマス、年末年始、リア充たちがワイワイ騒いでいるイベントの時、大体ゲーマーは家で周回している。

 いやー、季節イベントのキャラは大体可愛いし、限定のものはゲットしとかないと後悔するし、そもそも人と遊ぶ予定が入らないし……しょうがない。しょうがないのだ。ぐすん。


「うん……よし、頑張るぞ」

「? どうしたんだ?」

「ねぇっ、ちょっとカップルらしいことしてみようよ」

「い、いいいやいやだ。いや、嫌じゃないけど」


 噛みすぎ。てか『いや』って言い過ぎ。


「つまり、嫌じゃないってことだよね?」

「まあーそういう可能性も、あるようなないような?」

「うん! 家デートしよう!」


 そしてマヒロは強引すぎ。

 ……嫌じゃないから止めれない、自分の意志は弱すぎ。


────


「とりあえず、パーティーの準備しなきゃだね」

「家デートってそんな感じなのか?」

「分かんない!!」

「おっ、おう」

「だって初めてだし……」

「あーそっか。まぁうん、クリスマスパーティーと家デートを兼ねたということで、パーティーはしよう」

「うん! じゃあ私は、冷蔵庫にあるもので、なるべく豪華になるよう頑張ってみるね」

「じゃあ俺は周回を……」


 マヒロにジーと見られる。

 無言の圧力に耐えきれない!


「することはなくて、部屋の飾り付けをします」

「うん、よろしく! 周回は周回で後で一緒にやろうね」


────


「あー、美味しかった。マヒロ、本当に料理うまいよな」

「お褒めに預かり光栄です。まあ元から一人暮らしだったからね」

「そかそか、俺も練習しないとなー」

「…………」

「…………」


 く、空気が死んだ。

 いや、何となく2人隣で座ってご飯食べてるだけでも幸せなんだけどさ。

 とにかく、何か会話をしないと。

 ……しかし話題が思いつかない!

 そうだ、今日はクリスマス。クリスマスといえばプレゼントのことだ。


「えーっと、何か欲しいクリスマスプレゼントとかある?」

「何でもいいの?」

「な、何でも……いや、そうだな。なんでもいいぞ」

「じゃあ、タイキの卒業アルバム見たい。それがプレゼントがいい」

「え? あーうん。面白いものでもないけどな」


 特に考えることもなく許可する。


「じゃあ、ちょっと待ってて、取ってくるから……」


────


「あったぞ」

「見せて見せて!」


 取ってきた卒業アルバムを開こうとして、そこでやっと間に何か挟まっていることに気づいた。

 しかし、体を止めるほどの違和感にはならず、そのまま開くと……


「……………」

「……へ、へー? こういうのが好きなんだ」

「いやっあのぉっ……」


 楽しいクリスマスパーティーからは一転、人生で1番気まずい時間になった。

 過去の俺ェ! なんで卒業アルバムの間なんかに同人誌・・・入れてるんだよォ!

 確かにいいバインダー使ってるから綺麗にまとまるけど、コレジャナイでしょう。

 最近は忙しかったし隣の部屋にマヒロがいるしでご無沙汰だったから、同人誌の存在完全に忘れてた……


「…………ちょっと行ってくるー!!」

「ど、どこにー!?」


 ……わかっている。

 マヒロは実家に帰ったのだ。

 ドラマなどで熟年カップルの離婚を見ていると、大体まず妻は実家に帰る。今回もそれだろう。

 って、それなら俺たちがカップルということになってしまうやないか〜い。

 なんて、空虚で意味のない1人ツッコミをして気を紛らわせようとする。

 だけど、無理。あー……後悔がすぎる……


「オワタ\(^o^)/」


────


 何分ソファで項垂れていただろうか。

 そろそろ、聖なる夜を、生無くなる夜に変えてやろっかなぁwなんて思考にまで巡り出したところで、ドアが開いた。


「…………あの、こんな感じ?」

「…………」

「私も結構このキャラ好きだし、昔ノリでコスプレしようと買ったけど……布面積少なすぎない?」

「…………ッッ!!」


 やばい、可愛い。

 言葉が出ないとはまさにこのことだろう。

 頭の中はいろんな言葉が駆け巡っているのに、どれもそれを表すには足りなくて、言葉が一つに定まらない。


「は、恥ずかしいから着替えてくるね……」

「っは! あ、うん」


 やっと思考が帰ってきた。

 いや、良さが極まってた。

 恥ずかしさゆえか紅潮した頬も、少し着飾られた、光を美しく反射して流れる黒髪も。

 そして、マヒロが最後に笑った顔が、1番可愛かった。


「服を戻してまいりました……どうだった?」

「いや、本当に良かった。定期的にやって欲しいけど、それだと俺が定期的に死ぬことになるから考えどころだな」

「何で死ぬの!?」

「いや、色々あって」

「そうなんだ……あ! クリスマスプレゼント忘れてた……ど、どうしよう、今から買いに行っても間に合う、かなぁ?」

「ううん、もう、もらったよ」

「渡した覚えないんだけど……私、記憶喪失になってる?」

「いや、そうじゃなくて……でもちゃんともらったから」


 君の笑顔が1番嬉しかったよ……なんて、くさすぎて言えないから。


───────────────────────

 後書き


 超絶お久しぶりです!

 燃え尽き症候群(燃え尽けるほど書いていないけど)でしばらく書けなくなっておりました。

 そして早速本題、この作品についてですが……書きたい! 超続き書きたい!

 だって、マヒロの過去も、マヒロの家のことや妹のことも、書けてないことが多すぎるからです。

 ただ、色々重なってまだしばらく書けなさそうです。

 いつか続きは書くので(本当に書きたいこと多すぎる!)大変わがままですが、フォローを外さないでくれたらもう、これ以上のことはありません。


 そして、リハビリがてら別の連載を始めてみました。

 読んでくれるとほんっとうに嬉しいです。クリスマスに1人で踊りながら喜びます。


 タイトル


 先輩彼女にフラれた俺はリア充なんてさっさとやめて、後輩女子とオタ活したいと思います


 リンク


https://kakuyomu.jp/works/16816700429343320050


 あらすじ


 彼女にフラれた。

友達は離れていき、自信もどんどんなくなっていった。

「先輩、彼女にフラれたんですか?」

「お前……何でちょっと嬉しそうなんだよ」

「いや、まあ、えへへ」

しかし、そんな俺を見ても後輩だけは変わらず接してくれていた。

お互い憎み合うような会話はするけど、それはただの照れ隠しで……

これは、考えすぎて素直になれない2人が織りなす、甘々部活ラブコメディ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

FPSの相棒を同居に誘ったら美少女が来た カナラ @nakatakanahei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ