第11話 ブッキングセンター

 週間ラブコメ10位感謝の2話投稿です!

 1分後にもう1話投稿されますので、是非!

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「さて、女性の御二方は行ってしまわれましたが、僕たちはどうする?」

「どうするかなぁ」


 放課後、相方においていかれた同士で話をする。

 といっても、実は結構よそよそしい感じだ。

 さっき話したとはいえ、出会って間もない相手だとどうしてもこうなってしまう。

 なんとかして、さらに仲を深めたいのだが、一歩踏み出すのを躊躇ってしまう。

 そんな時、雪男が渡りに船な提案をしてくれた。


「じゃあさ、僕たちも遊びに行かない?」

「いいね! どこ行く?」

「うーん、姉ちゃんと被らないところがいいかな……」

「じゃか、女子力勝負をするって言ってたから、女子力から真反対のところに行けばいいんじゃない?」

「うーん……あぁ、バッティングセンターとかどう?」


 たしかに、バッティングセンターで競える女子力はないだろうから、理にはかなっているな。

 運動神経が壊滅的な俺はただひたすら空振りを続けるという無様をさらに続ける気がするが、あまり気にしないでおこう。

 というか、バッティングセンターって仲深まるものなのか?

 まあいいや、イケメンが言うなら間違い無いだろう。


「昨日やったクソゲーで主人公の親友と最初に行ってたから、パッと思いついたんだよね。案内するよ」


 やっぱ大丈夫じゃなさそう……?



 パッティングセンターに着くと、見知った顔があった。

 冬乃とマヒロだ。

 な、なんで……?

 女子力勝負じゃなかったっけ?


「ね、姉ちゃん何でここにいるの?」

「女子力勝負よ!」


 パッティングセンターでどうやって女子力競うんだよ。

 ホームラン数を競っても多分男気しか測れないと思うんだけど。


「ホームラン数を競うの! 多い方が女子力が高いのよ!」

「な、なるほどね?」

「私は止めようって言ったんだけどね?」

「とりあえず、勝負よ!」


 何やら始まるらしい。

 理解は出来なかったけど地味に楽しみだ。

 というか、全然話に入れなかったな……と、自分の対人会話スキルの低さを自覚し直していると、雪男が近づいてくる。


「なんか始めるみたいだし、僕たちは見てよっか」

「それもそうだな」


 とりあえず、ベンチで観戦することにした。



「なにこれっ、思ってたより当たらない!」

「そうー? わたしは結構当たるわよー!」


 お互い、同じような不恰好な振り方をしているのに、結果は全然違う。

 運動神経なのだろう、1発もバットに当たらないマヒロと、小気味のいい音を鳴らしてバックネットまでかっ飛ばす冬乃。

 女子力(笑)には差があるみたいだ。

  20球一回分うち終わると、2人はバッターボックスから出てきた。


「どう! わたしはほぼ全部打てたわ!」

「ああーもう無理ぃ、助っ人使っていい?」

「別にいいわよ! でも、私の勝ちは揺るがないわ!」

「じゃ、じゃあ、タイキに助っ人をお願いする!」


 なるほど、俺に助っ人を……


「いやいや! 俺、○ーさんのホームランダービーくらいしかやったことないぞ!?」

「ギリギリ経験者って言えなくも、ない?」

「言えないだろ!」

「……ず、ずるい!」

「え?」

「ずるい! わたしも教えて欲しい!」

「いや……多分、恥ずかしながら冬乃の10分の1も打てないぞ」

「じゃあ、えーと……あ、心構えを教えてもらうわ!」

「そんなのもっと知らないって!」

「はいはい、じゃあ交代制にしたら?」


 注目を集めるためだろうか、雪男がパンパンと手を叩きながら入ってきた。

 良かった、なんとか場をまとめてくれる人が現れた。


「雪男は黙ってて!」

「はい、ごめんなさい」


 弱い。場をまとめてくれる人が弱いよ。

 もうちょっと頑張ってくれ、押しに負けそうな俺が言えたことじゃないけどさ!


「じゃあ、助っ人タイキを賭けて勝負しよう」

「先にホームランに当てたほうが勝ちね!」

「望むところだよ!」


 そんなことを考えている間に2人の間で話がまとまっていたみたいだ。

 ただ、それは本末転倒じゃないですかね……?



「楽しそうだね」

「そうだな」


 男2人で、女子がバットを振る姿を眺める謎構図の再来だ。

 こう、バッティングセンターといえば男の方がボールをかっ飛ばして、いいところを見せるのが王道テンプレじゃないだろうか。


「当たってっきたっ!」

「負けないわ!」


 マヒロもFPSで鍛えた反射神経のおかげか当たってきているし、冬乃は言わずもがな。

 まあ、マヒロはパワーがなくホームランのところまで届いていないし、冬乃は力いっぱい振り回すせいで明後日の方向にボールが飛んでいっているから、ホームランに当たることはないと思うけど。


「どっちが勝つと思う?」

「僕はどっちも勝たないと思う」

「奇遇だな、俺もだよ」

「まぁそうだよね。てか、仮にどっちかが勝ったらどうするの?」

「アドバイスなんてできないからなぁ……どうしよう」


 対極的な2人が連コしているのを雪男と雑談しながら眺めていると、時間はすぐにすぎていった。



「はあ、はぁ、はぁ……」

「体力がないわね!」

「だって……もう100球以上打ってるし……」

「むう、わたしはまだまだいけるのに、仕方ないわね! 弱ったマヒロに勝ってもうれしくないから、今日は終わりにしてあげる!」

「あ、ありがと……結構楽しかったよ」

「わ、わたしも楽しかった……」

「「じゃあ」」


 2人は顔を見合わせて、


「「また今度、勝負(よ)!!」」


 そんなわけで、また今度も遊びに行くことになった。

 仲が良くなったようで何よりです。


「次はタイキに教えてもらう!」

「わたしこそ!」


 ……無様を晒さないように、ちょっと野球の勉強をしておくことにしよう。

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