第19話
「あ、呼ばれた。じゃあ行ってくるね」
「あぁ」
とうとう葵の番が回ってきたようだ。
さて、どうしたものか。
さっき葵に、話相手居ないのか?なんて言ったものの、状況は我も同じ、このままでは我も独りぼっち、通称ボッチになってしまう。
仕方ない、河井の所にでも行ってみるか。
一応二人目の友達候補だし、同じクラスだからすでに検査は終わっている筈だ。
えっと、河井は……。
居た。
確か、河井の夢はSランク探索者だったな……。
なら、河井が楽しみにしていた検査についてでも聞いてみようか。
「河井、検査どうだった?」
「……ん、お、おぉ!大星!えっと……今何て言ったんだ?」
我が検査について聞くと、河井はボーっとしていたのか我の言葉を聞き逃したようだ。
どうしたのだろう。
少し様子がおかしい。
顔色が悪い上にどこか上の空だ。
思えば、コイツは普段――と言っても二日程度の付き合いだが――どこにいてもすぐに居場所が分かる位に騒がしいのだが、今、おそらく検査が終わってからはそれが噓の様に静かだった。
「なんかあったのか?」
「……何でもねぇよ」
「何でもないは無いだろ」
いや、絶対何かあっただろ。
今の河井は、我が誤って魔王城を破壊してしまった後、城の修繕費の請求書を見た我のような顔をしている。
もしかして……。
「適性が無かったのか?」
「いや、あった」
「じゃぁ何でそんなこの世の終わりみたいな顔してるんだ?」
「それは……」
「良いから言ってみろよ。人に話せば楽になるかもしれないぞ?」
友達が落ち込んでいるときは相談に乗るべし。
友人関係を構築するための鉄則だ……と本で読んだ。
まぁ、河井はまだ友達候補だが。
「それもそうだな……」
悩みを話す決心をしたのか、河井は続ける。
「俺さ……ユニークスキル持ちだったんだ……」
!!!
ユニークスキル!?
ユニークスキルと言えば全く同じスキルは二つと無いと言われるスキルの分類だ。
聞いたことがある。探索者適性検査を受けると、内に眠っていた力が覚醒する事があると。
河井のステータスの『???』を見た時から河井がそうなのではないかと思っていたが……。
現時点で持っているという事は生まれつきか……。
でもだとしたらおかしい。
ユニークスキルを持っているというのは凄い才能だ。
落ち込む理由にはならない筈だ。
「凄い才能じゃないか」
「そうだな……俺もユニークスキルを持ってるって検査の人に言われた時はすげぇ驚いたけど、嬉しかったんだ。なんたってユニークスキルだからな」
でも、と河井は続ける。
「でも、俺のユニークスキルは違う。これはこの『エナジードレイン』は才能なんかじゃない。周りを不幸にする、呪いだ」
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名前 河井龍二
職業 なし
称号 絶対魔王ぶっ殺す世界の住人
加護 なし
基礎能力値
HP 22/22?
MP 9/9?
物攻 4?
物防 6?
魔攻 8?
魔防 7?
敏捷 9?
幸運 100
スキル
地球人Lv1000(対魔王攻撃力1000倍、魔王攻撃無効、魔王防御無視、対魔王超デバフ、対魔王再生超鈍化etc)、???
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『エナジードレイン』?
もしや、あの『???』の名前か。
続けて、『エナジードレイン』のスキルの詳細情報を見る。
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〇エナジードレイン
周囲の生物の生命力を吸い取り、自分の幸運以外の能力値を強化する。
吸収、強化の度合いはスキルLvと相手の強さに依存する。
熟練度が上がれば、オンオフの切り替えが可能になる。
Lv1で半径一メートル、吸収速度は60秒に1ずつ。
直接触れれば効果は上がる。
現在発動中。
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……。
ヤベェこのスキル。
たったの1ダメージでも固定ダメージを与えつつ、自己を強化できるスキル。
Lv1なら今後まだまだ効果も上昇するだろう。
凄い才能だ。
だが、今重要なのはそこではない。
河井はこのスキルを制御できていない。
常時発動中の状態だ。
我にとって60秒に1ダメージなど全くもって問題にならないが、我以外の人間たちにとっては違う。
このままでは、常人なら半日河井と過ごすだけで瀕死になってしまう。
「俺さ、一緒にいるだけで周りの人を傷つけちゃうらしいんだ。だから、さっき検査の人に能力の制御ができるまで探索者協会の施設に入らないかって言われた」
「そうか」
まぁ、妥当な判断だな。
しかし、そこまで悲観する事でも無いだろう。
探索者協会が付きっ切りで面倒を見てくれるなら河井自身の夢にも繋がる。
よし、ここは激励の言葉を……
「このままじゃ、母ちゃんとも、父ちゃんとも、みんなとも離れ離れで……俺は、一人に……ッ」
!
河井の顔を見る。
河井の顔は今にも泣きそうだった。
我は馬鹿か!
前世と同じに考えるな!河井は人間の子供だぞ!
親元を離れ、孤独になる事が良い事の訳が無いではないか!
……よし、決めた。
「河井」
「……なんだ?大星」
河井が零れかけた涙を拭いて聞き返す。
「その一件、俺が何とかしてやる」
「は?」
我がそう言うと、河井は普段以上の間抜け面になった。
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