第11話むかえに行くから…

耳に届く騒音ノイズががなりたてようと、彼女の声や呼吸——足音が聞こえれば、鮮明にわかる。


だって……


あの日に交わした約束は、もう……果たせない。

それだけが、私の唯一の心のこり。


ねぇ、茉侑……貴方にとって、私って何だったの?



***

「——ハァハァッ、待っ……てってぇ、ハァハァ……」

荒く乱れた呼吸のままに引き留めてきた茉侑まゆ

羽織っていたカーディガンの袖口を掴み、逃げ出さないように引き留める彼女の腕が震えていた。

「……っ」

「はぁはぁっ、もしかしてさ……、まに受けてる?」

「だって、あのっとき……」

彼女の口から発せられた拒絶の言葉と光景がよみがえり、言葉が詰まる。

「……柚愛ゆあが唐突にあんなこと、告白して……頭んなかが真っ白になって、それで……本心じゃないからっ!本心じゃないよっ!あの言葉……本心なんかじゃないからっ!ただ、想像できなくて……あんなこと、言っちゃったの……ごめん、柚愛。傷付けて、ごめんね柚愛ぁ……」

泣きながら胸中に押し込めた想いを打ち明け、謝る彼女に思わず涙が溢れた。

「うぅっ……わたぁっ、たぁしこそ……ごめんね、困らせるようなこと、言ってぇ……」

大切で愛してる彼女を傷付け、塞ぎ込んでいた私だった。そんな私に対し謝る彼女をみて、弱さを吐露せずにはいられなかった。

何故にもこれほどまでに彼女が優しすぎるのだろうか?

私如きが、彼女の隣に——傍に、居ても良いのだろうか。


「——良いんだよ、柚愛。柚愛が謝ることなんてないから。柚愛は悪くないんだよ、自分を責めないで。悪いのは、私だけだから……柚愛は今のままで、ありのままで良いから。仲直り、出来たよね……柚愛?」

「……なに、しいの……茉侑は?……んでよぉ、茉侑ぅぅ……たしが、悪いのにぃ……」


……ルいよ、茉侑。本当に……ズルいよ、茉侑は。

こんな私なんか……私みたいなクズを背負わなくて良いんだよぅぅ……茉侑……

私は、茉侑の優しさにつけこむ害虫だと思い知らされ、階段の踊り場に泣き崩れた。

ひとめも気にせず、泣いた私だった。



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