第30話 一人じゃ生きられない

 仕事終わりの帰り道、もうすっかり夜だ。街は人で溢れかえっている。カップルだったり、サラリーマンだったり…色々な人で溢れている。その渦の中に俺は1人取り残されているようだった。


 …俺って、幸牙なしじゃ生きていけないのかな。一人じゃ…生きていけないのかな。幸牙が居ないと…何も出来なくって、何をするのにも無気力になる。…誰かを好きになることって、こんなに辛いことなのかな…。


 別に誰かを頼ること自体は悪いことではないと思うんだ。でも、誰か一人に固執したり、依存するのは駄目なのかな…って。


「うぅ…」


 俺は路地裏に入ったあと、その場に座り込んでしまった。勝手に片思いして、そのせいで勝手に自分が苦しんで、相手の気持ちも考えないで…。もう、自分って何がしたいんだろ…。


「ははっ…」


 何故か笑いが込み上げてきた。それと同時に頬を何かが涙が伝う。あれ、おかしいな…。笑ってるはずなのに、涙が…。


「…お、おい」


 俺って…情けないな。ホント、相手に見えない愛を勝手にぶつけててさ、でもそれは相手に届く訳なくって…。


「え、永太…?」


 もういっそ…俺なんて…消えてしまいたい…。


「永太!」


「わぁっ!」


 突然、俺の名前を呼ばれた。顔を見上げてみれば、そこにはよく見知ったあの顔が。


「こう、が…」


「どうしたんだよ、こんな所で…」


 幸牙が屈んで、俺と目線を合わせてくる。とても心配した顔、本気で心配しているようだ。


 あぁ、もう。何で、何でよ…。傍から見ればただの同期なだけなのに、ただ俺が一方的に想いを寄せてるだけなのに、それなのに…何でそこまで俺の心配をするんだよ。意味が…分かんないよ…。


「こうがぁ…!」


 俺は泣きじゃくったまま、幸牙に抱きついた。もう、何も分からなくなって、ただ、体の動くままにした。


「……」


 幸牙は黙って、優しく俺のことを抱き返してくれた。優しく背中も摩ってくれた。摩っている手が暖かくて、なんだか余計涙が出てくる。


「…いっぱい、泣きな」


「ぐすっ…うぅ…」


 あぁ、やっぱり…俺は幸牙が居ないと…。




 …生きて、いけないんだな。

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