第4話

「はははははははっ! 信じられねぇって顔してるなぁ! 何かの間違いじゃないかって思ってるよなぁ! 違うんだなぁ、それが! それは紛れもなく瑠人るとだ! お前に稽古をつけてくれた瑠人るとだぜっ!」

 頭の中が真っ白になって、身体中を嫌な汗が伝う。

「嘘だ………嘘だ嘘だ! 嘘だっ!」

「嘘じゃねえさ。約四年間、毎日のように見てた人間の顔ぐらい分かるだろ、どれだけ顔が滅茶苦茶になっててもなぁ!」

 ぷつん、と、何かが切れる音がした。

 自分の心が、壊れていくのを感じる。

 あの時壊れたと思っていた人の心は、欠片ほどかもしれないけど、俺に残っていたんだと思った。

 大事な人を、同じ人間の手で、殺させてしまった。

 仇を討とうとしたのに、また、同じ過ちを繰り返してしまった。

 俺は、何一つ、守ることができなかった。

 もう、どうにでもなれ。

「おら、どうした、黙り込みやがって。怖じ気づいたか!」

「………黙れ」

 気付くと走り出していた。

 ただ目の前の人間を殺すことしか、頭にはなかった。

 真正面から刀を振った。

 その斬撃は、速く、重かった。

 一太刀で海冥かいめいの刀を凪払い、切っ先をつき出す。

「残念だったな、お前が大好きな戦いを楽しめなくて」

「………戦いの中で死ね」

 海冥かいめいが全てを言い終わる前に、あざみは刀を振るった。

 ことっ、と首が落ちる音がした。

 ………なぜだろう。

 仇を取ったはずなのに、何も感じないのは。

 自分の胸に大きな穴が空いてしまった。

 俺は、なんのために強くなったのだろう。

 そんなことを思うが、すぐにどうでもよくなった。

 もう、生きている意味がない。

 きっとこれからも、この胸の穴は埋まらないだろう。

 大切な人を死なせてしまったことを悔やみながら生きることは、あまりにも辛すぎる。

 ごめんな、填道てんと

 ごめんなさい、瑠人ると

 俺は、二人の命を背負って生きていけない。

 俺には、無理だ。

 だから、死んでもいいよね。

 もう、疲れたんだ。

 糞みたいな人生だったけど、二人と過ごしていた時間は、かけがえのないものだったよ。


   

後書き

まずは、最後まで読んでくださってありがとうございます!

もう少し自分に文章力があるなら、海冥の狂気っぷりや莇の心情をうまく表現できたのですが、稚拙な文章でも最後まで付き合って下さり、本当にありがとうございます!!

感想を書いていただけると嬉しいです。

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戯曲 @anv

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