第19話 自分の生き方って、何?

 もしかしてあなた霧崎家の人間ですか?!」

「は?」

 第19話

「えっ違いますか?!」

「知らねぇよそんなもん」

 そう言うと彼女は安心したのかその場にへなへなと座り込んだ。

「逃げれた〜」

「何から逃げてたんだ?」

 ヒルコはそう言うと、彼女はにっこり笑って誤魔化した。

 ヒルコはダガーナイフのみを出し、素早く彼女の喉元に突きつけた。

「お前……美味しそうだな」

 一瞬の出来事に彼女は困惑した。

「……私なんか食っても……美味しくないですよ……二つの意味て……」

「二つ?まぁいい」

 ヒルコはダガーナイフを喉元から外し、彼女を離した。

「お前は保存食として取っといてやる」

「人に対して保存食とか言う人初めて見たよ」

 彼女は茶髪のボサボサとしたロングでメガネをかけており、多少ヒルコよりかは年上という感じだった。

「君、名前何?」

 彼女はヒルコに聞いた。

「……キラー」

「偽名だろ」

 彼女はすぐに言った。

「本名嫌いなんだよ」

「えー言おうよ〜私 霧崎早苗きりさき さなえ18歳」

「………ヒルコ・マシュルス」

 早苗は彼の名前を聞くと犬を撫でるようになでなでし始めた。

「マシュルスとか可愛いじゃん」

 ヒルコは嫌々ながらも言った。

「俺は……竜食いの一族なんだぞ?良いのか?」

「……え?」

「……知らねぇのかよ、そもそもこの世界に竜人は居ないのか」

「……竜人?もしかしてそう言う設定の厨二病?」

「意味は知らんが侮辱したな?」

 ヒルコはダガーナイフを突きつける。

「ああ、ごめんごめん冗談だってば〜」

 その時、黒服の男が数人現れた。

「早苗様!」

「何をしておられるのですか?!」

 早苗は何かを察し、ヒルコを抱えてすぐに逃げ出した。

 しかし、山道を進むには辛いサンダルの為、どことなく足取りが弱々しい。

 そして足を滑らせ、山の斜面をゴロゴロと落ちていってしまう。

 2人は泥まみれになり、ヒルコはすぐに立ち上がった。

「おい、起きろ」

 しかし、早苗は足をくじいてしまったのか上手く立てなかった。

「ごめん……君だけでも」

「あ?何言ってんだお前は保存食だ。ほおっておいてられるか」

 そう言うとヒルコは早苗を引きずりながら山を出た。

 車が通ってきて少し驚いたが、すぐに廃墟と思われる場所に入った。

「おめぇあんなとこで足くじくなよ」

「ごめんよぉ……」

 キラーは廃墟にあった冷蔵庫から氷をとりだし、早苗の足を冷やす。

「ありがと……」

「保存食が腐ったら困る」

 ヒルコはそう言うと再び冷蔵庫の物を探す。

「……ねぇ」

 早苗がヒルコに聞く。

「なんだよ保存食」

「私さ、漫画家になりたいんだ」

「それがどうした」

「でも家が代々医者の家でね、今親が医者になれなれってうるさくて、それで今家出してて……君なんかを巻き込んでごめんね?」

 早苗は少し悲しげに言った。

「君だけでも逃げていいよ。私がまた変な奴と関わってるって言われて、どうせ二度と会えなくなるから」

「………お前馬鹿か?」

 ヒルコはすぐ様そう言った。

「お前の生き方をなんで他人が決めんだよ。お前はあいつのペットか?お前はお前らしく俺に食われろ」

「そっか……」

 早苗は今までを振り返ってきた。

 親の為と思い勉強をしてきたが、自分にとってその道は絶望的だった。

 その時、友人が描いていた漫画がとても面白かった。

 そして、自分も人を喜ばせる様な漫画を描きたいと思っていた。

 でも、親は断固して拒否をして、私からそれを奪った。

 それか嫌だった。

 私はこうして家出した。

 初めての反抗だ。

 よく知ってる黒服の男らが追いかけてきて、ビックリしたけど。

 私はただ逃げてただけなのかもしれない。

 逃げてる私を



 


 早苗は立ち上がり。外へ出ようとした。

「……ありがと、私、両親とちゃんと話してみる」

「は?逃がすかよ。お前は俺の保存しょ」

 ヒルコが振り向くと、早苗は毛布をヒルコにかけた。

 そしてすぐさま逃げる。

 ヒルコは毛布をはらい、早苗を探したが、もう外には居なかった。

「保存食……どこ行きやがった……」

 ヒルコは早苗を見失った。

 その後ヒルコが間田と出会うのは、少し後の話である。



「……保存食どこいったんだ……」

 キラーはそう言いながら冷蔵庫の中を漁る。

「キラー、勝手に冷蔵庫の中を漁るな」

 テスタが注意するものの、キラーは冷蔵庫を漁るのを辞めない。

「おい、このハム食っていいか?」

「おいそれは今日の夕飯の材料だぞ、食うな」

「うん、ババアの肉よりかはうめぇな」

「食うな!!」

 蓮は微笑するが、キラーの事をあまり快くは思ってない。

 特に首に噛み付いたことで彼にとってキラーは変態としか見えていないからだ。


 間田コーポレーション 廊下

 散切り頭の男と小夜が資料を運んでいた。

「イヴさんは、若いのにスパイやってたんすか?」

 小夜は無機質な機械のような口調で言う。

「ええ、私達の敵となりうる存在の情報を間田社長に報告しておりました」

「良くやりますねー敵に怪しまれたりしなかったんすか?」

「ええ、確かに同情するような事は多々ありました。ですが。もう橘蓮は、私にとってただの有機生命体に過ぎませんから」

 To Be Continued

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