第7話 業火な忍法大アバれ

どした!希愛智?!」

「怪人が……出てきた」

「またかよこんな時に……」

朱天羅が吹き飛ばされた方向を見ると、そこには全身から鋭いトゲを生やし、顔はのっぺらぼうのように丸く、黒い目が2つ付いているだけの怪人だった。

「なにあいつ?怪人?」

「クソガキ、一時休戦な」

蓮は二野目に休戦を告げるが、二野目は全くもって従う気は無い。

「は?知るかよ、あいつもゴツゴツさんも相手してやる」

二野目は分身をなくし、鎖鎌を振り回して、怪人を真っ二つに切り裂く。

すると、怪人は断面から新たな身体を作り出し、2人に分裂した。

「は?……嘘だろ」

二野目は2人の怪人に蹴り飛ばされる。

「二野目ぇ!!」

第7話 業火な忍法大アバレ

 二野目は吹き飛ばされ、2人の怪人に踏みつけられる。

「野郎っ!」

 蓮が怪人の内1人を二野目から離し、思い切り剣で切りつける。

 怪人の身体は真っ二つになり、その断面から再生し、2人に分裂する。

「またかよ……」

 蓮は1人を蹴り飛ばし、もう1人を右手で殴り飛ばす。

 朱天羅は蹴り飛ばされた一体を盾で殴る。

「蓮!切ったら分裂するんじゃどうすれば良いのよ?」

 蓮は怪人の腹に拳を打ち込み、朱天羅に答えた。

「わからん!!」

 とにかく策を考えなければと蓮は思う。

 すると、蓮はある案を思いついた。

「喰らいなっ!」

 蓮は怪人に手から出る炎を浴びせた。

 すると、怪人は燃え、消滅した。

「やっぱりか……」

 蓮は苦戦を強いられている二野目の方へ向かう。

「クソガキ!奴は炎に弱」「うるせぇ!」

 二野目は彼の台詞を遮り、蓮を蹴り飛ばす。

「おまえっ!?何すんだよ?!」

「俺一人で充分なんだよ!」

 しかし、その言葉とは裏腹に二野目は追い詰められていく。

 蓮は朱天羅の方の怪人を燃やし、残るは二野目の一体のみ、しかし二野目が邪魔をしてしまい、蓮は迂闊に炎を放つことができない。

 すると、怪人は分身が消えたの察したのか、二野目を蹴り飛ばし、逃げてしまった。

「あっ!待ちやがれこの野郎!」

 怪人は黄色い光線を放ち、二野目を攻撃する。

 二野目は地面に倒れ、背中を強く打つ。

「…………クッソォォォ!!!!!!」

 二野目はその場でじたばたする。

 蓮は二野目に言った。

「お前何俺に攻撃してんだ。休戦するって言ったろうが!」

「うるせぇ!お前なんていなくてもな!俺一人で充分なんだよ!」

 二野目は起き上がり、竜装を解く。

 髪の毛は茶色で、瞳の色は黄緑色。顔つきは少年らしく、黒のジャージを着ていた。

 蓮も竜装を解く。

「ったく、お前いくつだよ」

 蓮が聞く。

「は?……11だけど」

「そうか、なら教えてやる」

「うっせぇよ、お前何様のつもりだよ」

 蓮は返せなかった。

 確かに会ったのはつい先程だ。何かを名乗れるような立場では無い。

 でも、このままでは二野目はダメだというのは確実だ。

 二野目はその場を去った。

 その夜。蓮は妹の小夜とケラトで夕食を食べていた。

 今日の夕食はケラトの作った肉じゃがらしい。

 じゃがいもにしっかりと味が染みており、とても美味しかった。

 この3人で食べる光景にも蓮は慣れてきていた。

「えっ、蓮様。その忍者みたいな竜騎士と出会ったんですか?」

「ああ、まぁクソガキだったけどな」

「竜装鎧ディノニクスの方ですね。あの竜騎士は日本の忍者に影響を受けましたからね」

「んでさ、気になった事があったんだが」

「なんです?」

「竜忍法って何?」

「ああ、竜力《りゅうりき》の応用ですね」

「なんだよ竜力って。いきなり専門用語を追加するな」

「えーとですね竜力というのは竜装する為の力の源……みたいなものですかね。要するに電気みたいなものです。それで竜装するのが家電製品みたいな」

「成程、要するに念だな」

「念とは……」

 ケラトはぽかんとしたが、そのまま蓮は続けた。

「つまりはそれを何とかすれば俺にも竜忍法が使えると」

「あーそれは無理ですね」

 蓮は少し椅子からズレたが、座り直す。

「なんでだよ……」

「でも蓮様は、炎出せるじゃないですか、あれも竜力の応用なんですよ」

「あっあれもなのか」

「はい、蓮様ももっと練習すれば竜装鎧ディノニクスの人にも負けない程竜力の扱いが上手くなると思いますよ」

「よーし、努力はめんどくせぇ!」

「………努力はしましょうよ」

 ケラトは真顔で言った。

「そうだよ、有機生命体」

「小夜、それだと俺は地球外生命体みたいになるぞ」

「え?何も家事もしないでいっつもゲーセン行って1000円もリズムゲーに浪費してるような奴が人だと言えますか?」

「うるせぇな。こちとら昇段かかっとるんじゃ」

「人としては降段してるけどね」

 蓮は頭をガクッと下げた。

「何も言えねぇ……」

「アハハ……」

 ケラトは愛想笑いしかできなかった。

 後日

 二野目は自転車で町中を駆け巡っていた。

 理由はただ1つ。

 昨日の奴を倒す為、それだけである。

 今の彼は自分のプライドを傷つけた、奴に憎悪を燃やしていた。

「あの野郎………どこにいやがる……」

 二野目が自転車を降りて、山道を進み、竹林で怪人を探していると、奴は現れた。

 大量の棘で、周りの竹を傷つけながら。

「昨日の奴………覚悟しろ!竜装!」

 そう言うと、二野目の腰に黄緑色のバックルが現れ、二野目は風に包まれた。

 そして、竜騎士いや、竜忍の姿へと変わった。

「昨日みてぇにいかせねぇ!」

 二野目は鎖鎌を振り回し、怪人に向かって鎌を投げる。

 鎌は怪人の肩に刺さり、二野目は鎖を強く引っ張り右拳を怪人の顔面に放つ。

 怪人は後ろに飛ばされ竹に激突する。

「お前なんて……俺一人で充分だ!竜忍法!風手裏剣!」

 二野目は風の手裏剣を数発放つが、怪人はするりと避け、手裏剣は竹を数本切断する。

 その竹は二野目の方に倒れ、二野目は下敷きになってしまった。

「ぐあ……」

 怪人は更に棘で竹を切断し、二野目の上に載せる。

 二野目は血を吐き、肺が空気が抜ける。

 怪人は嘲笑うかのように叫び、二野目の頭を何度も蹴る。

「こんな……ぐっ……奴に……」

 口ではそう言っているが、二野目は助けて欲しかった。

 こいつをぶっ飛ばすなら

 

 心で一瞬思ったその時。

 怪人の腹を何かが貫いた。

 そして、聞き覚えのある叫び声が聴こえ、二野目を下敷きにしていた竹を斬る。

 その声は、どことなくムカついて、どことなく頼れて、どことなくありがたかった。

「………ゴツゴツ野郎」

 蓮は剣を怪人に向けて構えながら言った。

「俺は、ゴツゴツ野郎じゃねぇ。橘……蓮だ」

「………れんこんか」

 蓮は少しよろけた。

「お前結局俺の名前言う気ねぇだろ!!」

 二野目はバク宙を決めて立ち上がった。

「バレてた?んでさ、あのトリケラトプスは誰?」

 二野目が指さす方向には、怪人の腹を貫く、レイピアを持った、竜騎士に竜装したケラトが居た。

「ケラト・トリケ。俺のめんどくさい弟分」

「………カッコつけなくていいぞ」

「お前に言われたかねぇ!」

 ケラトもレイピアを抜き、怪人を地面に叩きつけ、2人の元へ合流する。

「あなたが竜装鎧ディノニクスの方ですね。よろしくお願いします」

「お、おう……」

「とにかく、あいつ倒すぞ」

 蓮がそう言うと、3人は怪人に向かって武器を構える。

 怪人は起き上がると、3人を見て、怒り(言語能力はないが、動きで大体分かった)棘で自分を3つに切断した。

 そして断面から再生し、怪人は3人になった。

 蓮は剣を地面に刺し、二野目の鎌とケラトのレイピアに炎を纏わせる。

「これで奴は倒せるはず」

「……貸しだからな!いいな!」

「ありがとうございます蓮様!」

 それぞれ、1VS1の勝負が始まった。

 まずは、蓮

 怪人は突進するが、蓮は頭を片手で抑え、顔面に膝蹴りを放つ。

 蓮は歩きながら怪人との間合いを詰める。

 怪人はやけくそに攻撃するが、それを全て防ぎ、炎を纏った拳でカウンターを連発する。

 その攻撃一つ一つが怪人にとっては致命傷だった。

 怪人はその場から逃げようとした

「あっ待ちやがれ!」

 蓮は地面に刺した剣を抜き、それを投げる。

 剣は怪人の腹に突き刺さり、竹も貫通した。

 怪人は串刺しになり、動けなくなった。

 蓮は右拳に最大限まで炎を纏い、構える。

「爆竜拳《ばくりゅうけん》!!」

 その拳を怪人の顔面に放つ。

 怪人は叫び声と共に爆散し、竹も丸焦げになった。

「ちょっと火力高かったかな……」

 ケラトは、炎を纏ったレイピアで怪人を連続して刺していた。

「喰らえ……トリケ奥義……千本針さうざースピア

 ケラトは残像が見える程の速さでレイピアを怪人に突き刺した。

 怪人は燃え上がり、そのまま消滅した。

 残るは二野目。

 鎖鎌の重りの方をぶつけまくっていた。

「おらおらァ!」

 怪人が怯んでいると、二野目は目を覚まさせるように怪人にドロップキックを放つ。

「竜忍法!竜の舞!」

 二野目は突如消え、怪人は動揺する。

 すると怪人の背後から二野目が現れ、背中を炎を纏った鎌で切りつける。

 怪人は後ろを振り向くと、そこに二野目は居なかった。

 すると今度は頭上から現れ、怪人の頭にかかと落としを放つ。

 そして今度は怪人の真正面から現れ、怪人の腹を蹴り飛ばす。

 怪人も負けじと二野目の腹に棘を突き刺す。

「ぐはっ!」

 すると、怪人は違和感を覚えた。

 それもそうだろう、それは竜装鎧を着せられた、木なのだから。

「竜忍法!変わり身の術だ。このトゲトゲ野郎!トドメだ!竜忍法!獣脚分身!」

 二野目は数十人に分身した。

 しかも、しっかりとそれぞれの鎌には炎が纏われていた。

「ディノニクス流忍法必殺奥義!鎖鎌乱れ切り!」

 大量の二野目は怪人を千枚下ろしにした。

 それぞれの断面は燃え、再生は不可能だった。

 その日の夕方。

 公園のブランコで蓮と二野目は黄昏ていた。

「………今日はありがとな」

 蓮は少し顔を赤らめ、二野目から視線を逸らす。

「別に感謝されるような事じゃねぇよ。助けるのなんて当然……だろ」

「俺、家柄のせいで小さい時から責任負わされてること多くて……俺がやんないとって焦ってたかもしれねえ……」

「……そうか」

 その夕日は2人を繋げるように、紅く燃えていた。


とある学園。

1人の女子中学生が怪人に首を掴まれ、苦しめられていた。

その怪人は全身が帆立貝程の鱗に覆われ、隙間から黄色い光が見えていた。

「お前は今から、このウィワクシアスの忠実な下僕だ……」

怪人は鱗を1枚取りだし、女の額につける。

女の意識はうっすらと消えていった。

To Be Continued

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