第8話 パウパウ!?噂のあの子は魔法少女?!

 二野目との1件から4日後の日曜日。

 蓮と二野目は公園で竜力の練習をしていた。

 しかし、蓮は炎を出すだけでそれを上手く使いこなすことが出来ず、二野目に指導を貰うばかり。

 「ったく下手くそだな。もう少し繊細に扱えよ」

 「繊細って何?!竜力にそういうのあるの?!」

 「ほらこんな感じにさ」

 二野目は、そこら辺の木の葉を巻き上げ、綺麗に散らせる。

 「………どうやるん?」

 「こう、フワッザァ〜って」

 「擬音で説明されてもな……」

 二野目は少し考えてとある事を思いついた。

 「あっあいつに頼もう」

 「誰に?」

 「俺の知ってる魔法少女に」

 

「佐々木悠里《ささき ゆうり》?」

「そう、俺の家の元々近所で竜騎士なんだよ。今は学園の寮に住んでるらしいんだけど」

「この辺りで寮ある学園って結月女学園ゆづきじょがくえんしかねぇよな……」

「そうそうそう!!そこそこ!」

 二野目は手を叩いて言う。

「んで、あいつも竜力に関しちゃ出来る方だから、お前に蛍光灯を付けさせようって訳だ」

「そしたら俺は灯りを持つことになるぞ?!」

 そんな蓮のツッコミを右から左へ受け流し、二野目と蓮は自転車で(蓮のはマウンテンバイクだが)結月女学園へと向かった。

 結月女学園

 G県では珍しい、女子校でかつ寮制の中高一貫校である。

 品行方正をモットーとしており、清く正しい生徒が多く、他校の男子生徒の間では『いい女の巣窟』、『G県ガールズコレクション』、『とりあえず彼女はここから』、『外の世界にある幻想郷』『日本の女ヶ島』と言われてるとか言われてないとか。

 そんな学園の門の前に、2人は立っていた。

 二野目はなんとも思わなかったが、蓮は明らかにソワソワしていた。

「よし、行くぞ蓮」

「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て」

 蓮は3行も使うくらい待てを連呼した。

「なんだよ、なんかあったか?」

「お前たしか11歳だよな」

「あぁ、小5だぜ?」

「なら言わせてもらおう。16の高校1年の俺からすりゃ女子ってのはかーなーり恥ずかしいんだよ。変な目で見られたらどうしよとか」

「え?」

 二野目はポカンとし、蓮の話を聞く(ほぼ聞いていない)

「しかも、今から行くのは女子校だぞ?そんな所に男が入ってみろ完全に気分は江戸の街に来た外国人だ。浮きに浮きまくるわ、変な目で見られるに見られるわ。他の男子に伝わって色々と事情聴取されるわろくな目に遭わんぞ」

「はーい言い訳終わった〜?ってか、竜力教わるのになんで今更言い訳してんの」

 蓮は右手を握りしめてそれを二野目の顔に当てようか迷ったが諦めた。

「まさか寮が学校内にあるとは思わなかったんだよ………てっきり校外かと……」

 そして、2人は学園内に入った。

 蓮は一瞬、学園の生徒に養豚場の豚を見る様な目で見られるのを覚悟したが。ところがどっこい、今は夏休みである為そんなに学園内に居る生徒も少なく、帰省していたり、寮に居る生徒が多かったのでそこまで影響は無かった。

 だが、蓮はやっぱり警戒していた。

「あーもうヤダ、帰りたい」

「わがまま言うなDK、いやドンキーコング」

「上手く繋げるなこのDSが!!このデュアルスクリーン!!」

「DSって何?」

 蓮はサラッと時代の流れを感じる。

 2人が寮に着く。

 寮はちょっと高めのアパートの様で、4階建てのコンクリート作りだった。

 蓮が噛みながら悠里がどこにいるのか聞くと、135号室に居るらしい。

 そして、扉の前に来た。

 二野目がインターホンを押そうとしたその時、蓮がその腕を掴む。

「……何すんだよ」

「覚悟が出来てない」

「しろ」

 二野目は掴まれたまま、半ば強引にインターホンを押した。

「ちょっおまっ」

 するとドアが開き、そこから出てきたのは少し茶色がかった髪のショートボブに蜜柑色の目の女だった。その女の子はまだイチゴ柄の寝間着を着ており、背は平均より低めで触るだけですぐに壊れそうな、そんな印象を与える。

 それが蓮が最初に思った。佐々木悠里の印象である。

「なんですか……」

 まだ悠里は寝ぼけているらしく、目を擦っている。

「よっゆーちゃん」

 蓮は二野目を二度見した。

 蓮は心の中で叫ぶ。

 お前らそんな仲なのかと。

 は目を完全に覚ますと、肩をビクッと上げて固まった。

「に……にのくん?!」

 そのまま悠里はドアを閉める。

 ドア越しに悠里は言った。

「ちょっ、ゆーちゃん?!」

「にのくん!?その男誰?!彼氏?!」

「違うよ!!ってかなんで彼氏って捉えるんだよ!」

 悠里はか弱い声で二野目に言う。

「ごめん……昨日読んでた漫画のカップリングに似てて」

 二野目は頭を掻き、困っていたが、蓮は心の中で彼女はBL漫画を読んてたんだなと察した。

 二野目はまだそこら辺が弱いらしい。

 育ちが良いと言うのか、世間知らずというのか、純粋と言うのか。

 蓮には表せなかった。

 悠里は赤い体操着のジャージに着替え、2人を部屋へ招いた。

 部屋は普通の女子といった感じの部屋で棚には可愛い置物が飾られている。

 机はピンク色の低い机で3人は机を囲んで座った。

「に、にのくん……いきなりどうしたのかな……2年ぶりに」

「実は竜騎士と会ってな。竜力があんまりにも下手だから基礎的なのに長けてるゆーちゃんに教えて貰おうと思って」

 竜騎士という単語を聞いて悠里は肩をビクッと上げて、2人から視線を逸らす。

「竜……力の練習……」

「うん」

 二野目はスッパリと言った。

「……この人がその……」

「は、初めまして……橘……蓮です」

「……にのくんの……彼氏」

「違いますから!!彼氏じゃありませんから!!」

 悠里は更にビクつき、震える。

 蓮は言い方が強かったなと感じ、申し訳ないと思う。

「ご、ごめん」

 悠里は涙を出しながら言った。

「もう私……竜騎士になりたくないんだ……」



 同時刻にケラトは商店街で夕飯の材料を買い、帰宅しようとしていた。

「今日は奮発して、うなぎの蒲焼だ〜」

 スキップしながら帰宅していると、綺麗なギターの音が聞こえた。

 音の鳴るほうへ、歩いていくと、そこにはギターを弾く青年がいた。

 黒いコートを着ており、路上でギターを弾き、帽子を逆さまにしてチップを求めているようだった。

 その歌声は優しく、ギターと合わさり、とても良い調和をしていた。

 ケラトはその歌声に惚れ惚れしていた。

 ケラトは財布を取り出し、チップを出そうとしたが、いくら出せばいいのかあまり加減がわからず、少し迷った。

 とりあえずケラトは財布から500円玉を取り出し、帽子に入れる。

「あっ……」

 青年は歌声を止めた。

「あっ……つい良い歌だったので、この世界では良かったら相応の金を渡すのがルール……ですよね?」

「あ、まぁはい。ってか世界?」

「ああ、話すと長くなるんですけど……」

「でもありがとうございます。あっチャンネルもあるので」

 すると青年の腹から大きな音が鳴った。

「………あっ」

「良かったら家で食べていきません?」

「えっ良いんですか……?」

「もちろん、ところでお名前は?」

「蓮沼 春樹はすぬま はるきです」

「私はケラト・トリケです」

 蓮沼は、ケラトの手を取り立ち上がり、そのまま2人は家へ向かった。

 場所は戻って悠里の部屋。

「もう私……竜騎士になりたくないんだ……」

「どうしたんだよゆーちゃん。いきなりそんなこと言って昔はよく2人でなってたじゃんかよ」

 悠里は細々とした声で話した。

「……二野目くんと居た時は、2人ならやれるって思ってたんだけど。あの時」

「……ん?」

「……やっぱ無理……」

「……無理なら聞かないけど」

「と、とにかく、蓮君に竜力の扱いを教えれば……いいんでしょ?」

 二野目は机に置かれた麦茶を飲み、首を縦に振る。

「それじゃあ蓮君、中庭に行こっか」

「は、はい」

「そんじゃ俺はここでくつろいでるぞ〜」

「あっにのくん、もしもクローゼット見たら」

 悠里は親指を逆さに立てて首の前で横に振る。

「こうだから」

「………はい」

 二野目は絶対にクローゼットを開けないのを誓った。

 2人は校内の中庭へ来た。

 中庭は広く、タイルの道が対角線上に敷かれ、真ん中には大きな木が生え、周りを囲うようにタイルの道が巡っている。

「それじゃあ、竜装しようか」

「あっそういえば気になったことがあるんだけど」

「なに?」

「悠里ちゃんの竜装鎧って何?」

「えっと………パウパウサウルス」

 蓮は一瞬思考がフリーズした。

「………誰?」

「わからないですよね」

 悠里は少しため息をつく。

「あっあとで調べておくからね?!」

 蓮は少しフォローしたが、あまり変わっていない。

 その時、何かが2人の間を通り抜ける。

 それは校舎の柱に突き刺さる。

 2人は柱に突き刺さった物を見る。

「……あれって」

「う……鱗?」

 すると、何者かが2人に声をかける。

「貴様ら……まだ私の配下では無いな?」

 2人は振り向くと、そこには、全身が鱗で覆われた怪人が現れていた。


 とある会社の社長室。

 白髪の男と黒髪の男が居た。

 白髪の男の目は瞳孔が白く、普通の人とは目の色が反転していた。

 黒髪の男はラフな正装で、社長の机と思われる机の上のパソコンに何かを入力している。

 白髪の男はソファに寄りかかり、天井を見上げている。

 「そろそろ君も私の計画に協力したらどうかね?」

 白髪の男はソファから立ち上がり、黒髪の男に言った。

 「まだ俺の出る幕じゃねぇだろ。わざわざあのデータロイドにはAI積んだんだろ?」

 「とは言うものの、彼らも戦い慣れてあまり良いデータが最近取れてないんだ。わざわざお前やあの2人を生かしてるんだ。感謝しろよな?」

 「あの2人のことか?あんなとち狂った改造手術するお前なんか微塵も感謝してねぇ」

 「そうか、まぁあくまで私たちは仲間じゃなく、同盟いや、取引の末に成り立ってる関係だからな」

 「ま、お前のそのデータ集めとやらに協力してやっても良いぜ」

 白髪の男は腰からバックルを出現させる

 「竜装」

 そして彼は竜装鎧を身に纏う。

 その鎧は白く、そして獰猛さを全体的に表した鎧だった。

 「さてと、久しぶりに遊ぶか」

 そういうと白髪の男は社長室の窓を破壊し飛び降りる。

 「全く……この世界のガラスは高いぞ?」

 黒髪の男は呆れ気味に言った。

 To Be Continued

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