第6話 忍者と恐竜

 夏

 7月も下旬になり、日光が激しさを増す。

 そんな日の朝、和風の屋敷が1つあった。

 まわりは草の塀で覆われ、立派な門が建っている。

 庭には池があり、鯉がのんびりと泳いでいる。

 そんな屋敷で1人の女が誰もいない布団を剥いで、ため息混じりに言う。

「主人はこうも……逃げ足が早いものですね……」

 

 朱天羅希愛智の1件から3週間後。

 蓮の背中のヒビもすっかり治り(医者からは君はカルシウムをよく取ってたからこの程度で済んだけど、普通なら死ぬよと言われた)高校も夏休みと言う青春のサビに突入した。

 だが、蓮は部活などに入っておらず、やる事が無さすぎる。

 それはもう、いつもならすぐに終わるカップ麺の3分がまるで3時間なのでは無いかと思う程遅く思えた程だ。

 暑さにやられながら、部屋に寝そべる蓮。

「蓮様……宿題早めに終わらせないとですよ」

「分かってるけどよぉ……暑いんだよ……クーラーつけようにも電気代高くなるからって小夜が止めてるし……と言うかケラト、小夜は?」

「ああ、友人とプールに向かいましたよ」

「あーもう!水着があれば俺もプール行きてえんだけどなぁーあーあーあー」

「あーあー言っても宿題は終わりませんよ」

 そんな時、蓮のスマホが振動した。

 蓮が確認すると、LINEのメッセージが届いていた。

『ちょっと公園に来て』

 朱天羅からのメッセージだ。

 蓮はなぜ呼ばれるのかさっぱり分からなかったが、最近の友人の仲になったし、たまにはいいだろうと思い、外出の準備を始める。

「ちょっと希愛智に呼ばれたから、行ってくる」

「わかりました」

 すると、ケラトの肩に小さな蜘蛛がくっついてきた。

「わっ、蜘蛛だ……捨てとこ……」

 この時、蓮はまだ諦めきれていなかった。

 朱天羅の事を。

 蓮はマウンテンバイクを漕ぎ、公園に着いた。

 そこには、竜装済みの朱天羅が立っていた。

「何やってるんですか、希愛智」

 朱天羅は盾を攻撃形態に変え、切っ先を蓮に向けた。

「練習」

「……え?」

「稽古よ、稽古」

 蓮は一瞬フリーズしたが、それが竜騎士の稽古だと理解した。

「え……は、はい」

 蓮は竜装し、剣を構えた。

 すると、突然朱天羅は剣を振るう。

 それを蓮は素早く剣で弾く。

「ちょっ!何するんですか?!」

「だから!稽古!」

 そう言いながら朱天羅は攻撃を続ける。

 蓮は苦戦を強いられながらも、その中で剣の使い方に慣れてきた。

(あー……多分実践的に練習したいんだろうな……希愛智……でも口下手だから……)

 蓮は朱天羅の剣を弾き、胴体ががら空きになった所に拳を放つ。

 朱天羅は後ろに吹き飛ばされた。

「ぐあっ……」

 蓮は剣を地面に刺し、朱天羅に手を差し伸べる。

「大丈夫ですか?」

 朱天羅は蓮の手を握り、立ち上がる。

「う、うん……」

「要するに、俺を強くしたかったんですよね……」

 朱天羅は顔を赤らめながら言う(兜をつけてるので顔は分からないが)

「え………まぁ……あと」

「あと?」

「ど、どう接すれば良いかよく分からなかったから……」

「あ……そういうのも……あったんですか」

 蓮はいきなり稽古は物騒じゃないかと思ったがまぁ仕方ないと考える。

 その時、2人の間に何かが通り、地面に当たる。

 その何かは、全く見えず、地面にも無かった。

 飛んできた方向を見ると、そこには公園のブランコの上に立つ忍者の姿があった。

 ブランコの上にとは言っても、乗る方ではなく、ブランコを吊るす柱の方に立っていたのだ。

 首に巻いた布が風になびき、その緑の忍装束の肩と脛には甲冑とも言えるようなアーマーが付いていた。

 黒い頭巾は顔全体を多い、隙間からは黄緑色の光を放つ。

「お前は誰だ?」

 蓮が聞くと、彼は答えた。

「人に隠れて悪を斬り、風に乗ってシュシュッと参上。忍であれど忍ばずわっしょい。我の名は、竜忍 二野目潤りゅうにん にのめじゅん見参!」

 2人は思った。

 何言ってんだこいつと。

「お前ら竜騎士って奴だろ!俺と勝負しろ!」

 2人は5秒固まり、その後蓮が答える。

「あのさ、一つだけ言わせろ」

「なんだ!この二野目様に何を申す!」

 二野目は自信満々に言う。

 蓮は彼の耳の奥の鼓膜にも刻めるレベルで叫んだ。

「名乗りがダセェよ!!!!!!!」

 その一言は二野目の心に突き刺さった。

「…………う、うるせえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!俺の好きだろうが!今の世の中ダサかっこいいって物もあんの!そもそもテメーの価値観押し付けんな!このゴツゴツ野郎!」

「竜騎士は大体ゴツゴツしてるだろうが!」

「俺はゴツゴツしてねーぜ!スタイリストだ!」

 そう言うと二野目は自信満々に自分を指さす

「それを言うならスタイリッシュな」

「そうとも言うぜ!」

「そうとしか言わねぇんだよ」

 二野目は鎖鎌を取り出し、鎌を蓮に向ける。

「お前と俺で勝負だ竜騎士!俺が強いのを見せてやる!」

 蓮は半分面倒くさがりながらも剣を地面から引き抜き、構える。

 朱天羅は竜装を解き、近くのベンチで座っている。

 二野目はブランコから飛び降り、華麗に着地する。

「行くぜ!竜忍法りゅうにんぽう鎌鼬かまいたち」

「なっ?!」

 二野目は空を飛び、蓮の肩を鎌で切り裂く。

 鎧が傷ついた程度ですんだが、蓮は地面に倒れる。

 二野目は着地し、間髪入れずに攻撃する。

「竜忍法風手裏剣がざしゅりけん」

 二野目は風を固め、手裏剣に変え、それを蓮に放つ。

「さっきのはそれかよ!!」

 蓮も負けじと立ち上がり、剣で風の手裏剣を弾き飛ばす。

 しかし、二野目はそれを連発する。

 蓮は剣で弾くが、数発が鎧に当たり、膝をつく。

「竜忍法!竜の舞」

 そう言うと二野目は突如消えた。

「どこ行きやがったあのクソガキ……」

 すると、突然背後から二野目が現れ、鎌で切りつける。

 攻撃された方を振り向くと、二野目の姿は無く、今度は頭上から現れ、鎌で切りつける。

 さらに次は地面から現れ、蓮の顎に膝蹴りを放つ。

 蓮は空中に飛ばされ、そのまま鉄棒に激突する。

「ぐはっ……このやろ……お前が忍法ならこっちも忍法をしてやる……」

「お?ゴツゴツ竜騎士さん?お前も忍法使えんの?」

 二野目は煽り口調で言い、手で煽る。

「竜忍法……クソガキファイヤー!!」

 蓮は両手でかめはめ波の構えをし、放つと炎が出された。

 二野目はそれをサラッと避ける。

「うっわだっせーの。俺の忍法の1μmにもならねぇ〜」

「よく知ってんな……1μmとか………高校で習う単位だぞそれ……」

「そんじゃ、俺の必殺技!竜忍法 獣脚分身!」

 すると、二野目は7人に分身し、蓮に集団で攻撃する。

「なっ、ズルだろこんなの!」

「勝つのにズルもクソもありませーん!」

 その時、竜装した朱天羅が2人の間に吹き飛ばされてきた。

「どした!希愛智?!」

「怪人が……出てきた」


「またかよこんな時に……」

 朱天羅が吹き飛ばされた方向を見ると、そこには全身から鋭いトゲを生やし、顔はのっぺらぼうのように丸く、黒い目が2つ付いているだけの怪人だった。

「なにあいつ?怪人?」

「クソガキ、一時休戦な」

 蓮は二野目に休戦を告げるが、二野目は全くもって従う気は無い。

「は?知るかよ、あいつもゴツゴツさんも相手してやる」

 二野目は分身をなくし、鎖鎌を振り回して、怪人を真っ二つに切り裂く。

 すると、怪人は断面から新たな身体を作り出し、2人に分裂した。

「は?……嘘だろ」

 二野目は2人の怪人に蹴り飛ばされる。

「二野目ぇ!!」

 To Be Continued

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る