第19話

 今日は土砂降り。

 恭介さんに会えない私の心が泣いているかのよう。

 図書室で自習してから帰ろうと思ったが、雷も鳴りそうなので先生に帰るように促された。

 校門を出てすぐ、ずっとずっと聞きたかった声が雨の中で聞こえた。


「涼花さん」


 恭介さんだ。びっくりして一瞬立ち止まったが、そのまま何事もなかったように小走りで駅の方向に駆けていった。何でいるの。これ以上傷つきたくない。もう会いたくないんだよ。


 すると突然、後ろから強く腕を引かれた。

「何で避けてるんですか」

「別に避けてなんか」

「じゃあ朝何で時間変えたの?」

「図書の当番入っちゃって」

「前に言ってたよね、涼花さん学校解錠時刻と同時に着くって」

「……」

「俺のこと嫌いになった?」

「嫌いになんかっ……!」

「じゃあ、何で?」

「……」


 恭介さんが好きだからです。

 彼女さんいるみたいなのでもう忘れようとしていたからです。

 答えないままの私に、恭介さんは私の正面に回り込んで真っ直ぐに目を見て口を開いた。


「涼花さん、俺は君のことが好きです。僕と付き合ってください」


 全くの予想外の出来事に頭が追いつかない。涙が落ちるのを止められない。混乱した頭のまま、聞きたいことを恭介さんに聞く。

「何で……?彼女さんは?」

「多分2週間前のこと言ってるんだよね?あれはただの幼馴染だけど?」

「どうして、わざわざ、こんな所まで」

「だから、涼花さんのことが好きだから。すれ違ったまま終わるのは嫌だったんだ」

「……信じて良いんですか」

「もちろん」

 濡れるのなんて構わない。持ってた鞄と傘を放り出し、恭介さんに抱きつく。

「…私で良ければ、喜んで」


 あの時と同じ台詞に、恭介さんは一瞬目を見開いたあと、笑って抱きしめてくれた。

 さっきまでの土砂降りが嘘のように晴れ渡った空には、虹が架かっていた。



fin.

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

通勤快速アクアライン7号 楓月 @story_moon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ