3.~食べられるために桃はある~

 昔々、おじいさんとおばあさんがいました。

 おじいさんは山へ鬼退治に、おばあさんは川へ洗濯に向かいました。

 おばあさんが洗濯をしていると、上流から大きな桃が流れてきました。


「ざぁーっこ♡ ざぁーっこ♡」


 おばあさんは驚き、ひとまず桃を持ち帰りました。

 家に帰り、おじいさんとおばあさんは話しあい、割ってみることにしました。

 桃を割ると、中からメスガキが出てきました。


「あっ、枯れてる♡」


 おじいさんとおばあさんは、メスガキを育てました。

 しばらくたって、いよいよ旅立ちの日が訪れました。


「よわよわおじいちゃんがつっかえないから、鬼退治してくるね♡」


 メスガキは旅立っていきましたが、すぐに躓きました。移動が大変です。

 そこにちょうど良く、イヌが通りかかりました。


「あっ♡ 無様なワンチャン♡」

「なんだとこのメスガキ!」

「こんな年下の子に欲情してるwへんたーいw」

「そんなことはない!でたらめを言うな!」

「うそつき♡ 頭わるーい♡ 上も下もちいさくってみっともなーい♡」

「うわああああ!」


 オスイヌはメスガキの下僕になりました。メスガキはイヌの背に乗って、鬼ヶ島へと向かいます。

 メスガキは戦うのが面倒になりました。そこで自分の代わりに戦わせるため、通りかかったオスザルを呼び止めました。


「人間未満♡ いつでもどこでも顔真っ赤♡」

「なんだとこのメスガキ!」

「動物実験で使われてる♡ 人間の劣化版♡ おばかさんの代名詞♡」

「うわああああ!」


 サルを下僕にして、メスガキは先に進みました。

 メスガキは次に、空を飛んでいたキジを見つけました。


「変な色w恥ずかしくないの?」

「なんだと!」

「とりあたま♡ くそざこ知能♡ タカのエサ♡」

「うわああああ!」


 キジも下僕になりました。

 メスガキはとうとう鬼ヶ島につきました。しかし、鬼は見当たりません。


「鬼さんは私が怖くて出られないのかな? ださぁい♡」


 メスガキは続けます。


「今まで会った中で一番ざこ♡ 見掛け倒し♡ 鬼ヶ島からざこの島になっちゃえ♡ なーんにもしないで負けちゃったね♡」


 そうこうしていると、赤い鬼がやってきました。


「えぇーっとぉー、私は優しいのでぇー、下僕の皆さんにお任せしまーす♡」


 イヌ、サル、キジが鬼と戦い始めました。しかし、鬼は一撃で下僕たちを蹴散らしてしまいます。


「…… え?」

「生贄か。今回は随分しつけがなってないな」

「い、生贄?あっ、えっ、そうよね。もしかしたらあたしの伝説の為の、いけにっ―― 」

「あの狸爺め。まあいい」


 鬼はメスガキの首を掴みました。


「こ、こんな年下の子に、暴力って、恥ずかしーい♡」

「因果応報」

「大人のっ対応っての、が、あっ」

「わからせてやる」


 メスガキはみるみるうちに顔色が青くなっていきました。

 足をジタバタさせて鬼の腹を蹴っても、びくともしません。それどころか、鬼は腹を立てて首と腹を同時に押し始めました。


「おっ…… 」


吐きたくても喉が締まって吐けません。優しい鬼は、メスガキの様子を見て手を放しました。


「今後は逆らうなよ」


 メスガキは解放されるや否や不敵な笑みを浮かべました。


「あっ、欲情した♡ よわよわ♡ もしかして童貞?w」

「童貞ではない。そこまで言うなら、証明してやる」


 こうして、メスガキは鬼に食べられてしまうのでした。おしまい。

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慶長メスガキ物語 しゃるふぃ @shear

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