46.決戦

「おそらくここだな」


 派手な装飾を施された大きな門の前に立ち止まる二人。

アイオンとマサラは、最後の闘いに向けて息を整えていた。


「馬鹿弟子よ、覚悟はできたか?」


「はい、もちろんです!

 あいつを……

 あいつと魔王を必ず倒します!!」


 幼馴染であるクラウスを今度こそ倒すという覚悟を宣言した勇者アイオン。

そして、目の前の門が大きな音と共に開き始めた。


「勇者よ、よくぞここまで、待ちくたびれたのう。

 入ってくるがよい、わらわたちが相手してやるのじゃ」


 大きな門が開くと共に、魔王フェリシアの声が響いた。

門の先に広がる謁見の間には、魔王フェリシアと堕ちた英雄クラウスの姿があった。


「よう、アイオン。

 ついにここまで来ちまったな」


「クラウス……

 今日こそお前を討つ!」


 謁見の間へと入った二人は、魔王たちの前にて対峙する。


「そっちのにーちゃんは初めましてだな」


「そうだな、にーちゃんなのかどうかは知らないがな。

 一応名乗っておこうか、俺の名前はマサラだ」


「丁寧にどうも、俺はクラウスだ。

 って言ってもアイオンから聞いてる思うがな」


 クラウスとマサラ、二人は互いににらみ合っていた。

そして、一触即発かに思われたその時、マサラの肩をアイオンが掴んだ。


「師匠、そいつは俺の相手です。

 こればかりは譲れません」


 一歩前に歩み出たアイオンは、聖剣アークをクラウスに向けて構えた。


「また俺に負けたいのか?

 いいぜ、やってやるよ!」


 軽く挑発をするクラウス。

しかし、アイオンはその挑発に乗らずに話を始めた。


「この期に及んで、そんな安い挑発などするな。

 そんなことより…… 

 一つ答えろ。

 お前は何故人族を裏切った!!!!

 英雄とまで呼ばれたお前が…… 何故……

 最後に聞かせてくれ……、これがお前の正義なのか!!?」


「今更そんな問いに意味があるのか?

 それに正義……か、俺にとってフェリシアと共に歩むこの道の先が正義だ」


「ふざけるな!!

 人族を裏切ったその道の先に正義などあるものか!!」


「見解の相違だな。

 人族に救う価値などない」


 アイオンの叫びを冷たくあしらうクラウス。

聖槍デュナミスを顕現させて、アイオンを睨みつけ構えた。


「今更言葉など不要だろ。

 かかって来いよ」


 クラウスの言葉に激怒したアイオンは飛び出し、聖剣アーク聖槍デュナミスが激突した。


「馬鹿弟子が熱くなりおって……

 未熟者めが!」


「気持ちはわかるがのぅ。

 まあ、この状況でクラウスが冷静すぎるのじゃ。

 さて、わらわたちも始めようかのぅ」


 フェリシアは大鎌デスサイズを肩に担ぎ、満面の笑みを浮かべていた。

その笑みに底知れぬ不気味さを覚えたマサラは、鞘に収めた愛刀の鯉口を切り身構えた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


 自分たちの衝突をきっかけにフェリシアとマサラに不穏な空気が流れていることを感じた二人であったが、そちらを気にしている余裕はなかった。

武器も実力も拮抗している二人の戦闘である、一瞬の油断も気のゆるみも許されない攻防を繰り返していた。


「へぇ、前回ぼろ負けしてから相当特訓でも積んだのか?

 見違えるような強さだな!」


「きさまに負けたままなど、許されることではないからな!

 俺は勇者なんだ!

 人族の平和のために、裏切者おまえと魔王をここで討つ!!」


「人族さえ平和なら、幸せならそれでいいのか!!

 人族おまえら他の種族フェリシアたちをどれほど傷付けているのか、それを知った上で勇者おまえはそう言うのか!!」


「……それも人族の繁栄には仕方ないんだ!!」


「やはり相容れないあいいれないみたいだな!!」


 叫びながら、振り下ろされた聖剣アークを、クラウスは裂帛れっぱくの気合いと共に聖槍デュナミスで弾き返した。

そして、無防備になったアイオンに聖槍デュナミスが突き立てられんとしていた。


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