3章.魔王城突入編

39.帝国侵入

 レムリアが率いる王国騎士団を筆頭とした王国軍が帝国に攻め込んだその裏で、アイオンたちはひっそりと行動を開始していた。


「なんとか帝国内に潜入はできたな」


「そうだね。

 でもここからが本番だよ」


 無事に帝国内に潜入したアイオンとファウストは視界の先にある魔王城を見上げていた。


「あそこにクラウスたちが……」


「そうだね、あの魔王と一緒に…… ね!」


 魔王への敵意と憎悪を一切隠そうとしないファウストの姿にアイオンが戸惑っていると、ファウストは魔王城の城門に向けて巨大な火球を放った。


「ファウスト?

 急にどうしたのだ??」


 巨大な火球が着弾した場所に発生した大きな火柱を睨みつけながらファウストが答えた。


「城門前に何者かがいるのが見えたからね。

 でも…… 

 無駄だったみたいだね」


 アイオンは、ファウストが睨みつけている大きな火柱を見る。

徐々に小さくなるそれの中から、うっすらと人影のようなものが現れた。


「いきなりこんな火球のプレゼントとは。

 見た目に寄らず、かなり情熱的な方のようですね」


 うっすらと現れた人影が、手にもっているものを横薙ぎよこなぎすると、小さくなりつつもまだ残っていた火柱を消し飛ばした。


「そんな場所にいるってことは魔王の側近なのでしょう?

 なら、この程度の魔術は挨拶程度だと思いましてね」


 不敵な笑みを浮かべたファウストが興味なさげに答えた。


「愛想のないお人ですね。

 私の名前はファルミナ、魔王フェリシアさまにお仕えするものです。

 あなた方が、魔王フェリシアさまの足元にも及ばなかった勇者と大魔術師…… とやらでしょうか?」


 ファルミナの挑発するような言葉に不快感を示したファウスト。

今にも飛び掛かりそうなファウストの右肩を掴んで抑えながら、アイオンが話しはじめた。


「ファルミナさん、でしたか?

 俺たちがこうしてここまで来ることは想定してたようですが……

 一人で待ち構えるとか舐めてるのですか!」


 アイオンは掴んでいたファウストの右肩から手を放すと同時に、ファルミナへ向けて飛び出した。

右手のみで持った聖剣せいけんアークを大きく振りかぶり、ファルミナ目掛けて振り下ろした。

ファルミナを切り裂かんばかりの斬撃は、素早く切り上げられ迎撃された。


「武器ごと切り裂くつもりだったのですが、さすがは聖剣といったところですか」


 ファルミナは両手で薙刀ニヴル持ち、アイオンに対して構えた。


「1人で俺たちを相手するつもりなのか?

 さすがに舐めすぎだ!!

 ファウスト、絶対に手を出すなよ!!」


 アイオンの言葉に苦笑するファウスト。

甘いと思いながらもファルミナの挑発にイライラしているのもあり、アイオンの言葉どおり一人に任せることにした。


「はぁぁ。

 せっかくのハンデを自ら捨てるとは……

 勇者とは実力差もわからないのですね。

 まぁいいです、さっさとかかってきてください」


 ファルミナが呆れて、構えを解除したその瞬間をアイオンは見逃さなかった。

精一杯のアイオンが繰り出した強烈な右片手突きが、ファルミナを襲った。

完全に油断しており、虚を突かれたこの攻撃を完全に回避することは難しいと判断したファルミナは、自身の尻尾を盾のように使ってアイオンの突きを受け止めた。


「うっ……

 さすがは勇者…… ですか。

 侮りすぎてましたね」


 アイオンの突きが止まったことを確認したファルミナは、尻尾をなぎ払いアイオンと距離を取った。

そして、今度は全ての神経をアイオンに集中させて構えるのだった。


「隙をついたあの突きでさえ、防いでしまうか……

 俺も気を引き締めないとな」


 互いに実力を認め合った二人。

わずかに口もとが緩んだ二人の表情が真剣なものに戻った時、予想外のことが二人を襲った。

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