第25話エンド・ハッピーズ
伝説の剣・ナイツ・キングスピリッツと融合して、ジャンディーナドルクと変わり果てた刹那。彼女が得たのは力だけではなく、美しさとリーダーシップも手に入れた。
ジャンディーナドルクは早速、SNSで自らがかかげる理想論を説き、我についていく同士を求めた。
「今こそ立ち上がる時だ!理不尽と不公平が蔓延するこの世に幕を下ろして、我らが天国のような素晴らしい世の中にしていきましょう!!」
ジャンディーナドルクのこの言葉はSNSでたちまち拡散した、『こんなの、バカなんじゃないの?』と最初は思った人もいたが、SNSに投稿を重ねていくうちに多数の人々が、ジャンディーナドルクに熱狂した。
「すごい・・・、TwitterでもFacebookでもフォロワーが千人を越えたよ!!」
「やはり、刹那には人を引き付ける何があるんだ。」
「でも・・・、何か今の刹那を見ていると、行くとこまで行ってしまったという感じがするんだよな・・・。」
「ああ、これから刹那はどうなってしまうんだろうか・・・?」
松野と矢沢は、邪悪に変わり果てた刹那を見ながら不安そうな視線を向けた。
しかしそんな仲間の不安は、ジャンディーナドルクには見えていなかった。そしてジャンディーナドルクはまず、イギリスを攻撃して支配することにしたのだ。
まずSNSで見つけた仲間に食糧や武器などの物質と軍資金の支援をしてもらい、それからイギリスの国民を熱狂とカリスマ性で支配して、度重なるテロを引き起こさせた。イギリスは国民と軍隊が戦う紛争地帯と化した、しかしやがて軍隊の中にもジャンディーナドルクに味方するものが現れて、そしてついにイギリス政府を追い詰めた。
ジャンディーナドルクはイギリスの女王と首相に降伏と国の譲渡を要求。イギリス政府は突っぱねたが、ジャンディーナドルクは国民と共にウエストミンスター宮殿に突撃。女王と首相はジャンディーナドルクの手によって殺され、イギリスはドルクスとジャンディーナドルクの支配に置かれてしまった。
「ハハハ、ついに国を手に入れたぞ!!これは拠点や基地とは違う、私はこれほどまでに広くて豊かで強いものを手に入れたことがあっただろうか?」
「そうだな、おそらくお前の経験の中では初めての経験じゃないか?」
ドルクスが言うと、ジャンディーナドルクは喜び溢れる高笑いをした。
「それでドルクス、お前にはこの新しい国の政務を任せようと思うの。いいわね?」
「まあいいが、それでアゴノとはいつ戦うんだ?」
「もうそろそろね。これだけのことをしたんだもん、遊撃隊が見過ごすはずがないわ。」
「ジャンディーナドルク、いや刹那。いろいろあったけど、やっぱりお前と一緒にいれて俺はよかった。」
ドルクスが言うと刹那は言った。
「そうでしょ?私は闇と運命に選ばれた存在なんだから。」
ジャンディーナドルクの瞳には勝ち気が満ちていた、それはジャンディーナドルクがこの世をわが物にした喜びを表していた。
これらの出来事は、刹那がナイツ・スピリッツと融合してジャンディーナドルクになってから、たった二ヶ月間のことだった・・・。
ジャンディーナドルクがイギリスを滅ぼして手にした国は「エンド・ハッピーズ」と呼ばれることになり、その衝撃は全世界に瞬く間に拡散。そしてアゴノと来馬の元に伝わっていったのだった。
「刹那、国を滅ぼしてわがものにするほどの力を持っていたか・・・。これはなんとかしないとな。」
「刹那・・・、あれは刹那じゃない。ジャンディーナドルクという悪魔だ・・・。刹那は悪魔になったんだ!!」
来馬は激しく泣き出した、アゴノは来馬の肩に手を置いて言った。
「泣くな来馬、まだ可能性はある。そのためにお前はパワーストームの力を使いこなせるように、練習してきたじゃないか?」
「アゴノさん・・・、はい!!おれ、がんばります。」
「よし、そうと決まったら特訓だ!」
そして来馬はアゴノに特訓をしてもらい、はや十日が過ぎた。
今回、アゴノは来馬にテストを出した。
「このテストに合格できないと、次のステップには進めない。いいな?」
「はい。それで、テストというのは・・?」
「ボー、こっちへ来い!」
アゴノはボーを呼んだ、すると右足を捻挫したボーがやってきた。
「ボー君!?どうしたの、その足!?」
「今回の試験に向けて、私の力で彼には捻挫をしてもらった。」
「イテテテ・・・、大丈夫だよ。君に治療してもらえると信じているよ。」
ボー君は苦笑いしながら言った。
「それじゃあ、始めてくれ。」
「うん、わかった。」
来馬はボーの右足に力をゆっくりと流し込んだ、ボーの右足が不思議な模様のテープみたいなものに包まれた。来馬はその状態を維持するために、ゆっくりゆっくりと力を送っていく。
「ボー、足の痛みは?」
「引いてる、引いてる!いい調子だよ!!」
「よし、そのままいけ!」
そしてついに、ボーの捻挫は完治した。
「治ったよ、アゴノ様!!」
「やった・・・、成功したんだ!!」
「よし、合格だ。これで刹那浄化へ大きく一歩を踏み出せた、これから次の練習に突入だ、心してがんばれよ。」
「はい!がんばります!」
それから来馬は刹那を浄化するために、特訓に励んでいった。
そして二週間後、アゴノは来馬を呼び出した。
「来馬・・・、今回君を呼んだのは私が刹那に対する気持ちを伝えるためだ。」
「それって、アゴノが刹那さんのことに興味があるということですか?」
「ああ、来馬のとは違う形だが私は刹那に興味がある。そして刹那自身のことを、個人的に高く評価している。」
「それはおれとしてありがたいことです。」
「全く、ドルクスと出会わなければこんなことにはならなかったのに・・・。拓也と多彩はあの世から刹那を見て、どう思っているのかな?」
「拓也と多彩って、誰ですか?」
「ああ、そういえば説明していなかったな。拓也と多彩は刹那の親戚でな、刹那を捜しだしてほしいと私に依頼してきたんだ。でも、今はもうこの世にはいない。」
あの訪問の後、拓也と多彩は刹那と会う日取りを決めてアゴノに報告。アゴノから護衛として、ボーとガーがつくことになった。しかしアゴノの予想通り、あの手紙はドルクスの罠だった。そこに刹那の姿はなく、待っていたのはドルクスとシュウたちだった。ボーとガーのコンビが敵う相手ではなく、すぐに拓也と多彩を連れて逃げようとしたが、攻撃されそうになったときにボーを庇って拓也が殺された。そしてボーとガーは多彩の手によって逃がされ、アゴノの元へ戻ってきた。
ボーとガーから報告を受けたアゴノは、現場へ向かった。しかし二人の姿はなく、ただ飛び散ってからまだ新しい血痕しか無かった。
「そして二人は帰らぬ人となってしまったんだ・・・。」
「そんなことがあったなんて・・・。」
「だから私はせめて二人が報われるためにも、刹那を取り戻さなければならない。改めて協力してくれ。」
アゴノが右手を出すと、来馬は左手を出して握手をした。
二人は互いに刹那を助ける誓いを交わしたのだった。
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