第24話闇の勇者

アゴノが虫の知らせを感じた三時間前、ドルクスと刹那はイギリスのスコットランドにあるベン・ネビス山に来ていた。標高1344mという富士山よりも低い山だが、この山のどこかに伝説の剣があるのだ。

「さあ、探しにいくわよ。」

『気合い十分だな、だがもしも伝説の剣が見つからなければ、また別の融合素材を探さなければならないが、いいな?』

「わかっているわよ、それじゃあレッツゴー!!」

刹那は先頭に立ってベン・ネビス山の中へと入っていった。

突入したのは刹那・ドルクス・シュウを含む七人・松野・矢沢の十一人、それぞれ二グループに分かれながら伝説の剣を探しに行った。

「どこだどこだ、伝説の剣・・・。」

「刹那、そんなものやっぱり最初から無いんだよ。あの話もただのフェイクニュースに過ぎないんだよ。」

「何言ってんのよ矢沢、あるかどうかなんて探してみないとわかんないじゃない!アゴノに勝つために私はなりふり構っていられないのよ!!」

矢沢は焦る刹那にため息をついた、それを見たシュウが話しかけてきた。

「矢沢、最近元気ないな。変なものでも食べたか?」

「そうじゃないっす、ただ俺たちはこれからどこへ向かってしまうのかが怖いんす。アゴノと戦ってから、刹那さんはどこか変わってしまった気がするんす。」

「そうか・・・。まあ、おれもドルクスがどこを目指しているのか、わかんないな。」

「そうだろ?それに刹那のやつ、ドルクスのことを特に意識しているところがあるんた。この組織のリーダーは自分だと、ドルクスにしらしめようとしているかもしれない。」

「まあ、ドルクスの方が刹那より優れているから、あくまでもドルクスに自分を認めてもらうつもりだな。」

矢沢とシュウが話している間、刹那は道なき道を突き進んでいた。

すると山の奥の方に小道があるのを見つけた。

刹那は無意識に小道へと導かれていった。

「おい、刹那!どこへ行くんだ?」

「なんだか、向こうにある何かに呼ばれている気がするの。」

「そうか、行ってみよう。」

ドルクスは他のみんなに通信機で『山のふもとまで戻れ。』と指示を出して、刹那の後を追った。

小道は昼でも木が生い茂るせいで暗い、ジャングルのようなを小道の奥へと続いていく。

しかも小道はところどころでこぼこかつジグザグになっていて、歩けば歩くほど体力が奪われていった。

だが刹那はそんなこと気にせずに、どんどん奥へと進んでいった。

そしてついに、刹那とドルクスの目の前にあの伝説の剣が現れた。

「見つけた・・・、ついに見つけた!伝説の剣、ナイツ・キングスピリッツを!!」

『これがナイツ・キングスピリッツ・・。』

その剣は岩に突き刺さっていて、歴戦を重ねたことによりとぎすまされた刃が、神々しさを示していた。

「ドルクス、例のカードあるわよね?」

『ああ、もちろん。』

ドルクスは「ダークパワーストーム・フュージョン」のカードを見せた。

「それじゃあ・・・、いよいよ抜くよ。」

『ああ、いくぞ!!』

刹那はナイツ・キングスピリッツを持って岩から抜こうとした。すると刹那の中に、これまでこの剣を持って戦った人たちの、記憶と無念の魂が流れ込んできた。

「うああーーーっ、確かにこれは頭がおかしくなりそうだわ・・・。でも、私は絶対にこの剣を抜いて見せる!!」

刹那は剣の試練に耐えながら、力一杯に剣を抜こうとした。

そしてジリジリと剣が岩から抜けようとしてきた。

『おお、剣が少しずつ動いてきたぞ。刹那!このまま引っこ抜いてしまえ!!』

ドルクスが刹那を応援した。

刹那は全身の力を集中させ、これまでにないほどの怪力を出した。

そして伝説の剣・ナイツ・キングスピリッツが、刺さっていた岩からするすると抜けた。

「やった!ドルクス、頼んだわよ!!」

『ダークパワーストーム・フュージョン発動、刹那とナイツ・キングスピリッツをフュージョン!』

ドルクスは刹那の頭上に、闇の空間を生み出した。そして刹那とナイツ・キングスピリッツは、闇の空間へと吸い込まれていった。

『深き闇を持っ少女よ、騎士の魂を秘めし剣と交わりて、人を越え魔を越え神をも超越した、前代未聞の闇の覇者となれ!!フュージョンサモン!現れろ、暗黒女傑・ジャンディーナドルク!!』

闇の空間の中で二つが一つになって、新しい命が吹き込まれていく。そして闇の空間から降臨したのは、闇に満ちながらも気品のある鎧と剣を装備し、堕天使の翼を生やして、額に高貴な紋様をつけた刹那が現れた。

『フハハハハハ!!ついにやったぞ、私は究極の力を手に入れたんだ!今の私ならなんだって支配できる、なんだって壊せる、なんだってできる!!力を手に入れることが、これほどまでに気持ちがいいとわ思わなかった。さて、試しにこの剣を一振してみよう。』

そしてジャンディーナドルクは、剣を一振した。するとその一振で目の前の山がななめに切れて、たちまち崩れ落ちた。

『これは、とんでもない力だ・・・。ジャンディーナドルク、もしかしたらアゴノに勝てるぞ!!』

ドルクスはジャンディーナドルクの力に可能性を感じて、思わずガッツポーズをした。

そして刹那の命運がそこから大きく狂ってしまったことに、刹那自身が気づくことはなかった・・・。








刹那がナイツ・キングスピリッツと融合してジャンディーナドルクとなったことを、パワーストームの力によって目撃したアゴノと来馬は、その姿と力に驚きを隠せなかった。

「そんな・・・、刹那があんな姿になってしまったなんて・・・。ドルクス・・・、お前だけは許さんぞ!!」

「とうとうやってはいけないことをしてしまいましたね・・・、ああなるともう手遅れだな・・・。」

「手遅れって、刹那を元に戻す手は無いのか?」

「一番簡単なのは、刹那自身を倒すことだ。そして二番目の方法は、ダークパワーストームを浄化すること。二番目の方法は上手くいけば刹那を生かした状態で戻せるが、やるとなるとかなり難しいことだ。」

「本当か!?だったらおれが、刹那を元に戻してみせる。だかは二番目の方法をおれにやらせてくれ。」

来馬はアゴノに懇願した。

「いいだろう。ただしどんな手でも使うことになる、そこんとこは覚悟してくれ。」

アゴノは来馬に向かって言った、来馬の心には刹那を救い出すという気力が満ち溢れていた。







それから来馬はアゴノの指導の元、パワー・ストームによる浄化を身につけるために特訓を始まった。

「くうぅぅぅ・・・。」

「まだだ、そんなものでは浄化の力を使いこなせない。少しづつ力を受け入れて理解するんだ!」

「はい・・・。」

来馬はあせる気持ちを抑えながら、技の習得へと一歩ずつ進んでいった。

その光景をアリゲーターナイトとデカンクラッシュが見ながら言った。

「あいつ、すっかり遊撃隊の仲間になったな。」

「ああ、といっても刹那を助けるために仲間になったものだ。アゴノ様は、刹那を助けることができたら下僕契約を解約するつもりだ。」

「そうか・・・、相変わらず人情的だな。」

「それにしても、刹那が闇の力に溺れてしまうとはなあ。デカン、もしヒカリがそうなったらどうする?」

デカンクラッシュとヒカリは互いに相思相愛の仲なのだ。

「バカ言うな!!天使であるヒカリが闇に溺れるなど有り得んわ!!」

「そうだな、でも刹那は闇に溺れてしまった。彼女を助けるのは、容易いことではないぞ・・・。」

二人はがんばる来馬を見つめるだけだった。

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