第13話 VS陣フウガ④

 風が吹きすさぶ。

 そのせいで周りの魚達が吸い込まれそうになるのを必死に堪えながら泳いでる姿が目に入った。

 必死な姿にごめんと謝りたい気持ちになるが今は、目の前の相手に集中しなければいけない。


 風が完全に治まると二足歩行のロボットから四足歩行の獣型に変形したフウジンタイガーが現れた。


【この体になるのも久しぶりやな~】

「暫くビーストモードになってなかったからな~」

【さて、それじゃあ、一仕事しますか】


 ビーストモードになったフウジンタイガーが再び咆哮を上げると小さな竜巻が複数、発生する。

 これがフウジンタイガーのビーストモードいや風来のビーストモードの能力だ。


「ムギ、構えて」

【みゃ!】


【うおりゃああああああ!!!!!!】


 雄叫びと共に竜巻がアタシ達に襲いかかってきた。



「ちょっと! なにあれ!?」

「あれが風来しか持たないビーストモード時の力や」

「風来しか持たない?」

「本来のビーストモードは攻撃力、防御力を五分間だけ驚異的に上がる能力なんや。フウガは其処をビーストモードになったら小型竜巻発生装置になるように改造したんや」

「改造!?」


 チヨはライガの説明、改造という言葉を聞いてフウガを強く睨付け立ち上がるのをマフユは制止した。


「どうして止めるのよ!?」

「入生田さん、陣フウガがフウジンタイガーに行った改造は既に認められているから運営に訴え所で無駄だよ」

「認められているですって!?」

「テノヒラロボはある程度の改造は認められているんだ。改造したロボをロボセンターに持って行って審査する必要があるけどね」


 テノヒラロボバトル世界ルールにより、テノヒラロボの改造は認められている。

 ただし、改造したテノヒラロボを必ずロボセンターに持って行き審査しなければならない。

 悪質な改造が施されたロボを出さない為だ。


 マフユはその事を一通り、チヨに説明するがチヨは腑に落ちないという表情だ。


「認められてると言われても確かスキルの改造は違法よね」

「スキルの改造は違法だよ。だが、フウジンタイガーの固有スキル・ビーストモードは内蔵式のスキルだ。ロボの一部と認識されて認められたんだろう」

「それもあるけど、改造は悪質じゃないと判断されたのもあるで。竜巻は出すこと出来てもほぼノーダメージ、相手を浮き飛ばすぐらいの威力しかないしな」

「え、え~・・・・・・」


 まだ腑に落ちないチヨだったがマフユとライガの話に渋々納得して座った。



「うひゃあ~!!」

【みゃ~!!】


 次々に襲いかかる竜巻を避けながら、フウジンタイガーに近づこうとするけど中々行けない!!

 くっそ~、良い作戦だと思ったけど上手くはいかないか。


 フウジンタイガー、風来が他のフウジンタイガーとは違う仕様、陣フウガによって改造が施されているのを思い出したのはあのスキル、左手に剣を右手に盾を見つけた時だ。

 それと同時に改造の欠点を思い出したアタシはムギを攻撃モードにフルチェンジに挑んだんだのだが。


「近づく方法は全っ然考えてなかったな・・・・・・」

【みゃ~・・・・・・】

「し、失望の声を上げないでよ!」


 うう、ムギから失望の声が。

 考えている間に竜巻は作られて襲いかかってくる。

 避けながら竜巻から逃れるように立体ホログラムの岩陰へと隠れた。


 竜巻に守られるように立つフウジンタイガーを見て対策を考える。

 どうやって、近づけば・・・・・・。

 必死に考えるアタシの目に竜巻を躱しながら泳ぐ魚の姿が目に入った。

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