第14話 VS陣フウガ⑤

 竜巻を躱しながら泳ぐ魚。

 立体ホログラムとはいえ、本物の魚のように泳ぐ姿に感心しながら魚たちの動きを見る。


 見事に躱してるな~。なにかコツとかあるのかな?

 ん? 躱してるというより竜巻に近づかないようにしてる? あんな大量の動きの解らない竜巻の動きを予想して?

 いや、それは流石に立体ホログラムでも無理がある。もしかして、あの竜巻は・・・・・・。


 アタシは一つの可能性を見出して、竜巻を繰り出し続けるフウジンタイガーを見る。

 ああ、やっぱり。これは作戦変更!!


「両手スキル・左手に剣を右手に盾をシールドモードに変更!! 左手で小判の盾を装備して!!」

【みゃ?】

「今から、あの大量の竜巻の中に突っ込む!!」

【みゃ!?】

「大丈夫! 見たところ、あの竜巻の威力は浮き飛ばす程度。重量級のムギなら盾を駆使すれば行ける・・・・・・・・・・・・多分」

【みゃ~・・・・・・】

「とりあえずアタシを信じて!! レッツゴー!!」

【みゃ、みゃあ~!!】



『おおっと!? ホノオ選手! なんと、あの大量の竜巻の中に飛びこんだ~!! 自棄でも起こしたか~?』



「違う。ホノオさんは自棄を起こしてない」


 マフユはジン・キョーの実況に反論するように呟く。

 その呟きを聞いたチヨは思わず、どうして解るの? とマフユに聞いた。


「今のムギの両手には盾が二つ、恐らく、ホノオさんは吹き飛ばす程度の威力の竜巻なら盾で竜巻の威力を落とせば重量級のネコノコバンは吹き飛ばされないと考えて飛び込んだに違いない」

「あ、貴方の言うとおり、盾を両手に持ってる。でも、それだけでよく解ったわね」

「当然それだけじゃない。恐らく、ホノオさんはに気付いたんじゃないかな」

「ある事?」

「ああ、あのを」


 マフユは得意気に言うとライガはフンと鼻を鳴らして、不機嫌そうに顔を歪ませた。



「良い、ムギ。アタシが良しと言うまで動いて」

【みゃ、みゃあ~・・・・・・】


 盾二つを持って動いてるのもあるけど竜巻を押しのけながら進んでいる状況はムギの負荷が大きい。早めにと良しと言ってあげたいけど誤ったら負けるのはアタシの方だ、ムギには頑張ってもらう。

 アタシはフウジンタイガーを見る。此方を警戒する事なく竜巻を作り続ける様子に改造されたビーストモードは解除されない限り竜巻を作り続ける事しか出来ないと考える。

 策士と呼ばれる程、様々な策を考え実行する陣フウガが何もしてこないのだからきっとそうだろう。だから、ビーストモード解除後に勝負に出ると思う。その前に!!


「良し!! ムギ、止まって!!」

【みゃ!!】

「頭部スキル発動・イナズマ砲発動!! フウジンタイガーに向かって撃て!!!!!!」

【みゃみゃみゃみゃみゃ~!!!!!!】


 ムギの頭部に稲妻の絵が描かれた大砲が現れ、フウジンタイガーに向かってビリビリと電流を纏った光線を放った。



「なっ!?」

【フウガ!! これは!?】

「くっ・・・・・・。気付かれたみたいやな」


 二つの盾を使って竜巻の威力を下げつつ、此方に向かってきたのは近寄って攻撃をしに来るものだとフウガは考えた。

 だが、此方に着くまでにビーストモードは解除される。その際、装備スキルを発動して返り討ちにしてやろうと思っていたが当てが外れ、フウガはギリッと歯ぎしりをする。


 風来に施された改造には欠点がある。

 一つはビーストモード時は竜巻を作り続ける事しか出来ず動けないこと。

 二つ目は、作り出された竜巻は大量に作り出すことは出来るが一直線、真っ直ぐにしか飛ばせないこと。


 一つ目は仕方ない、解除後に反撃できるスキルを装備し備えているが二つ目は大量に竜巻を出すことにより方向感覚を鈍らせ、一直線上にしか飛ばせないことを相手に悟られないようにしていた。

 これはフウガがビーストモードを多様しないからこそ出来る事でありフウガ本人もそれは解りきっている。

 だけど、それは今回が仇になった。

 ムギが使用した頭部スキル・イナヅマ砲は相手を麻痺させ一時的に動きを鈍くさせる光線を放つスキル。

 便利なスキルだが、相手が射程範囲内に入っていなければ当たらない。

 だが、ホノオはそのスキルの欠点を風来の改造の欠点を利用して補った。


 フウガは認めるしかなかった。

 このバトルは自分の負けだと。


 敗北を悟ったフウガは光線があと少しで届きそうという時に降参ボタンを押した。

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