第5話
大会出場のチケットを見せ、テノヒラロボのチェックを終え、意気揚々とアタシは待合室に向かう。
待合室にはチェックを終えた人達が居た。
これから始まる大会の事を考えてるのか目を閉じてる人、ロボをじっと見ている人、友達同士なのか朗らかに話している人達などなど、色んな人達が居る。
見知らぬ人に声をかける勇気を持ち合わせてないアタシは大人しく用意されていた椅子に座り、ロボファンを開き、ムギの調子、これから使う予定のスキルの確認をする。
町民大会で得た知識を元に試合で使うムギのスキルを決めていく。
今度こそ優勝する。
その想いが今のアタシの原動力になっていた。
「溫井さん、此処におったんですか」
スキルの相性で悩んでいたら、陣フウガが話しかけてきた。
「こ、こんにちわ」
「あはは、そんなに堅くならんでも。でも、溫井さんは人見知りするタイプやろ? 顔見知り程度やし、ぎこちなくてもしかたないか」
「アタシ、人見知りしやすいって解りやすい?」
「解りやすいというより、話してて何となくって感じやな」
直球型の陣ライガと違って、温和な雰囲気を上手く利用して相手の真意を探ることを得意とする陣フウガなら、数回話しただけでアタシが人見知りだと見抜くのは簡単なのかもしれない。
実は陣フウガが一番戦いたくないキャラだったりする。
理由? 精神的に追い込んできそうでキツい戦いを強いられそうだと思ってるから。
原作でも、熱くなりやすい溫井ホノオの性格を利用して煽りながら戦う姿は結構、覚えてる。
それに陣フウガの操るロボ、フウジンタイガーは防御特化タイプ。
重量級ガードタイプであるネコノコバンはアタッカータイプには有利に動くことは出来るけど同じ防御タイプとなると話は違ってくる。
もし、戦う事になるなら一番厄介な相手だ。
チラッと陣フウガを見るとアタシの視線に答えるようにニコリと笑いかけられる。
イケメンだから様になるその姿に。
これだからイケメンは!! と謎の怒りを覚えた。
フウガはまたロボフォンに目を向け始めたホノオを見る。
ホノオの性格上、自分の容姿は底辺だと思っているが周りから見れば上位に入るほど可愛らしい容姿をしている。
その可愛らしい少女が西の強豪の一人、陣ライガを倒した相手だと誰も思わないだろうとフウガは思った。
フウガにとって、双子の兄・ライガは一番信頼できる相手で一番負けたくないライバルだ。
別に家族や周りから比べられたことなんてないけど、身近にいるライガが一番のライバルなのは幼い頃から共にいるせいなのか解らないが物心ついた時からそう思っているから理由はフウガ本人でさえも解らない。
テノヒラロボでも、勇気ユウマや大麓マオではなく最初に意識したのがライガだった。
今のところ実力に差がないが、いつか力を付けライガを最初に負かすのは自分だと、日々、相棒のフウジンタイガーの風来と鍛え、その日が来るのを待ちわびていた。
だけど、ライガがホノオに破れた事により、その日が来ることはなくなった。
ショックだった。
自分ではなく赤の他人に、初めてまもないという相手に負けたという事実も相まって夢かと思ってしまうほどに。
そして、フウガは考えた。
復讐してやると。
一番の目標であったライガの初黒星を奪ったホノオに。
兄の仇討ちと思う人が居るかもしれない、そう見られてもいい。
―――完膚なきまでに倒してやる。
フウガが自分に対してそう思っているなんて露知らず、ホノオはスキル選びを続けていた。
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