第4話

 高笑いする薄井カゲ丸を見て、チヨちゃんははあ~と深い溜息を吐く。

 どうしたんだろう?

 一目に薄井カゲ丸と解ったのも気になるし、ちょっと聞いてみるか。


「チヨちゃん、溜息なんかついてどうしたの?」


「ああ、あの子、薄井くんって変わらないな~って」


「変わらない?」


「私と薄井くん、同じ小学校なの。ことある毎に、自分は忍者だって言って高笑いしてて・・・・・・」


「お、同じ小学校だったんだ」


「お陰様で笑い声で薄井くんだって解るようになったわけ」


 また深い溜息を吐いて、どうしようもねえな彼奴と言った感じで薄井カゲ丸を見るチヨちゃんに、どう声をかけていいか解らず、受付が始まったので、そのまま分かれた。


 そうか、チヨちゃんと薄井カゲ丸は小学校一緒だったのか。

 アニメじゃ、そんな関係じゃなかった。初対面だったな。

 この世界は本当に私が知ってるテノヒラロボの世界と違うんだ。

 いや、主人公がアタシの時点で違うか。


――――――


※???視点


「おい、この大会に雪野ハナ、陣フウガ、溫井ホノオが出るらしいぜ」


「マジ!? 俺、雪野ハナの大ファンなんだよ!! 仲良くなれるかな~?」


「無理無理。兄の雪野マフユがベッタリで話す事すら難しいって」


「だよな~・・・・・・」


 聞き覚えのある名前を聞いて、男子二人の会話に耳を傾ける。

 どうも、主人公である溫井ホノオ、ライバル兼ヒロインの雪野ハナ、西の強豪兄弟・陣フウガがこの水族館で行われる大会に出るらしい。

 姉に「観戦の抽選に当たったから行こう!」って言われて、ほぼ無理矢理に連れてこられたけど、どうやら中々面白い試合が見れると思うとワクワクする。


「でも、溫井ホノオならワンチャンあるかな?」


「あれ? お前、雪野ハナの大ファンじゃなかったけ?」


「本命は雪野ハナだけど、溫井ホノオも可愛いじゃん」


 ん?

 どういう事?

 溫井ホノオって男のはずじゃ・・・・・・?


「確かに、溫井ホノオも可愛いよな~。だけどさ、雪野マフユとの噂知ってるか?」


「雪野マフユと?」


「ああ、なんでも付き合ってるかどうか解らないけど良い雰囲気だって噂」


 はい?

 まって。

 溫井ホノオと雪野マフユはライバルだよね?

 良い雰囲気ってどういう事?


「え~、それじゃあ、俺が入る余地なしって事かよ~」


「それ以前にお前、女子に話しかけられるのか? 一人で?」


「うっ・・・・・・」


『受付開始の時間です。大会にご参加される方は受付にお集まり下さい』


「始まるみたいだな。行くか」


「そうだな」


 受付開始のアナウンスが流れると会話していた男子二人組は受付へと行ってしまった。

 ワタシは男子二人の会話、溫井ホノオに関する話が頭から離れず、その場に立ち尽くすように立っていた。


――あの二人の会話からして、溫井ホノオはワタシと同じ・・・・・・?


「此処に居たのね! 探したよ!」


 考え事をしようとしたら、姉がやってきた。

 トイレに行っていたワタシを心配して探しに来たみたい。

 素直にゴメンと謝ると離れる時は必ず言ってと言われてしまった。


「いい? 絶対に言うのよ! お姉ちゃんとの約束よ!」


「うん、解ったよ。お姉ちゃん。約束する」


「よろしい! それじゃあ、良い席探しに行こっか!」


「うん」


 まあ、考えてもしょうがないか。

 会えば解るよね。

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