第4話

――・・・・・・じょ・・・・・・さ・・・・・・ま。


「お嬢様!?」


「ハッ! あ、夢?」


「お嬢様、魘されていましたよ? 大丈夫ですか?」


 幼い頃から私の面倒を見てくれているメイドが心配そうに声をかけてくる。

 なんの夢を見てたんだっけ? 確か、私が生まれてから・・・・・・。

 思い出そうとするとザーとテレビの砂嵐のような映像が流れ込む。まるで、思い出すなと言わんばかりに。

 そういば、あの時も同じような感覚に襲われた。


『僕とマオにテノヒラロボを教えてくれた、あの人じゃないんですか?』


 江良博士に呼び出され、違法ロボの話をされた時、ユウマはまるで憎いと言わんばかりに言い放った。

 私には覚えのない事だったから、ユウマに聞こうとしたら、妨害するかのように砂嵐が流れて、結局、聞きそびれ、その後はユウマに言われるまま帰った。

 その事を思い出してると、また砂嵐が頭の中に流れて頭を抱えるとメイドが心配そうに見ている事に気付いて、思い出すのを止めた。


「夢を見ていたんだけど思い出せないわ。心配させてごめんなさい」


「いいえ、お気になさらず。ご気分は?」


「大丈夫よ。今日の朝食は?」


「今日は奥様がお作りになられました。何でも、美味しい塩鮭を買ったとか」


「そう、それは楽しみだわ」


 未だに心配そうな顔を浮かべるメイドにいつも通りに話しかける。

 これで少しは気を和らげてくれればいいんだけど。

 どうにも、心配されるという事に慣れない。前世じゃ、両親からそんな事された事がないから・・・・・・。

 いけない、折角の休日なんだから暗い気分はやめやめ。


 着替えて部屋を出ると。


「マオ、今日はいつもより遅いじゃないか。今日もユウマ君の取材あるんじゃなかったけ?」


 兄、大麓ノブナガと出くわした。

 五歳年上の兄はテノヒラ町から少し離れた大学に通っていて、小型ロボの開発者を目指すべく日夜、勉強をしている。


「おはよう、兄さん。今日はユウマの取材に同行しないからね」


「ん? 珍しいな、いつもは絶対に連れて行くのに」


「今日の取材先はちょっとトラブルがあってね・・・・・・」


 兄の言うとおり普段は同行するんだけど、今回の取材先は町民大会の時の所、そう、私を邪険しユウマにベタベタした、あの女記者がいるところだ。

 あの後、女記者はトラブルを起こしかねないと判断されて他の部署に異動になったけど辞めさせられた訳じゃないから、また絡んでくるかもしれないからと同行しなくていいと言われた。

 だから、今日はお昼頃、兄の婚約者でもある友人と買い物に出掛ける予定でいる。


「成る程ね~。それなら仕方ないな」


「ええ、今日はメグと遊びに行くの」


「そ、そうか、た、楽しんでこいよ!」


 兄の婚約者、メグこと天野メグミの名を出すと兄は逃げるように部屋に戻ってしまった。

 別にどれだけ仲が進展したとか、話をするわけじゃ、そういえば、喧嘩したとか言ってたな。

 この様子だと、兄さんがメグを怒らせた? いや、昨日、メグから兄との事で相談したい事があるって言ってたから違うのかも。

 何にせよ、メグに会えば解ることだし、早く、朝ご飯を食べに行こう。


「おはよう、母さん」


「マオ、おはよう! 今、ご飯を準備してるから待っててね!」


 リビングに行くと丁度、母さんが私の分の朝食を用意している所だった。きっと、メイドから私が起きた事を知らせてくれたのだろう。

 母さん、冷めたご飯を食べさせるのは嫌な人だからね。


「おはよう、マオ。今日はゆっくりだね」


 椅子に座ると新聞を読んでいた父さんに話しかけられる。

 兄さんと同じ事を言われたから、事情を話すと兄と同じような反応をし、再び新聞に目を向けず、私に何か言おうとして止める。どうやら、言おうかどうか考えているみたい。

 父さんはおっとりとした性格で他人、家族でも無理強いさせる人ではないから、社長という立場もあって自分から言うと無理させてしまうのでは考えてしまうのだ。こういう時は私の方から聞くようにしている。


「父さん、私に何か言いたい事でもあるの?」


「え、あっ・・・・・・。実はね、あの水族館がリニューアルオープンする日時が決まったんだ」


「本当!? それは良かったじゃない!!」


「それで、リニューアルオープン記念にテノヒラロボの大会を開く事になって・・・・・・。その大会に、マオ、君に出場してもらいたいそうだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る