第3話

 ユウマとパーティーで出会った数日後。


「マオ~!!」


 ユウマは毎日と言っていいほど私を遊びに誘うようになった。

 パーティーで同い年が私だけという事もあって、一緒にいたせいか仲良くなったというより懐かれたと言った方が正しいのかもしれない。

 少し大きくなってから、この事、どうして私に懐いたのか聞いたら、顔を真っ赤にして俺に合わせて話を聞いてくれたのが嬉しかったからと教えてくれた。

 あの時、どういう子か解らなかったから聞き側に徹したのが良かったみたい。

 こんな感じで私に懐いてきたユウマは私が習い事をする度に「マオがやるならやる!」と言ってついてくるようになった。


 だけど、この習い事で人見知りではあるものの人懐こかったユウマは変わってしまう。


 以前、大企業の子供だからこそ交流する事は必要だと痛感したと言ったが、実は習い事で痛感したのだ。

 私達が習い事を習う場には私達と同じ大企業のご令息、ご令嬢の他に芸能人のお子さんらが通っていた。

 だからか、私がそう思っていなくても周りは「大麓財閥のご令嬢」と見なし、そう接する。

 その中には悪意を持って接してくる人も居て、ユウマは見た目、金髪、蒼目の王子様だからユウマと仲の良い私に嫉妬して陥れようと嫌がらせを受けた。

 当然だが、ユウマも日本いや世界が誇る警備会社、ブレイブガード社の三男坊である事やモテるのが気に入らないという理由で評判を下げようと性格を利用して恥をかかせようと嫌がらせをされる事が私よりも多かった。

 そんな中で過ごしていく内にユウマは段々と人懐っこい笑みを浮かべなくなり、小学校に上がる頃には作り笑顔が作れるようになるまでに人を余り信用しない、面倒毎は避ける事なかれ主義にとなっていた。


「マオ、俺以外は信用するな。俺もマオ以外は信用しない」


 ことある毎にそう言うようになったユウマの変化に私は驚愕したがユウマの両親は気にするどころか。


――これでこの子は、この世界を生きていける。


 と、安堵していた。


 ユウマの人見知りではあるがある程度、親しくなれば一気に心を許す性分では上手く利用されかねないと心配していたのだと思う。

 それだけ、この世界、お金持ちの世界は厳しいのだと思うしかなかった。


 沢山の習い事をして前世で出来なかった事を堪能していた私だが、限界が来ていた。

 体と言うより精神が。

 色んな事をやったり勉強することは苦ではなかった、だけど、前世では人間関係は皆無だった私は悪意やらなんやらが複雑に混ざり合う関係にウンザリしていた。

 それでも辞めなかったのは、まだ十分じゃない、やりきってないと思っていたのと両親から中途半端はダメだと言われていたから。

 そんな日々を過ごす中、出会ったのがテノヒラロボだった。


 小学生になり、塾に通っていた私とユウマはショーウィンドウから売られているテノヒラロボを見ていた。

 この頃、世界大会で日本代表の選手が準決勝に進み、大きな話題になっていて、周りは騒がしかったのを覚えている。

 学校でもその話で持ちきりでテノヒラロボを始めたと言えば注目されるほどだ。

 そんな中で興味を持つようになるのは必然だったのかもしれない。


「あの黒いロボ格好いいな~」


「あのカゲカラスってロボ? 俺はあの騎士みたいな白いロボかな?」


「カゲカラスの横にあるの? 王子様みたいなユウマに似合うロボだね!」


「ちょっと、その王子様呼びは止めてくれよ~」


「ごめんごめん」


 ユウマをからかいながら、テノヒラロボを見ていたら。


「君達、テノヒラロボに興味はあるのかい?」


 声をかけられた。


 私達に声をかけてきたこの人は。


 この人は。


 この人は誰?

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