第2話

 命が尽きるのを待つしかなかった私は大麓マオとして今世で生を受けた。


 前世もそれなり裕福な家ではあったが今世ではそれ以上の家に生まれたと理解したのは、母さんと共に退院し家に帰ってきた時だ。


「マオ、此処が貴女のお家よ~」


 先ず目に入ったのは大きな門、それがゆっくりと開き中に入ると玄関までズラリと並ぶ使用人達の姿。


『お帰りなさいませ』


 一斉に頭を下げ、私達の帰りを迎える使用人達の姿にとんでもない所に生まれた!! とビビったのは言うまでもない。


 この家、大麓財閥は工業などで働く小型ロボの開発、生産を中心に事業を展開し、日本いや世界の工業で働く小型ロボの殆どは大麓財閥産と言われるほど儲かっ・・・・・・、日本を代表する大企業。

 その事を知ったとき、あの使用人達のお迎え以上の衝撃を受けた私は今世でも前世と同じような生活を送るのかと考えてしまった。

 前世の両親は所謂エリートだった、両親はエリートである事を誇りに思っていたらしく、典型的な仕事人間で年に一回しか会いに来なかったのも仕事が理由だ。

 しかも周りに言われて渋々といった様子で一言、声をかけたらさっさと帰るような人達だったから、また前世の時のような暮らしをするのではと不安が過ぎり、眠れない日々を送ってしまい、今世の母さんを酷く心配させてしまった。


 だけど、私の不安は的中することなく両親は忙しい中でも愛情を注いで育ててくれたし今世の兄は私を両親が居ない時は代わって面倒を見てくれた。

 そんな中、スクスクと育った私は前世では出来なかった事をしようと思い立ち、興味を持ったものから片っ端にやった。

 ピアノにバレエ、絵に英会話、フェッシング、釣り・・・・・・、色んな事をやった、いや、させてくれた。

 両親は嫌な顔をせず了承してくれた上に理由も聞くような事はしなかった、やりたければやりなさい、だけど中途半端はダメと言って。

 今思えば、家が裕福だからこそ、様々な習い事とかをやらせてくれたんだと思うけど、色んな事を経験させてくれた事は感謝している。

 なお、兄は習い事を複数掛け持ちする私に無茶はするなよと心配していた。


 さて、話を私が沢山の習い事をする前に戻す。

 三歳になった私はある日、お隣さん(私の家と同じくらい大きい家)のパーティーに家族とともにやってきた。

 お隣さんは両親がこの家にやってきたと同時に引っ越してきた人で、その縁で仲良くなったとか。

 お子さんは三人いて、今日のパーティーは三人目、三男の子の誕生日パーティという名の名目で引っ込み思案で外に余り出ない三男を他の子と交流させる為に開かれたものだ。

 無理に交流させるのはちょっととこの時は思ったが、成長するにつれ大企業の子供だからこそ交流しなければならないと痛感することになるから、孤立する未来を危惧してパーティーを開いたのだと今になって思う。


 両親同士が仲良し+三男と唯一の同い年であった私は真っ先に三男に挨拶する羽目になり、両親と共に主催者であるご夫婦の元へ。

 お互いに軽めの挨拶を交わし、母さんに手を引っ張られる形で前に出された。


「この子が長女のマオよ、二人目なの♪ さあ、マオちゃん、ご挨拶なさい」


「はじめまして、だいろくマオです、よろしくおねがいします」


「あら、しっかりした子ね~。よろしくね、マオちゃん♪ ほら、貴方もご挨拶なさい」


「う、うう・・・・・・」


「ほら、早く」


 優しくだが強引に後ろに隠れていた子を引っ張り出し、私の目の前に連れて行く。

 私をチラッと見て、直ぐに下を向いてしまう、今では考えられないほど引っ込み思案だった、この子こそが。


「ぼ、ぼくはゆうきユウマです。よよ、よろしくおねがいします」


 二年連続テノヒラロボバトル世界大会チャンピオンに輝く勇気ユウマだ。

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