戦う機会が訪れた、早くない??(溫井ホノオ視点)

第1話

「お姉ちゃん!! これ見て!!」


 ヒバナが興奮気味にアタシにある大会のポスターを見せてくれた。

 どうやら、手平町にある結婚式場が併設されている大型水族館がリニューアルオープンするらしく、それを記念してテノヒラロボバトル大会を開くらしい。

 その大会の優勝者には・・・・・・。


「水族館一日貸し切り券に、大麓マオに挑戦する権利を授与!? マジ!?」


「そうなの!! この大会で優勝するとマオさんと戦えるんだよ!!」


「あら、二人とも賑やかね~。どうしたの?」


 ヒバナと騒いでたら、母さんがやってきた。

 今世の母さん、テノヒラロボの主人公・溫井ホノオの母親、溫井ヒノコは昨今のアニホビ同様、ナイスバディのおっとり系お母さんだ。

 ニコニコと笑いながらやってきた母さんにポスターを見せると母さんは嬉しそうに笑みを深めた、なぜ?


「潰れかけてた水族館がリニューアルオープンのね! 嬉しいわ~」


「母さん、凄く嬉しそうだけど・・・・・・。此処の水族館に来たことがあるの?」


「あら? 言ってなかったっけ? ふふ、この水族館にね、2回来てるの。1回目はお父さんとの初デートの時、2回目は結婚式を挙げるためにね」


「そうなの!?」


「ふふふ、今でも昨日の事のように思い出すわ~」


 ウットリとした表情になると母さんは話し始めた。


 その当時、新入社員だった父さんは会社内で迷子になり困っていた所を先輩社員である母さんが助けてくれたのが出会い。

 父さんは親切に優しく助けてくれた母さんに一目惚れ、研修を終え、配属先で母さんに再会した父さんは運命だと確信しアプローチを開始、母さんも父さんに一目惚れしていたらしくアプローチを素直に受け、お付き合いを始めた。

 付き合って始めてデートとして訪れたのが、水族館だった。


「この水族館の近くにね、夫婦岩があるの。だから、そこでデートすると永遠に結ばれるって言われてて、当時は凄い人気のデートスポットだったのよ」


「へえ~、そうなんだ。もしかして、この水族館に結婚式場が併設されてるのも、それが理由?」


「ん~、結婚式場が併設されたのは水族館が出来てから、少し後よ。この水族館で結婚式を挙げたいってカップルが大勢いてね、その声を受けて併設されたの。

 私とお父さんの結婚式の時はね・・・・・・」


 スイッチが入り、結婚式の話を事細かく話し始めた母さんを横目にチラッとカレンダーを見る。

 結婚式の話で、今月、両親の結婚記念日があることを思い出したアタシは大会が開かれるのは結婚記念日の一週間前なのを確認すると、大麓マオと戦う為と両親の結婚記念日のプレゼントとして一日貸し切り券をあげる為に出場を決意するのであった。


――――――


 溫井一家がそういうやり取りをしている頃、雪野家ではハナが例の水族館のポスターを真剣に眺めていた。

 そんな姿にハナの兄・マフユは不思議に思い、彼女が座っているソファーの後ろから声をかけた。


「何を見ているんだい?」


「!? 兄様! 背後からいきなり声をかけないで下さい!」


「驚かせてすまない。お前がいつになく真剣に見ているから気になってね」


「実はお父様から、あるポスターを貰ったの」


「ポスターを?」


「はい。お父様も支援金を出して援助した水族館がリニューアルオープンを知らせるポスターです」


 マフユはハナからポスターを受け取り、内容を見ると書かれていた内容に目を丸くして驚く。


「リニューアルオープン記念の大会で優勝すると大麓マオさんに挑戦する権利を授与だって!?」


「この水族館に多額の支援金を出し、その他にも色々と援助していたのは大麓財閥でしたから、その縁でだそうです」


「そ、そうか、これは・・・・・・。あの人が荒れるな」


「兄様?」


「い、いや、何でもない! 所で、お前はこの大会に?」


「はい、出るつもりです」


 すぐに返事をしたハナにマフユを不敵な笑みを浮かべる。

 それでこそ我が妹だと言わんばかりに。

 そう思っている事をハナは察知したのか、少し得意気な顔をした。


「兄様、いえ、雪野家の人間として必ずや優勝してみせますわ」


「ふふ、ハナ、お前なら必ず優勝出来るさ」


 ハナにそう返すとマフユはポスターに再び目を向け、水族館に結婚式場が併設されているのを知る。


「へえ、この水族館、結婚式場があるのか・・・・・・」


――マフユくん♡ アタシと結婚してくれますか?


 結婚という言葉を受け、マフユは白いウェディングドレスに身を包むホノオを想像し、顔を少しニヤつかせると。


「兄様、妄想はお一人の時にしてくれませんか?」


 ハナが冷たい一言でツッコミをいれるのだった。

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