神獣の愛子
アーノルド視点
東西の方へ行くと、神獣と幻獣が一匹ずつ、鎖に捕まっていた。一匹は暴れまわっており、トラバサミに挟まれた足が傷つき、血を流している。
もう一匹は倒れ込み、動かない。気絶しているのだろう。
「あなた、白狐の子がとても怒ってるわ。ちづきを返せ!早く開放しろって」
ちづきとは誰だ?横に倒れている狼のことか?あの狼、銀狼・・・?いや、銀狼の毛の色はもっと銀に近い。真っ白ではない。
ーーギャウううっ!!
白狐がこちらに気づき、威嚇を始めた。そして、白狐の周りからどんどん霧が濃くなっていく。
「きっと、白狐のスキルでしょう。安心してください。これは視界が悪くなるだけなので」
ヨリックはそう言うが、霧に包まれた瞬間、一気に寒くなった。凍死できるレベルだ。
「ほう。こんなスキルがあるとは驚きです。」
「感心してないで、早く解決するぞ」
ナチュラルに俺以外を火魔法で温めあげているヨリックにムカつきながら告げる。おい、お前は俺の執事じゃないのかよ。
相変わらず扱いが酷い。
霧が届かない範囲に行き、空を見上げると聖竜と鳳凰が戦っている?いや、鳳凰が何かを促しているみたいだ。こちらに来ないようにしてくれている。
黒猫も聖竜に少し押されているが、俺らの方に背を向け、鳳凰と同じことをしてくれている。黒猫と言ってもとてつもなくでかい。
「凄い・・・幻の者たちが集まっている」
とてもすごい光景だ。めったに見れることが出来ない聖竜がいる。しかも、夫婦だろう。連携がうまい。
「私達の子供を返して。と言ってるわ。何かしたの?子供は奪ってはならないものなのよ?」
ソンアリーに疑いの目を向けられる。俺は何もしていない。どれだけ信頼されていないんだと少し自分に呆れてしまう。
「冒険者チームのところだろう・・・」
昨日、Dランクの冒険者チームが俺の城に転がり込んできた。あのチームが後ろの馬車になにか隠していて、怪しいと思ったが聖竜の子供とは・・・。よく調べなかった俺も悪い。
「すぐに調べさせるわ。子供を奪うなんて信じられない。ヨール、伝えてきて」
真っ黒なカラスにソンアリーが告げる。カラスはすぐに飛び立った。ソンアリーはとても怒っているみたいだ。でも、少し悩んでいるように見える。
ーーグアアアアアッ!!!
聖竜が一声鳴いて、去っていった。鳳凰はそのまま飛び続けたままで、黒猫、いや猫又だったみたいだ。すごくランクが上がるぞ?猫又はトラップにぎりぎり引っかからない場所に座った。賢いようだ。トラップがどこまであるかを把握している。
「あの白狐が怒っている原因のちづきって子は私達は知らないわ」
「勘違いじゃないのか?」
「いいえ、それはないわ。白狐自体とても賢いのよ。それは知っているでしょう?もう一回勉強してきたらどうなの?」
軽くディスられながら教えられる。
霧の中からガキッという音が聞こえた。白狐が鎖を壊したみたいだ。そして、少ししたあとに霧が晴れてきた。
「アーノルド様!!トラップに近づくのなら言ってください!!誤って、発動してしまったら僕も助けられません!!」
後ろからエッカルトが追いかけてきたようだ。
「あの一匹に対してのトラップを解けるか?」
「できますが・・・大丈夫ですか・・・?その辺りのトラップも解くことになってしまいますが」
「大丈夫だ。構わない」
気絶している白い狼へのトラップを解いてもらった。白い狼は全く動かない。
白い狼に猫又は心配そうに近づいて、顔をなめてあげている。そして、ハッとしたように顔を上げ、辺りを見回し始めた。
今気づいたが、白狐が居なくなっている。
猫又はある方向を少しだけ、じっと見つめるとその方向に向かって駆け出した。
「追うぞ」
俺らも慌てて追いかける。森が一層深くなった場所に猫又は白狐といた。
ウ”〜〜と低い声で猫又が鳴いている。それは白狐に対してではなく、白狐と猫又の間にいるなにかに向かって発しているようだった。
その何かを確認するためにわざと剣を抜く。
フーーっ!!
猫又が毛を逆立てて、威嚇してくる。すごく大きい。はっきり言って怖い。
しかし、猫又が体勢をかえてくれたおかげで、その何かを確認することが出来た。
「こども・・・?」
ソンアリーとソユアがハッと息を呑む音が聞こえた。
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